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列車は快適に走り続けている。別車両へ案内されていった連中も、あえてなだれ込んでくる様子はない。
そうして俺は、1車両を1人で貸し切ると言う、生涯一度の旅を楽しんでいる。
他に誰もいないと言う爽快さも楽しかったが、心の中に湧き起こった、この上もなく都合の良いお人好しな幻想に浸っている。
きっと、絆は切れないものなのだ。
人と人が巡り逢って、いろいろなことがあって、結局は別れていってしまうにせよ、きっと、一度結んだ心は切れない。エンドレステープのように、或いは水面に描かれた同心円のように、同じ想いが繰り返されて、その度ごとに多少違う味付けをされて、果てしなく人は巡り逢って行くものなのだ。
結果、それがどんな曲を作るのか、どんな軌跡を描くのか、それは誰にもわからない。出来上がったものを振り返るには、多少の勇気がいるかも知れないが、巡り逢った時に真剣だったなら、『拙い』作品はあっても、『駄目な』作品はないはずだ。
強がって開け放った窓から冷えた風が吹き込んでくる。だがその風も、嗅ぎようによっては、ほのかに甘い、花の香りを含んでいるような気がする。
これから先、周一郎と俺がどうなるのかは誰にもわからない。このまま永久に会えないのかも知れない。
或いは、ひょいと曲がった角なんぞで出くわして、またもや、お節介と意地っ張り、どうしようもない三文芝居を繰り広げるのかも知れない。
けれども、それはそれで、と俺は考える。それはそれでいいじゃないか、と。
ひょっとしたら、神様ってのが俺に与えてくれたのは、数限りない三文芝居を繰り返して、人の波の中を歩いていく、そんな『生き方』なのかも知れない。
どーせ、俺は『厄介事吸引器』なのだ。
陽射しは天の中空にある。列車はひたすら走り続ける。
揺られながらいつしかまどろみ、夢の中で俺に向かって走ってくる、誰かの声を聞いた。
『滝さん!!』…………。
終わり
別れが必然性を持つものなら、その瞬間をこそ鮮やかに、と願っていました。
さて、その通りに書けたでしょうか。また、自分の選ぶ別れにも、そんな風に生き抜けるでしょうか。
何はともあれ、物語は終わりました。長い間のご愛読、本当にありがとうございました。また、2人を愛して下さってありがとうございました。キャラクター全てに成り替わり、ここで御礼申し上げます。
そして三度、皆様に、心からの感謝と愛と友情と、その他、私の持ち得るお望みのものを込めて。
楽しんで下さって、ありがとう。




