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2/8

モブキャラ退場のお時間でーす

記念すべき第二話!!多分最終回まで言い続けると思う!!

 「……な、なんだよ、これ……」


 膝から崩れ落ちた男子生徒の一人が、掠れた声で呟いた。


地面に手をつき、震える指先で自分の顔を触る。痛みはなかった。しかし、それ以上に信じられない、理解できないという困惑が彼の表情を覆っていた。


和誠の拳は、男の顔には当たっていなかった。寸前で止まり、男の首元を掴んで引き寄せ、そのまま彼の体を軸にして、わずかな力で床へと倒したのだ。一瞬の出来事だった。


 和誠はそんな彼を冷めた目で見下ろしながら、もう一度、呆れたように口を開く。


 「何驚いた顔してんだよ、『主人公』が人を守るために強いのは当たり前だろ?」


その言葉に、残りの二人も顔をこわばらせた。一人が拳を握り、和誠に向かって一歩踏み出す。


 「てめぇ…!ふざけんな!」


彼は叫びながら和誠に飛びかかろうとしたが、和誠は一瞬早く声を出した。


 「なぁ、そこの窓を見てみろよ」


男たちが戸惑いながら廊下側の窓に視線を向けると、そこには、窓の枠に立てかけられたスマホが彼らを撮影しているのが見えた。


 「まじ、かよ……」


和誠は得意げな笑みを浮かべた。


 「お前らが、いじめてる様子をさ、ばっちり動画で撮っておいたんだよ。いやー、いい画が撮れたよ」


男たちの顔から怒りが消えそして恐怖に変わった。


 「なっ……何言ってんだよ!?やめろよ!」


 「冗談じゃねぇぞ!」


彼らは必死に声を荒げるが、和誠は顔色ひとつ変えない。


 「冗談なんかじゃないって。だって、お前らってさ、自分たちがどれだけクソダサいことしてるか、わかってねぇんだもん」


 「俺はさ、子供の頃からずっと、『主人公』に憧れて生きてきたんだ。悪者や、弱い者いじめをする奴らなんて、物語にだってろくな結末が用意されてないって知ってたから」


和誠は幸來に視線を向けた。幸來は未だに床に座り込み、小刻みに震えている。


 「でも、お前らは違った。自分たちの物語をハッピーエンドにするために、他人の不幸を糧にする。そんなこと、俺が許すわけないだろ?」


男たちは、何も言い返すことができない。ただ、和誠の言葉の重みに、息を詰めていた。


 和誠は、ゆっくりと彼らに歩み寄り、一人一人の顔を覗き込む。


 「さて、お前らの物語は、ここで終わりだ。悪役は、主人公に倒されて、物語から退場する。それが、決まりなんだよ」


男たちが何も言えずにいると、和誠を殴った男子生徒が、震える声で尋ねた。


 「なんで……なんでお前は、俺たちの邪魔をするんだよ。……お前だって、本当はいい子ぶってるだけだろ?」


その言葉に、和誠はフッと笑った。


 「いい子ぶってる?違うね。俺は、俺が信じる

『主人公』を演じてるだけだ」


和誠は、教室の窓から差し込む夕日に目を細める。


「お前らには、わからないだろうけどな」


再び、彼らに視線を戻す。


 「けど、本当にお前らって脇役意識高いよねー、ちゃんと自分からこの学校から、俺や彼女の物語から退学って言う形で退場してくれるなんて」


その言葉は、彼らの心に深く突き刺さった。和誠の言葉に、彼らはまるで自分たちの存在意義を否定されたかのような、絶望的な表情を浮かべた。

男子生徒達は、和誠から逃げるように後ずさり、床に座り込んでしまった。


 「さぁ、もうお時間だ。さっさと出ていけよ」


和誠は彼らを指さし、まるで舞台から退場を促すように言う。3人は、震える足で立ち上がり、和誠の言葉に促されるように、教室を後にした。


彼らの後ろ姿を見送りながら、和誠は最後に声を張り上げた。


 「2度と俺の物語に関わるな天性のモブキャラども」


 教室には、和誠と幸來、そして静かに差し込む夕日だけが残された。和誠は深呼吸し、背筋を伸ばす。


 「ふぅ……さて、と。あとは、」


 「大丈夫か?」


和誠は幸來の方に振り返り先程とは違うどこまでも優しい柔らかな声で話しかけた。


次こそはラブコメ!(多分無理)

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