表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/48

第17話 「視界の死角へ」

 ガーディアンは入口の前から動こうとしない。

 巨大な体をわずかも動かさず、ただ無機質に、洞窟の薄闇へと視線だけを向けている。


 あれを倒さない限り、外には出られない。


 立ち止まっても、考えても、恐怖は消えない。

 けれど、進まない限り何も変わらなかった。


「……行く」


 ナユカが小さく呟いた。

 自分に言い聞かせるように。


 《光位偏移迷彩ライト・シフター》がナユカの姿を覆う。

 輪郭が、遺跡の壁に溶け込むようにぼやけた。


「ナユカ、気をつけて……」


 アシナの声は震えている。

 ジローは何も言えず、ただ拳を握りしめていた。


 ピオラだけが、無言でナユカの動きを追っている。

 レンズのわずかな揺れが、不安なのか、期待なのか――

 それとも単なる観測なのか、誰にも判別できなかった。



 遺跡の温度は、外よりも低い。

 ナユカは自分の鼓動が、やけに大きく響いているように感じていた。


(近づきすぎるな……視界の中心に入ったら終わる)


 ジローが教えてくれた“視野の死角”。

 そこに自分の命を預けるのは、正直、怖い。


 けれど、誰かがやらなければならない。


 一歩。

 二歩。


 ガーディアンは反応しない。

 光の揺らぎに気づいていないのか、

 それとも近距離の微細な光量差は拾えないのか。


 ナユカの喉がひりついた。


 《光位偏移迷彩ライト・シフター》の範囲から、

 足が半歩、はみ出してしまう。


(しまった!)


 ガーディアンのレンズが、かすかに動く。


(……頼む、気づくな……)


 足が止まりそうになる。

 膝が震え、息がうまく吸えない。


(でも……引いたら終わりだ)


 ナユカは右手のフォージペンダントを、

 ほんの少しだけ握り直した。



 あと数歩で、首の継ぎ目――

 ジローが示した“確実な弱点”に届く。


 その瞬間、ガーディアンのレンズが光った。


 ナユカの全身の血が、一瞬で冷える。


(……見つかった!?)


 その場に倒れ込みそうになるのを、必死にこらえた。

 だが――ガーディアンは動かない。


 光はただ、内部機能が一時的に変動しただけのようだった。


 ほんの数秒が、永遠のように長い。


(あと……一歩)


 《光位偏移迷彩ライト・シフター》越しに、

 ガーディアンの姿が揺れる。


 刺し込むなら、今しかない。



「――ッ!」


 迷いを振り切るように、

 ナユカは一気に踏み込み、


 光刃を、継ぎ目へ深く突き立てた。


 金属が裂ける嫌な音。

 ガーディアンの体が震え、内部で火花が散る。


(動いた! ナユカ、戻れ!!)

 ジローは心の中で叫んだ。


 ガーディアンの腕が乱暴に振り上がる。


 ナユカは転がるように飛び退き、

 体勢を崩したまま通路の脇へと転がり込む。


 巨大な腕が背後の壁を粉砕した。

 石が飛び散り、空気が震える。


(……終わった……?)


 ガーディアンが揺れた。

 立ち上がろうとする。


 ――まだ動く。


「ナユカ!!」


 アシナの叫びが洞窟に響いた。


 ナユカは歯を食いしばり、立ち上がる。


 ――まだ終わっていない。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ