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第4話 「ピオラ」

 工房の空気が、いつもより少しだけ張り詰めていた。


 机の中央――直径三十センチほどの銀色の円盤。

 昨日とは、明らかに違う。

 さきほどの反応によって、三人の胸には「何かある」という確信めいた感触が残っていた。


「……準備できたよ」


 ジローは手元の装置を確認し、二人を見た。

 今回は、最大出力で電気を流すつもりだ。


「ナユカ、アシナ。ちょっと下がって」


「うん」


「了解」


 ジローは深く息を吸い、スイッチに指を添える。


「――いくよ」


 カチリ。


 その瞬間、円盤の縁が淡く点滅し始めた。

 さっきまでは見られなかった反応だ。


「……おっ……!」


「これ、さっきと違うよね?」


 アシナが思わず声をあげる。


 銀の表面に、細い線が走った。

 まるで“目覚める”かのように、光が内部へ吸い込まれていく。


 そして――


 ――光が、開いた。


 円盤の上空に、淡い立体光が広がる。

 島のような形。

 街道のような線。

 そして、数カ所で点滅する“光のポイント”。


「……地図?」


 ナユカが息を呑む。


「いや、サイズスケールが……星図か、この星の全域図だね」


 ジローは思わず眼鏡を押し上げた。

 技術者としての好奇心を、隠しきれない表情だった。


「これ……ここ、見て」


 アシナが指さしたのは、光点のひとつ。

 そこだけ、他よりも強く輝いている。


「この形……モンクルモックの森だよ。

 古い文献に、遺跡があるって書いてあった場所」


「え、じゃあ……ひょっとして、この光点全部、遺跡の場所?」


「かもしれないね。でも……」


 ジローは眉をひそめる。


「この文字……読めない」


 地図の端に浮かぶ、古めかしい文字列。

 この時代の、どの言語とも一致しない。


「ピ、オ、……ラ?

 そんなふうに、読めなくもないけど……」


 アシナが呟いた。


「……ピオラ」


 ナユカは、その響きを口の中で転がしてみる。


「なんか……可愛いし、呼びやすいね」


「じゃあ、この子の名前はピオラで決まりね!」


 アシナが、嬉しそうに笑う。


 ナユカは、光にそっと手を伸ばした。

 触れられるわけじゃないのに、なぜか温かく感じる。


「……これ、行ってみるしかないよな」


「え、決めるの早くない?」

 アシナが肩をすくめる。


「でも、気持ちは分かるよ。

 ここまで見せられたら……気になるよね」


 ジローは、苦笑しながら言った。


「だろ?」


 ナユカが、即座に同意する。


「まぁ確かに、このまま何もしないって手はないよね。

 無茶しなければ、危険も少ないはずだし」


「よし、じゃあ決まり。行ってみよう」


 ナユカは、光の地図を見つめ、目を輝かせながら言った。

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