スライムと一緒に昼食
昼休み。
太郎は、校舎の階段を上り、屋上へ向かっていた。
昼時の屋上は学生達にとって人気スポットだったが、教師によって立ち入り禁止にされている。
柵はあるが、風が強い。吹き飛ばされて落下でもすれば、学校の責任問題になりかねない。
けれど、ぼくは仲の良い顧問に入れ知恵して鍵を手に入れた。スペアキーを作ってしまえば、借りた鍵を返したところで好きな時に屋上へ来れる。
ぼくが扉を開けると、乾いた風が吹き抜ける。
「……今日は誰もいないな」
立ち入り禁止でも、鍵があれば屋上に来ることができる。この学園には、ぼく以外にも特待生が居るらしく、彼らはよく好んで屋上に現れていた。
しかし、お互いに不干渉を貫いている。
ぼくはフェンス沿いのベンチに腰を下ろし、手に持っていた菓子パンとジュースに手をつけた。
白衣のポケットの中で、スライムが小さく揺れて飛び出した。硬いコンクリートの上で、思う存分跳ね回っている。
「落ちるなよ」
菓子パンを頬張り、勢いよくジュースを飲み干した。昼ご飯は一分で充分、あとの時間はひたすら寝てしまおう。
ぼくは座っていたベンチに寝転がり、目を閉じた。
食後の眠たくなる時間帯、少し気だるくて心地いい。
スライムはと言うと、身体を細くして空に向けて伸びている。
……うん、目立つからやめてほしい。
「……屋上で昼食とか、いかにも青春って思うか?」
細い針のようになっていたスライムが、いつもの形に戻っていた。
「いや、なんでもない」
ぴょんぴょん、とスライムが弾みながら近づいてきた。
「誰かと食べるとさ」
ぷるん。
「気使うだろ」
ぷるぷる。
「話題とか、間とか」
ぷる……。
「その点、おまえは楽だ」
スライムは、膝の上に飛び乗ってきた。
「無言で同じ時間を過ごして、でも考えてることはなんとなく分かる」
ぷる。
「それで成立する」
昼休み終了のチャイムが鳴る。
ぼくは、スライムを白衣のポケットに戻した。
「……さて、午後だ」
ぷる。
スライムは短い返事の後、ぼくのポケットに収まった。屋上での昼食は、いつもより静かで、少しだけ満たされていた。




