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第31話 「ブラン・アルヴィナ正教艦隊」

「……なに?」


 ラミオは報告書を読み終えた瞬間、

 無意識に眉間へ指をやっていた。


「これは本当か?」


 部下は、わずかに緊張した面持ちで頷く。


「ええ。まだ“おかしな動き”という段階ですが……

 統合情報部は“高確度の事前兆候”と判断しました」


「ブラン・アルヴィナが、今……なぜだ?」


 ラミオの疑念は重い。

 ブラン・アルヴィナは、通常なら外交でも軍事でも慎重な国だ。

 軍を動かすとなれば、なおさらだ。


 だが報告書に記された艦名を見て、

 ラミオは思わず眉を吊り上げた。


「第11、12、24正教艦隊……?

 ――三個艦隊だと?

 総戦力の八分の一だぞ……」


「はい。規模から見て、何かしらの作戦行動に入るのは間違いありません」


 ラミオは椅子にもたれ、深く息を吐いた。


「北部宙域に一体何をしようとしている……

 今、軍を向けるべきはアストラとの国境だろ。

 緊張が続いているのは南部だ」


「にもかかわらず、北部方面へ戦力を送るとなると……」


「軍事目的とは考えづらいな」


 言葉を切り、静かに続ける。


「……やはり統合情報部の言う通り、

 “宗教的理由”と見るべきか」


 ラミオは、舌打ちしたくなる衝動を抑えた。


 ブラン・アルヴィナとは、どうにも相性が悪い。


 結〈ノット〉による霊象〈エイド〉はなぜか“獣の姿”を取る――

 これは七大勢力に共通する認識だ。

 理由は未解明だが、事実として受け入れられている。


 その中で、ただ一柱。


 ブラン・アルヴィナの女神だけが、

 “人の姿”をしている。


 それが民衆には絶大な人気を誇る理由でもある。

 だが、ラミオの目にはどうしても

 “整いすぎた偶像”に見えていた。


(自分たちだけが特別だとでも言いたげな……)


 だから、積極的に関わることは避けてきた。

 だが、少し前に教皇が代わった途端――

 情勢は、目に見えて動き始めている。


「……理由が、あるのか。

 あるんだろうが……なんだ……」


 ラミオは眉間を揉み、短く指示を出した。


「引継ぎ情報を洗い直せ。

 各方面からも追加で情報を集めろ。

 何か動きがあれば――即座に報告を」


「はっ!」


 部下が下がる。


 静かになった室内に、

 ラミオの独り言が落ちた。


「……ここから、何かが動き出す。

 だが、“何が”かはまだ見えない」


 一拍置いて、低く続ける。


「……見極めるしかないな」


 いまはまだ、ただの“前兆”。


 しかし――

 この動きが、

 自分たちの運命に深く関わってくることを、

 ナユカはまだ知らなかった。

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