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2 転生

遅れてしまい申し訳ありません。

「ーー黄泉ちゃん遅刻するわよ」


「えーー?」


しわくちゃの中年にそう声をかけられ、思わず魔抜けた反応が出てしまう。

こちらの応答に中年は皺の目立つ眉間をさらに寄せて、


「だーかーら、遅刻するわよ」


「えーー?」


「遅刻よ遅刻!もう8時15分よ」


近所のおばあちゃんことしわくちゃおばあちゃんが杖をつきながら黄泉を見上げていた。


「あー、実は今日寝坊しちゃって」


「また、はあー、昨日も同じこと行って遅れたじゃない、速く学校に行きなさいよ」


「はーい」


しわくちゃおばあちゃんはは杖をつきそそくさとどこかに行ってしまった。

彼女ー神代黄泉は辺りを見回しながら、


「え? ーーどういうこと?」


疑問と当惑に、誰へ向けたものでもない問いを吐き出すのが精一杯だった。


**************


商店街はさっきいた場所とは違い人がごった返しており、たまにジョギングをしている人や店を開店している人もいる。

 辺りを見回わすと霧がなく太陽が輝いており、道を通る人々をガンガンと照らしている。


「てゆうかそんなことをしている場合じゃない早く学校に行かないと!!」


黄泉は黒色の学生用リュックを持ち急いで学校に向かった。


ーーーその後ろ姿を紫色の髪をした女が見ていることは気づかずに






黄泉が通っている学校はコーンボーン国際高等学校と言いグローバル化が進んでいる学校である。そこでは色々な国の人が登校し、在学生達は色々な価値観を学んでる、だが

「何で、いつもこんな急なのよ!」


そう黄泉が通っている学校はとにかく道が坂であり急なのである。立地が近いのはいいがそこに辿り着くまでの道が険しすぎて、何度も筋肉痛になった苦い日常を黄泉は今更ながら思い出していた。


「やっとついた」


時計を見てみると時間はあっというまにすぎていて時計の針は5をさしていた。

急ぎ足で学校の中に入り自分の教室に向かっていく。

コーンボーン国際高等学校は左右対称を意識した作りでありその間にある広い中庭が設けられている。そして正面入口から奥へ視線がまっすぐ抜ける構造で、中心には植え込みと像が設置されている。

「大丈夫かな、怒られないかな」

教室に続くまでの道を頭の中に浮かべながら足を動かし、やがて教室の前に立ち止まった。

 ドアを開けようとする手がガクガク震え手を出そうとしても引っ込んでしまう。

実は黄泉は成績がかなり危ういのである。出席日数は足りてはいるがテストや提出物が悪いようでは進級ができない、もし先生がいれば遅刻したことがバレて成績が落ちるかもしれない。

 先生がいないことを神に祈り、黄泉はドアを開けた。


「黄泉、遅刻しちゃダメじゃないか」


ドアを開けた瞬間、黄泉は怒られた。しかも担任に先生によって


もっと速く起きれば良かったと後悔しながら黄泉は、頭の中で自分が祈った神を殴っていた。



 



朝のチャイムが鳴り響くなか黄泉は自分の机に向かってため息をついていた。

前屈みになった際に顔に垂れてくる髪をどかし次の授業の準備をするために立ち上がりロッカーに向かおうとした。

「黄泉、一緒に化学室に行こうよ」

振り向くと大きく澄んだ青色の目がこちらに向けられていた。

「ok,いま準備するからちょっと待ってて」

「分かった、先に外で待ってるから」

そういい黄泉の一番の親友である橙子は濃い茶色の髪をたなびかせながら歩いて行った。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


化学室はほとんどの壁の色が白であり、やけに横に長い教卓の前に16の机とそこについてくるイスがある。

「はーい、皆さん今日は期末テストがそろそろ近いので自習とします。みんないい点数を取るんだぞ」

そう言い理科の先生は眼鏡をくいっとあげ化学室から出て行きどこかに行ってしまった。

「ねえねえ、黄泉今度の期末どう平均点こえられそう?」

隣に座っている橙子に聞かれ、一瞬言葉に詰まってしまうが覚悟し答えた。

「うん無理、私今度の期末結構やばいかもしれない」

「マジ?」

「うん、マジ」

黄泉がそう答えると橙子は少し心配したような表情を見せてきた。

「ねえ、黄泉約束したよね、一緒に高校を卒業するって、同じ大学行こうって」

黄泉は恐る恐る橙子の顔をみると眉間に皺を寄せて少し責めるような目が向けられていた。

「分かってる、分かってる高一の時に約束したよね一緒に高校を卒業するって、大丈夫覚えているよ」

少し言い過ぎたのかと思ったのか橙子は目を伏せ自分の心を落ち着かせていた。

「まあ、私は大丈夫だと思うよ、ちゃんと提出物も出してるし授業態度も結構いい方だと思うよ」


「それならいいけど、約束だからね。」


「分かった、分かった」


黄泉は少し困ったように言った。






※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


空は赤く染まり学校は下校の時間帯になっており、生徒達は部活や塾など各々の時間に追われていた。

それに最近は期末が近いこともありクラス内ではピリピリとした状況が続いている。


「はあ、まあ橙子も図書室で勉強してるし1人で帰るか」


校門から下校しようとする黄泉は、カバンから水筒を出し飲もうとする。


「はあ、水筒のお茶も無くなっちゃったし最近ツイテナイな」


このまま帰ったら親からガミガミ言われるし、学校に戻って図書室で期末の勉強するのも嫌だと思い、黄泉は一つの考えが頭に浮かんだ。


「よし、ゲーセンに行こう、最近新曲の追加もあるし遊びに行くか」


自分の懐から財布を出し小銭がいくつあるか確認し、ゲーセンに行く。

その後ろ姿はどう見ても期末テストが近い学生の出せる雰囲気ではなかった。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


空が赤く染まり、夕日が商店街を照らすなか道に紫色の髪をした女が歩いている。

日本では髪を染めたり、ピアスをしたりなど色々な人がいる。時には目立ち、周りの人から好奇の視線が浴びせられることがよくある。


だが、紫色の髪をした女が歩いてるなか周りの人の視線はなく。各々のいまやるべきことを達成しようと足を動かしている。


「まあ、想像はしていたが。こうも人々に認識されないのは、心が痛いな」


自らの足を進ませ、己の果たすべき役割を果たす。その決意を決して忘れてはいけない。忘れてはならない。


赤い和傘をさし、その瞳はどこか切なそうにけれど強固な意思を持っている。


彼女が歩む道は誰にも邪魔されることなく進んでいる。



・・・ただ1人を除いて





※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「にしても今日はやけに上手くノーツを叩けたな、不思議なこともあるんだな」


そう、つぶやくのはもうすぐ期末が近い高校生の黄泉である。


黄泉が今出てきたゲーセンは商店街には似つかない外観を持っており、入り口に所には、茶色のレンガが円状に敷き詰められており、非常にレトロな雰囲気がある。


場所も家からほどほどに遠く、学校からは遠いので同世代の高校生の穴場となっている。


「それにしても、私ってなんで刺されたんだろう」


そう思い黄泉は体が空いた位置を手でさすると微かにだが痛みがある。


 自分を刺した女を思い出そうと思ってもモヤがかかってなかなか思い出せず、なぜと頭に疑問を浮かぶが、そこから先に思考を傾けても、なかなか答えが出ず、逆に恐怖に体が震えてしまう。


この場で色々考えたとしても碌な考えは出ないと黄泉は自分の中で無理やり考えを打ち切り、家に帰りお風呂に入りながらゆっくり考えようと行動を起こそうと足を一歩踏み出した。






・・・・その瞬間、周りの通行人が急に止まり商店街の景色も暗く幻想的になっていく、人々の囁き声やコンビニの入店音が聞こえなくなり、足音は自らの足音しか響かない。


「え、なんでまた」


 黄泉は恐怖で体が震えた。また自分が刺されるかもしれない。また殺されるかもしれない。人間に本能があるのかはわからないが黄泉は恐怖を感じ道にいる人々を押し抜け走る。額から汗が落ち、手から汗が滲み出ている。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 ただひたすら走る。後ろを振り返らずにただひたすら家に走って帰る。やがて黄泉は自分が住んでいるマンションに着いた。周りの人々はまだ止まっていて景色も黒く幻想的になっている。


「ここまで、来れば大丈夫だよね」


 黄泉は自分にそう結論付けると、マンションの敷地内に入ろうとする。



・・・・・・その瞬間、黄泉の体にグサッという何かが軋む音が聞こえ、そこから血が滴り落ちてくる。


「すまない、時間が本当にないんだ。痛いかもしれないが許してくれ」


 黄泉はあまりの痛さから思わず舌を噛みそうになるがその痛みを無視して顔を上げると、、、


「さっき私を刺した人」


 自分でもひどく落ち着いた声と低い声が出たんだと認識した。もう一回声をあげようと口を開いた瞬間、溢れたのた声ではなく血塊だ。

 咳き込み、喉から込み上げる命の源を吐き出す。ごぼごぼと、口の端が血泡を浮かぶほどの出血。ぼんやりとした視界に、真っ赤に染まったれんがの地面が見える。


ーーーーああ、これ全部、私の血か。


 倒れるほどの出血。傷口かも血が噴き出ており、白い制服がトマトケチャップのように汚されてゆく。

 意識が朦朧としてゆく中で最後に自分を誰が刺したのかを確かめようと目を開けた。


ーーーーそこには紫色の髪色のした女がいた。


「もし、そっちに流れて困ったら私の名前を心の中で叫ぶといい、そうすれば私達が果たすべき役割がいつか分かる」


ーーーそう、虚無ニヒル


そう言い、ニヒルは傷口に刺さっている刀をさらに強く押し込む。


 自分の口から声にならない悲鳴が溢れ出す。今すぐにも此処から逃げたいが全身の筋肉の力が弱く、動けない。


ーーそしてニヒルの体から紫色の光が浮かび上がり刀を通って黄泉の傷口に流れこむ。

 その光は綺麗だが同時にどこか切なそうな感じが見える。


「う、ああー」


遠ざかっていく意識のなか流れこむ異物感が気持ち悪く声を上げる。

 だがそんな「痛み」も「異物感」も全ては遠く、なくなっていく。


だけど、それでもーー、


ーー母さんと父さんと仲直りしたかったな。


その気持ちを胸に抱いたまま、黄泉は静かに命を落とした。


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