【悲報】追放されたヒーラーが淫乱ドMだった件
「お前は追放だ!」
激しい怒号に、ヒーラーのリラは肩を窄めて身を震わせた。百五十センチもない小さな体を震わせて上目遣いにリーダーを見る姿が憐れを誘う。
「そ、そんな……私、ここ以外に居場所がなくて……」
喉を詰まらせてきゅうと子犬の声で鳴く。俯くと、大きな翡翠の瞳からぽろぽろと涙が溢れた。長い金色の髪がしだれて顔を隠す。
見ていられなかった。
「そこまで言うことないだろ!」
俺はリーダーに食ってかかる。実力差は歴然で、一睨みされるだけでその威圧感に震えそうになる。指折りの実力者と言われるだけあった。
「馬鹿野郎! こいつのせいで全滅しかけたんだぞ! 一度や二度じゃない! なんで敵を回復するんだよ! アンデッドならまだしも!」
「そりゃ……可哀想だったんだろ」
「倒しに行ってんだよこっちはよぉ! 付き合ってらんねーのよ! そいつ追放して不満ならもうお前も出てけよ! うちじゃ面倒見るの無理だよ!」
声を荒げてブチ切れているのはリーダー一人だが、他のメンツは俺から目をそらして頷くばかりだった。そもそもリーダーも熱血タイプだが普段は温厚な方である。
「ぐすっ……」
リラは泣き続けている。ワンピース型の白い僧衣の胸元は高く隆起している。胸元にぽたぽたと涙の染みができていた。
「……俺も一緒に行くからさ」
低い位置にある薄い肩をぽんぽんと叩く。
「……お世話に……なりました……」
罪悪感を煽るような小声にリーダーは唇を噛んだ。俺は彼女の隣に寄り添って歩き出す。周囲の視線はどことなく冷ややかだった。
*****
追放されたばかり、顔の腫れが引く前に、リラは冒険に出たいと行った。俺がどれだけ止めてもリラの意思は固かった。
「だって、一緒に行ってくれるんでしょ?」
そう言われると弱い。……惚れた弱みだ。
俺たちは森を歩いていた。視認性が低いから、レベルが低い魔物にも大きなダメージを食らう場合がある。周囲の気配に神経を研ぎ澄ませながら、ずいずいと奥に進んでいくリラへ声をかけた。
「功績をあげて見返したいのか?」
「いえ……追放されてしまいましたし。ああ言われてしまうと、同じ手は使えませんから」
「話が見えないぞ。なんのことだ」
淡々とした声音だった。底知れないものを感じて、俺は少しだけ緊張する。俺の想像するリラは、俺の見てきたリラは、鈍くさくても一生懸命やっていて、びくびくぶるぶるしながらぺこぺこ頭を下げる小動物のような少女だ。
長い睫に彩られた緑の丸い瞳がミステリアスに輝く。俺の頭の中を透かして見ているとでもいうのか。ふんわりとした滑らかなラインを描く頬が薄紅に染まっていた。
「私、ピンチになると興奮するんです……追放も悪くないですね」
果実のようにふっくらとした小さな唇が笑みの形を描く。
ピンチ=ストレス=興奮。まあわかる。でも、リラの表情はそういった種類の興奮ではなかった。上気した頬、濡れて怪しくギラつく瞳、浅く荒い息。
「……興奮ってそっちの?」
リラは、ふふ、と笑う。
その辺の木に背中を預けると、白いスカートの裾をぺろりとめくりあげた。
あっと声を上げる間もない。
外気に晒されたそこは……端から外気にさらされていた。へその下から一繋がりのつるりと白い肌は無毛だ。タイツだと思っていた薄手の白いソックスはウエストで吊られていて、むっちりとしたヒップと太ももを強調するように彩っていた。
「はいてないんですよ。興奮するから」
「魔物を回復したのも?」
「はい。興奮しました。全滅したら巣穴につれていかれちゃうのかしら……とか思うと、お腹の奥がむずむずして……」
怪しげにうふふと笑う。
こんなに可愛いのに頭のおかしい女だったなんて……そういえば追放のときは特に女子の視線が厳しかった気がするけれど、リラが可愛いせいではなかったのだ。顔に騙された俺を蔑んでいたというのか……。
「みんなの前で怒鳴られる体験も晒し者にされているみたいで気持ちよかったですね」
笑う吐息すら艶やかに色づいていた。
かばった俺がバカみたい。本当バカね。あんた信じるばかりで……。口も効けねえ。
「本当は強いオスのご主人様に首輪を付けて町の中を裸で引き回して欲しいんですけど」
「捕まるぞ」
「でも、ここなら捕まりません。町の外なので。んふふ……私を信用して一緒に追放されてくれたあなたのことまで裏切っちゃいましたね」
リラはぐっと腰を前に突き出して陰部を見せつける。桃色の蕾はとろりと濡れていた。
「おしおきします? 復讐します?」
煽るような上目遣い。
俺は……俺は……っ!
*****
遠くから見守る視線を感じた。
「うわー……引く~」
「幸せそうだからいいんじゃね」
「今日のおかずはこれでいいか……」
何かひそひそと……わりとしっかり聞こえたけど……聞かなかったことにしよう!