表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/12

第5話 「森の巡回」

 遺跡探検の話で盛り上がった三人は、一週間後に再集合することを約束し、いったん解散した。



 翌朝。

 ナユカは、管制局〈サブリック〉の扉をくぐった。

 今日の仕事は、ラネッサと一緒に行う“近くの森の巡回”だ。


「遅いぞ、ナユカ」


「えっ? まだ約束の時間より十分も早いよ!」


「早いのは当たり前だ。プロとしての最低限だよ」


 ラネッサは相変わらず厳しい。

 だが、その奥にある“気にかけてくれている感覚”は、ナユカにも少しずつ分かるようになっていた。


 口調は厳しい。

 けれど、どこか優しい。


「今日は森の〈外周〉をぐるっと回る。

 危険は少ないが、油断はするなよ」


 ナユカは頷き、二人は並んで森へ向かって歩き出した。



 森へ向かう道中。

 ナユカは、ずっと胸の中で引っかかっていた疑問を口にした。


「ねえラネッサ、この街って……ランクの高い人、多くない?」


「多いさ。こんな規模の街じゃ、普通はあり得ないな」


「なんでなの? 珍しいよね?」


 ラネッサは、少しだけ表情を緩めた。


「理由か……まぁ、気に入ってるんだ。この街が」


「私だけじゃない。ガルドやミリアだって同じ理由さ。

 それにな、高ランクと言えば……酒場の《ゴーシュのマスター》もそうだし、

 あの酔っ払いのカネスだって、昔はそうだったんだぞ」


「……えっ? カネスさんが!?

 あの、ベロベロに酔って道端で寝てるカネスさん!?」


「昔は、私より強かった」


「嘘でしょ……」


「本当さ。若い頃はな……

 今では、私のほうが上だがな」


 ナユカは、思わず不思議そうな顔になる。


「静かで、優しくて。

 余計な争いも、派閥もない。

 銀河の最前線より、ここで暮らしたいってやつもいるんだ」


 ラネッサは、諭すように言った。


 その背中は広く、頼もしい。

 けれど――ときどき、ナユカの知らない“重さ”が混ざる気がした。



 やがて二人は、森の入口へ到着した。


 朝の空気はひんやりしているが、

 森の奥からは、獣の気配がうっすらと漂ってくる。


「ナユカ、これ持ってけ」


 ラネッサは、フォージペンダントを差し出した。


 球状(直径約二センチ)の多目的ペンダント型デバイス。

 握ることで起動し、使用者の拳の上に力場を形成する。

 力場は“光の刃”として可視化され、見た目は剣やナイフを握っているように見える。


「今日は使わない……はずだがな」


「ありがとう」


 森の中へ進むと、ラネッサの声が少し低くなった。


「……最近、この森に“危険な生物”が増えてる」


「危険な生物?」


「ああ。様子のおかしい個体が、頻繁に目撃されてる。

 実際に被害も出てるんだ。

 環境変化か……それとも、何か“外”に原因があるのかもな」


「外?」


「ああ……最近な、この星の空気が、少し変わってきてる。

 危険薬物の製造、密輸……」


 ラネッサの表情は、いつもより鋭かった。


(……ラナスに?)


 ナユカは、信じられない思いで胸の奥がざわつくのを感じた。



 ――その後、二人は一通り森の巡回を行った。


 獣道の痕跡を確認し、

 異常な植物の繁殖具合を調べ、

 危険原生種の足跡が新しいことにも気づく。


 ラネッサの眉間に、皺が寄る。

 ナユカも、緊張して周囲へ目を配った。


 だが幸い、敵影は見つからず、

 ひとまず外周の確認は無事に終わった。


「ナユカ、鍛錬はちゃんと続けてるか?」


「え? 一応……毎朝やってるけど」


「それを続けろ。積み重ねは、裏切らない」


 ナユカは、素直に頷いた。


「あとな、無茶はするなよ。

 お前は無鉄砲なところがあるからな」


「うん、わかってる」


「お前は“わかってない”から言ってるんだよ」


 そう言って――

 ラネッサは、ナユカの頭を大きな手でくしゃっと乱した。


「わっ……!」


「よし、戻るぞ。今日はここまでだ」


 少し間を置いて、ラネッサは続ける。


「フォージペンダントはやる。

 ……ただし、危ないことには使うなよ」


 その声は、いつも通りぶっきらぼうなのに、

 どこか安心させるあたたかさをまとっていた。


 ナユカは小さく息をつき、

 ラネッサの背中を追いかけるように歩き出した。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ