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第19話 「会議の行方」

 西口ゲートでの襲撃から、半日が過ぎた。


 エリド・コンコード全体は一時騒然としたものの、

 各ブロックの警備は速やかに再配置され、混乱は急速に収束へ向かっていた。


 表向きには――

 何事もなかったかのように。


 同時に、中断されていた七大勢力会議も再開される。


――


 アストラ代表は終始青ざめた表情を崩さず、

 他勢力の代表たちの視線は、どこか探るように慎重だった。


 誰もが多くを語らない。

 だが、あの襲撃が完全な偶発だったと信じている者もいない。


 とはいえ――

 責任を指し示す決定的な証拠は、どこにもなかった。


 疑念だけが宙に浮き、

 それを掴もうとすれば、会議そのものが崩れる。


「この状況でも、会議は継続すべきだ」

「安全は確保されている」

「議題に戻ろう」


 淡々とした言葉が、次々に積み重ねられる。


 討議は短縮された。

 だが、止まることはなかった。


 そして――


 アーグレイアが提示した自治圏問題の対案は、

 大きな反対もなく採択された。


 今回の会議における最大の争点。


 結果として、アーグレイアは

 完全な“勝利”を収めた形になる。


 それが意味するものを、

 この場にいる誰もが理解しながら。


――


 会議終了後。


 代表席に残った空気には、疲労と安堵、

 そして言葉にされなかった警戒が入り混じっていた。


 誰もが今日の混乱を早く忘れたいかのように、

 足早に会議場を去っていく。


 アストラ代表だけが、

 重い足取りで最後に退出した。


――


(……何だったんだろう)


 静まりつつある構内を歩きながら、ナユカは思った。


 あまりにも一気に物事が動きすぎた。

 判断も、決定も、結果も。


 気づけばすべて終わっていて、

 頭の中だけが、まだその場に取り残されている。


 ラネッサは事件後の処理で警備隊に呼ばれ、

 まだ戻っていなかった。


 ミリアと二人、宿舎へ向かう。


 海風が吹き、遠くで建設ドローンのライトが瞬いた。


(今回の件だけで……

 何ヶ月分も、前に進んだ気がする)


 小さく息をついた、そのとき。


 横から、ミリアの声が落ちてきた。


「……ナユカ」


「ん?」


 ミリアは足を止め、まっすぐナユカを見る。


 その瞳は、普段よりもほんの少しだけ鋭く、

 そして――慎重だった。


「……見えたのね。“あれ”。ラネッサの……」


 ナユカは、一拍おいてから静かに頷く。


「……うん」


「そう……」


 短い沈黙。


「……なんだったの……あれ?」


 聞くべきじゃない。

 ミリアの表情が、はっきりとそう告げていた。


 それでも、ナユカは聞かずにいられなかった。


 ミリアは視線を落とし、

 ほんの一瞬だけ言葉を選ぶように黙る。


「……また話すわ」


 そして、はっきりと区切る。


「今日は、休んで」


 それ以上は何も言わず、歩き出した。


 夜のエリド・コンコードは、

 不自然なほど静かだった。


 騒ぎが終わったからではない。


 ――“何かが始まったあと”の静けさだった。

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