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『そして、別れの時』〜猫たちの時間13〜  作者: segakiyui
12.夢を抱いた男

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5

 列車は快適に走り続けている。別車両へ案内されていった連中も、あえてなだれ込んでくる様子はない。

 そうして俺は、1車両を1人で貸し切ると言う、生涯一度の旅を楽しんでいる。

 他に誰もいないと言う爽快さも楽しかったが、心の中に湧き起こった、この上もなく都合の良いお人好しな幻想に浸っている。

 きっと、絆は切れないものなのだ。

 人と人が巡り逢って、いろいろなことがあって、結局は別れていってしまうにせよ、きっと、一度結んだ心は切れない。エンドレステープのように、或いは水面に描かれた同心円のように、同じ想いが繰り返されて、その度ごとに多少違う味付けをされて、果てしなく人は巡り逢って行くものなのだ。

 結果、それがどんな曲を作るのか、どんな軌跡を描くのか、それは誰にもわからない。出来上がったものを振り返るには、多少の勇気がいるかも知れないが、巡り逢った時に真剣だったなら、『拙い』作品ものはあっても、『駄目な』作品ものはないはずだ。

 強がって開け放った窓から冷えた風が吹き込んでくる。だがその風も、嗅ぎようによっては、ほのかに甘い、花の香りを含んでいるような気がする。

 これから先、周一郎と俺がどうなるのかは誰にもわからない。このまま永久に会えないのかも知れない。

 或いは、ひょいと曲がった角なんぞで出くわして、またもや、お節介と意地っ張り、どうしようもない三文芝居を繰り広げるのかも知れない。

 けれども、それはそれで、と俺は考える。それはそれでいいじゃないか、と。

 ひょっとしたら、神様ってのが俺に与えてくれたのは、数限りない三文芝居を繰り返して、人の波の中を歩いていく、そんな『生きやくわり』なのかも知れない。

 どーせ、俺は『厄介事吸引器』なのだ。


 陽射しは天の中空にある。列車はひたすら走り続ける。

 揺られながらいつしかまどろみ、夢の中で俺に向かって走ってくる、誰かの声を聞いた。

 

 『滝さん!!』…………。



                        終わり


 別れが必然性を持つものなら、その瞬間をこそ鮮やかに、と願っていました。

 さて、その通りに書けたでしょうか。また、自分の選ぶ別れにも、そんな風に生き抜けるでしょうか。

 何はともあれ、物語は終わりました。長い間のご愛読、本当にありがとうございました。また、2人を愛して下さってありがとうございました。キャラクター全てに成り替わり、ここで御礼申し上げます。

 そして三度、皆様に、心からの感謝と愛と友情と、その他、私の持ち得るお望みのものを込めて。


 楽しんで下さって、ありがとう。

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