お前らって漫画見たことねぇのかよ?
初めて、小説という物を書き始めました!
分からないことだらけで、こんな感じでいいのでしょうか?まぁ暇な時にちょくちょく書いていくつもりなのでこれからよろしくお願いします!
「お前らって漫画見たことねぇのかよ?」
放課後の薄暗い教室に、彼、元宮 和誠の苛立った声が響いた。
窓から差し込む夕日は、まるで舞台照明のように、彼と、彼を取り囲む4人の生徒だけを照らし出している。
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高校一年生。誰もが進路を真剣に考え始める時期に、和誠もまた、ただ一つだけ、子供の頃から変わらない夢を誰よりも真剣に追い続けていた。
「『主人公』になりたい」
アニメや漫画、あらゆる物語に欠かせない存在。それが『主人公』だ。
悪に染まったり、道を外れたりすることはあっても、彼らは決して読者に嫌われることはない。
当然だ。『主人公』が完全に読者から嫌われてしまえばその『主人公』を中心に回る世界のことを読者は好きになれるはずがないからである。
言わば、『主人公』が嫌われたその瞬間が、その物語が完全に存在意義をなくす時なのである。
だから『主人公』達は、作者から「根はいいヤツ」という絶対的な設定を与えられている。。
そして、和誠は、これまで数々の物語を読んで、数々の『主人公』に触れ、一つの結論にたどり着いた。
『主人公』とは、物語の誰よりもかっこいい存在である、と。
その結論に至って以来、和誠は憧れの『主人公』たちの言動を、私生活で真似るようになった。
幼い頃は、年相応に戦隊ヒーローに憧れ奇妙なポーズをとり、周りから「痛いヤツ」呼ばわりされていた彼だが、今では、皆から好かれる『主人公』として、順調な高校生活を送っていた。
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その日、和誠は学校に提出する課題を忘れてしまい、放課後の校舎に戻ってきた。
誰もいない廊下を歩いていると、一つの教室から声が聞こえてくる。
それは、談笑の声ではなかった。
和誠は音を立てないようにドアを少しだけ開け、中を覗いた。
そこには、床に膝をついて小刻みに震えている、同じクラスの文月 幸來と、彼女を囲む3人の男子生徒の姿があった。
そして、3人の男子生徒が幸來に侮蔑の言葉を投げつけている。
「なぁ、約束の一万、どうしたんだよ」
「ご、ごめんなさい……お小遣い、もうなくて……」
幸來は床に頭を押し付けて謝る。
「は?親の財布から盗むとか、バイトするとか、頭使えよデブ」
「それに、その声なに?ぶりっ子か?お前みたいなデブは、ブーブー言ってろよ」
男子生徒の一人が下品に笑った。
「す、すいません……でも、この声は生まれつきだし、バイトは禁止で……」
「だから何だよ?一回痛い目見ないと分かんねぇのか?」
一人の手が、幸來の頭を掴もうと伸びる。
その瞬間、和誠は教室に飛び込んだ。
「おい……やめとけよ」
ドアを勢いよく開け、和誠は苛立ちを露わにした。
「は?何だよ、お前……」
「あのさぁ……」
和誠は呆れたように口を開く。
「お前らって漫画見たことねぇのかよ?」
3人の男は戸惑いながらも、和誠に敵意を向ける。
「何言ってんだ?意味わかんねーんだけど……」
「てか、入ってくんなよ。今、楽しくお話し中なんだからさ……」
和誠はさらに声を荒げた。
「質問に答えろ。お前らは漫画を見たことがあるのかって聞いてんだよ」
「あったら何なんだよ」
「その漫画の『主人公』は、お前らみてーに女子をいじめるような、クソダサい行動をとっていたのか?」
男たちの表情が歪む。
「誰がダサいって?」
「そんなダセーことする時点で、お前らは脇役なんだよ。物語に一話しか出てこない、ただのモブキャラだ」
男たちの顔から嘲笑が消え、怒りに変わった。
「……何言ってんだ、こいつ。本当にムカつくんだけど」
「脇役?主人公?いつまで厨二病引きずってんだよ」
男の一人が和誠に掴みかかろうと一歩踏み出した。
「マジでムカつく。お前みたいなヤツが一番嫌いなんだよ」
そう叫んだ男は、震える拳を和誠に向けた。
「もういいやお前も一回痛い目見ようか。目覚まさせてやるよ」
男は和誠に殴りかかった。
男の拳が和誠の顔に当たり、和誠の体が大きく傾いた。
そして……和誠を殴った生徒は、膝から崩れ落ちた。
「そんで、お前らみてーな脇役を倒す。これが、
『主人公』だ」
次の次ぐらいの話でラブコメになれたらいいなぁ