表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/103

第16話 「ラネッサ」

 正規警備の盾列が乱れ、金属音が散った。


 吹き飛ばされた隊員たちが床を滑る。

 その中心に、先ほどの“衝撃波”を放った男が立っていた。


 ラネッサは一瞬だけ目を細めた。


 次の瞬間――


 彼女の姿が、視界の外へ一気に滑った。


「っ……!」


 ナユカは思わず声を漏らす。

 ラネッサは、もう敵の懐に入っていた。


 最初の音は、“破裂音”に近かった。


 ラネッサの拳が、敵の胸に突き刺さるように入る。

 まるで見えない推進力が拳に重ねられていた。


 軍人の男の体が、横へ跳ね飛んだ。


「な……っ!?」


 他のテロリストたちが一瞬だけ固まる。

 “西口ゲートに脅威がいる”――その前提が、彼らにはなかったのだ。


 ラネッサは逃さない。


 ラネッサの足元で、空気がわずかに“ずれる”。

 その動きは、ナユカの目には説明できない“間の取り方”に見えた。


 次の刹那――


 ラネッサは地を蹴って駆け出した。

 敵全体を包むように円を描いて走り抜ける。


 位置を取った瞬間、彼女の掌が一斉に敵方向を向く。


 一拍置いて。


 結〈ノット〉の回転が噛み合った。


 “二つ目”が発動。


 ――!


 光が一瞬、煌めく。

 周囲の空気がぶつかり、結〈ノット〉の揺れだけが残る。


 複数のテロリストがまとめて吹き飛んだ。


 ただ一人、最初に殴られた元軍人だけが別方向に倒れ込んでいた。


 ラネッサはそちらへ向かい、迷いなく足を運ぶ。


 男はまだ立ち上がろうとしていた。

 膝が震え、呼吸が乱れている。


 その首元を、ラネッサの手がつかんだ。


「――っ!」


 息が止まったような声。


 膝蹴りが腹に叩き込まれ、男の体がくの字に折れる。


 続けて、ラネッサは頭上で両手を組み、

 そのまま相手の頭へ振り下ろした。


 鈍い衝撃音が床に響く。


 男が地面に崩れかけた、その瞬間――


 ラネッサの周囲で、空気が“回る”ように揺れた。


 目に見えない板状のものが、ふわりと並んだように見えた。


(……なに、あれ……!)


 ナユカは息を呑む。


 タイミングが合った。


 ラネッサの体が沈み、次の瞬間――


 “三つ目”が発動。


 沈み込んだ体勢から、

 拳が顎へ真上に突き刺さる。


 男の頭部が跳ね上がり、そのまま崩れ落ちた。


 完全に沈黙した。


――


 戦闘が終わったのは、ほんの数秒後だった。


 静寂。


 正規警備の隊員が息を呑む。


 ナユカはただ、ラネッサの背中を見つめていた。


「……今の、何……?」


 気づくと、ミリアの袖を掴んでいた。


 ミリアはナユカをちらりと見る。


「なにが?」


「あの……ラネッサの周りで……光じゃなくて……板みたいなのが……」


 ミリアの眉が、かすかに動いた。


「……ナユカ。あなた、見えてるの?」


 問いの意味は分からない。


 ただ、その声の色だけは、はっきりと違っていた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ