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第17話 「収束と余波」

 西口ゲートの空気は、まだわずかに金属の焦げた匂いを引きずっていた。


 正規警備隊がテロリストたちを拘束し、搬送用のフィールド枠を展開する。

 倒れ伏した男たちの間に、ラネッサが立っていた。


 戦闘が終わったときと同じ姿勢で。

 呼吸も乱れていない。


「負傷者、三名! 意識あり!」


「外周レーンの封鎖、完了!」


 号令が飛び交い、西口ゲートは慌ただしいが、確実に“収束”へ向かっていた。


 ナユカはまだ、胸の鼓動が落ち着かない。


(……終わったんだ)


 ミリアが軽く肩に触れる。


「大丈夫。吸って」


 言われた通り深く息を吸うと、ようやく肺が動いた気がした。


――


 西口の状況が安定し始めた頃、別方向から走ってくる影があった。


「ラネッサさん!」


 正規警備隊の副隊長が駆け寄ってくる。


「他区画はどうなってますか?」

 ラネッサが短く問う。


「第5リングは突入前に制圧。第1ゲート側は未遂で発覚。

 ただ……第2居住区に一名、侵入者がいましたが、そちらはすでに確保済みです」


「死者は?」


「いません。負傷者のみ」


 ラネッサはほんの少しだけ息を吐いた。


(同時多発……)


 ナユカはその言葉に、じわりと現実の重さを感じた。


 あれは西口だけの事件ではなかった。


 その頃――

 エリド・コンコード別棟・会議ホール近く。


 回廊を歩いていたラミオは、急行してくる警備責任者に声をかけられた。


「ワイズスタッフ殿、ご無事でなによりです!」


「何事だ?」


「テロです。複数箇所で同時に仕掛けられました。

 ただ、結論から申し上げますと……すべて未遂、もしくは短時間で鎮圧されています」


「……そうか」


 ラミオは歩みを止めた。


 外に視線を向けても、建物の外観は静かなままだ。

 だが、その静けさがかえって、出来事の深刻さを強調しているように感じられた。


「会議は?」


「一旦中断しておりますが、再開の判断は各勢力の代表待ちです」


 ラミオは目を細める。


(……これは誰が、何のために?)


 だが、その答えはまだわからない。


 ただ一つ確かなのは――

 この混乱さえも、議論の流れを断ち切ることはできない、ということだった。


「……戻る。継続の意志を示すのが先だ」


 ラミオは回廊の奥へ歩き出した。


 その横顔に、不安よりも“決意”が浮かんでいた。


――

 

 西口ゲート付近。


 医療班が負傷者を運び出すのを見送りながら、ナユカは胸の奥のざわつきがまだ消えないのを感じていた。


(あれは……一体……)


 ラネッサの動き。

 周囲に浮かんだ“何か”。


 そして、それを見えたと言ったときのミリアの表情。


「ナユカ」


 呼ばれて顔を上げると、ラネッサが立っていた。


「怪我はない?」


「あ、うん……大丈夫」


「よかった……」


 ミリアが一歩横に寄り、ナユカの肩をぽんと叩いた。


 その瞬間、張り詰めていた何かがほぐれる。


 ナユカは力が抜けて、その場にしゃがみ込み、地面に両手をついた。


 テロは未遂に終わった。


 だが――

 同時に仕掛けられた事実。

 その目的。

 背後にある意図。


 何一つとして、まだ明るみに出ていない。


 西口ゲートの外では、沈みかけの太陽が海面を橙色に染めていた。

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