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第25話 「蒼環の都イラセア」

 2番目の遺跡へ向かう旅は、本来なら胸を躍らせるものだったはずだ。

 だが今、三人の足取りには、出発時の軽さはもうなかった。


 高速空路列車アークラインの座席に身を沈め、

 アシナは窓の外を黙って見つめている。


 雲海の上を滑るように走る車両。

 天井の灯りが静かに揺れ、乗客たちは読書をしたり、寝息を立てたり、

 旅に慣れた穏やかな空気をまとっていた。


 そんな日常の気配の中で、

 アシナだけが別の世界の孤島にいるようだった。


 彼の胸の奥では、まだ言葉にできない不安が、

 形を持たないまま、ゆっくりと膨らんでいく。


 ――自分の結〈ノット〉は、一体どれほどのものなのか。

 ――自分は、どうなってしまうのか。


 考えたくないのに、考えずにはいられない。

 それが、今のアシナだった。


 横の席に座るナユカとジローは、

 普段なら間違いなく賑やかに喋り倒しているはずの二人なのに、

 言葉を選んでは飲み込み、

 アシナの横顔にそっと視線を投げては、また逸らしていた。


 ――今、どう声をかけるべきなんだろう。


 そんな戸惑いが、三人の間に、

 薄い膜のように漂っていた。


 車両全体が静かに揺れ、アークラインは高度を落とし始める。


 白い雲が途切れ、

 深い緑の大森林と、青い海が、同時に視界いっぱいに広がる。


 高度が下がるにつれて、都市の輪郭が、

 少しずつ現実の重みを帯びてくる。


 遠目には、空に描かれた光の模様にしか見えなかった蒼いリングは、

 近づくにつれ、確かな構造物として姿を現した。


 その上を、小さな光点――

 車両や人の動きが、規則正しく流れている。


 点だったものが、線になり、

 線だったものが、層を持った街へと変わっていく。


 その境界に――

 巨大な都市があった。


 幾重にも重なる高層建造物。

 空中に環状に架けられた、淡青色のリング状通路。

 リングの内側に広がる、湖のように光る街の中心部。


 それは、この惑星で第二の規模を誇る海洋都市。


 〈イラセア〉――第二都市イラセア。


 都市全体が青いリングに包まれるように造られたことから、

 「蒼環のそうかんのみやこ」とも呼ばれる場所だ。


 車両アナウンスが、穏やかに響く。


 ――まもなく、第二都市イラセアに到着いたします。


 乗客たちが荷物を整え、立ち上がる音が小さく連なる。

 三人もゆっくりと席を立ち、肩の荷物を持ち上げた。


 アシナは、まだ無言のまま。

 ナユカとジローも、声をかけるタイミングを見失ったままだ。


 車両が減速し、青いリングが間近に迫る。


 ――旅の始まりとは違う空気。

 ――ここから先は、ただの探索ではない。


 そんな気配を孕んだまま、

 三人を乗せたアークラインは、静かに第二都市へと滑り込んでいった。

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