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Cat's Eye  作者: 井沢円香
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正義(エゴ)を語る矛と盾の話

吾輩は猫である。名前などもう忘れてしまった。




何。なぜ忘れてしまったかだと?そんなの決まっていよう。吾輩の「名」を付けて、「名」を呼ぶ存在がずっと昔に居なくなったからである。




どんな人だったかと?

古傷を抉る質問であるな。主は傷口に塩をぬるっということわざをしらないのかね?




何?知らないだと?不勉強過ぎるぞ!

さて、主の問いの応えだが、勿論覚えているとも。彼女はとても可愛らしいかった。長い黒髪がとても美しく、似合っていた。その揺れる黒髪にじゃれるのが一番好きだった。




そうだとも、吾輩から見たら彼女ほど美しい女性に見たことがない。




主は馬鹿かね?一体主は彼女と何を競うつもりかね?会ったこともない、会うことのない者と競ってどうするつもりだね…。




何?会ってみたいだと?さっきの吾輩の話を聴いていたのかね?はぁ…。会えるものなら吾輩も会ってみたいものだ…。




何!猫の癖に感傷に浸るなだと?なんとひどいことを言うのだね!




犬ならわかるけどね〜って、なぜ猫と犬を比べるのだね!種族が違うのに比較など出来ないだろう…




グスッン…。忠犬がいるのだから忠猫がいてもよいではないか。グスッン。




って、話をそらしたのは主の方ではないか!納得いかないぞ!




さて…。話をもとに戻すとしよう。

って!?吾輩のしっぽをいじくりまわすではない!そんなに二股のしっぽが珍しいか!




いつ二股になったかだと?そんなの吾輩でも分からん!気づいたら二股になってたのだ。




彼女といた数年は、もう何百年も昔の光景である。しかし、時がたっても色褪せぬこうけいだよ。彼女の命は桜の花びらのように散っていってしまった。




彼女の人生は産まれながらに定められていた。家の為に嫁ぐこと、嫁ぎ先。これらの為だけに生きていた。吾輩はそんな彼女のそばに寄り添い、慰めていた。




彼女にながれる血が存在を赦されない時代になってしまった。変化を求めるものと不変を求めるもののぶつかり。




そうだとも…。主が思っているとおり平和の為の婚姻が意味をなさなくなっていた。彼女はすべてを悟り、吾輩を手離した。最後に見た彼女の顔は儚いものだった。吾輩が数歩離れたのち、彼女の屋敷から火の手が上がった。




あぁ…見たとも。彼女の屋敷に火をともした者を。奴は彼女の旦那様であった。その時奴がいっていた。


「これは正義だと」




両者とも言っていた。正義だと…。

しかし、吾輩は猫であるから理解できなかった。正義とはいったいなんなのだ?正義からいったい何がうまれるのだ?




数百年がたち吾輩はやっと一部を悟った。正義について話そう。正義とは矛と盾の争い。変化の矛は不変の盾を突きやぶろうとする。不変の盾は跳ね返そうとするのだ。何でも突き破る矛と何も通さぬ盾の話。これが正義が語る物語。




彼女は盾であったがしかし、主が言ったように旦那様は矛ではないと吾輩は思う。矛は時代だった。旦那様は矛に使われていただけであった。




うん?それはおかしいだと?今も変わっておらんだろう。モノに使われている点では。

しかし、人間てはなんとまぁ〜、矛盾を含んだ生き物であるな。


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