二話 街へ
降り立った先はまたさっきと同じ様な場所だった。
沢山の人がいて「どういうことだよ!」と声を荒げている人もいる。
困惑していると頭の中に直接機械音声が流れてくる。
「手違いにより違う世界に転送してしまったことを深くお詫び申し上げます。
お詫びに好きな技能またはアビリティもう一つlv3にする権利を差し上げます」
この運営大丈夫か…?と思いながらもlv3に出来るのは大きい。
どこに振ろう…?
レーダーはどの様な性能かわからないし、
魔法系は強いかわからない…
そういえばアビリティにも振れると言っていたな、
HPが低いのでエネルギーシールドに振るか。
エネルギーシールドに技能を振るとまた頭の中に機械音声が流れた。
「エネルギーシールドがlv3になった!
耐久が20から30となった!
イージスシールドを覚えた!」
え?イージスシールド?レーダーに引っかからないとかだろうか?なんだろう?
わからないので無視しよう。
しばらく文字通り羽根を伸ばしていると
「準備が整いました
新しい人生を楽しんで下さい!」
と言われ視界がまた白に包まれた。
目を開けると初夏の森の中だった。
一回行ったことがあるがまるでヨーロッパの森の中だ。少なくともシベリアの針葉樹林では無い。
辺りを見渡しても誰もいない、だが…何か気配を感じる。
「上か…!?」地面を蹴って翼を広げ飛び立ち高度を上げる。
飛ぶ方法など知らないが何故か自然に出来た。これが本能なのだろうか。
間一髪で攻撃を避けれた。
下をみると大きな鳥が追ってきている。大きさはゆうに10メートルを超えている
いやおかしいだろ!?
適応能力には自信があるが突然でかい鳥が襲ってきたら誰でもびっくりするだろう。
素早く肌身離さず持っていたドラグノフを取り出し7.62ミリ弾をセット。
この動作は何かあった時の条件反射となっているくらい身に染み込んでいる。
ドラグノフはソビエト連邦の同志ドラグノフが設計したスナイパーで60年前から使われているで使用されている。
数々の軍でも使われている実績のある銃だ。
口を開けた瞬間弾をプレゼントする作戦だ。
上へ上へと迫ってくる怪鳥が攻撃準備をしたその瞬間、引き金を引いた。
強烈な発射音と反動とついでに放たれた火球が私を襲う。
榴弾が爆発した音が聞こえた瞬間に上へと急上昇し距離をとった上で斜めに下降して火球を避ける。
「抜けた!」
地面と落ちていく怪鳥がはっきりと見える、できればなにか欲しい。
地面に降り立つと怪鳥の死体がある。
大きく分解が大変そうだ。諦めよう。
さて、ここからどうするか。
まずは技能とアビリティの確認をしてみる。
強い技能があっても使えなければ意味がない。
主技能の狙撃とキックからだ。
最初に狙撃、
ドラグノフを構え300メートル程先の木に狙いを定める。
照準を合わせると視界に直接ライフルスコープみたいなものが映った。
見た限り2倍の望遠レンズといったところだろうか十字線もないので使いづらいったらありゃしない。
まあ前世で長距離を得意にしてたのでしっかり当てるが、
lv3ではこのぐらいということか。
次はキックだ近くにあった木に蹴りを放つ。
葉が数枚落ちてきたがそれより、足に走る衝撃の方が大きかった。
当分使う事はなさそう。
次は副技能のレーダーと工作だ。
レーダーはレーダーを出したいと思うと空中に液晶のような物が現れ周りの生体反応を示してくれる。
液晶のような物(今後はレーダー画面と呼ぼう。それ以外の呼称が思いつかなかった)は好きな場所に移動できた。
今はノイズが大きくネズミなどでもキャッチしてしまうため使いづらい。
虫が写ってないだけでも幸いと思う。
工作は工作するような物がないのでまた落ち着いた時にしよう。
アビリティのエネルギーシールドはどんなに試しても一向に出る気配は無い。
今は悩んでも仕方がないのでまた今度。
次にどうするかだがこのままではいつかお腹が減って死んでしまうので街に行くのは確定、
今までのように暗殺業もしながら折角異世界に来れたんだからそれっぽいことがしたい。
まあ、まずは街へ向かうのが先決だ。
飛び上がると森を抜けると平原が広がっていて他の冒険者、おそらく転生者だろう、が歩いている。
遠くに城壁らしきものが見えたのでそこに向かおうか。
しばらく飛んでいると色々なものを見ることができた。
まず、この地帯は谷の様で間に一本の大きな川が流れている。
街の周りは平原だがそこから先は森林が広がっていて最終的には海に繋がっている。
谷底から外へ向かう昇降機もあることから工業が発展しているのだろう。
そして何よりも、すっっっっっごいファンタジー色が強い。
ファンタジー小説が好きな私にとってはとてもありがたい。
煙突から漂う煙
黄金色の大地
暮れゆく陽…暮れゆく陽?
え?もうちょいで夜じゃん、寝ないと。
そう思い下降を始める。
あれ?どうやって着陸するんだ?怪我をしない様に気をつけて胴体着陸をすることにした。
スピードをできる限り落としながら地面ギリギリで翼をたたみ転がる。
肋骨が折れるかと思ったが無事なので綺麗に落ちれたらしい。
荷物は傷ひとつないもちろんドラグノフもだ。
袋高性能すぎない?
とにかくテントを張って止まらなければならない。
とりあえず寝袋に包まって寝る。
異世界での初の睡眠、襲撃とかあったら困るけどレーダー張って通知をオンにしとけば大丈夫だと思いたい。
真夜中けたたましいアラーム音と共に起こされた。
レーダーに写っていたのは大きな5個の生体反応、しかもこっちに向かっている。
まさかの襲撃?だが襲撃に慣れてない事はない。
暗殺業していて何度不意打ちで殺されそうになったか。
外に出て確認すると男たちが剣を振り上げこちらへ走ってきている。
死にたくはないのでドラグノフを構え射程圏外まで飛び上がる。
「すいませーん、どちら様ですー?」
「勇者だ!物資よこせ!」
「そんな乱暴な勇者いないと思うので出直してください!撃ちますよ?」
「撃てるもんなら撃ってみろよ!どうせ怖くてできないだr」
その言葉を彼が言い終わる前に彼は地面に倒れた。至近距離での銃撃は初めてだが圧倒的に楽だ 。
あれ、こんな所で人殺して、後処理しないといけないのだろうか?
これ以上撃つのは面倒いし寝たいので、帰って欲しい。
これ以上死体作りたくない。
警告はしとこう。
「早く逃げたほうがいいと思いますが?」
「ちっ、次会うときは気をつけとけよ!」
寝たい、飛行、結構体力使う。
さあ、片付けだ。
まずは穴を掘る。
地面を掘りそこに死体を投げ入れ埋める一応火炎瓶があるので燃やして骨にする。
そしたら匂いも減るので寝れるのだ。
おやすみ
朝、またけたたましいアラーム音が鳴った。
なんでや
あ、ステータスにアラーム機能があった。
知らないうちにアラーム設定してたらしい。
テントを畳んで背嚢にしまい飛び立つ。
あと、30キロくらいだろうか、この調子だと休憩しても30分くらいで着きそうだ。
時速80キロくらいで飛行して街から200メートルくらいで着陸し歩き始める。
飛ぶことが主体な体の作りな気がするので若干歩きにくい。
もう一回飛ぼうかと思ったが門番の前で派手に転がる醜態を見せたくはないので歩く、
城門までくると意外と高く20メートルはあるだろう。
とりあえず詰め所を探す。
どんな門でも守衛がいて守衛に頼めば入れてくれるのが常識だ。
そうこうしていると他の人がやってきた5人組で高級そうな装備をつけている。
碌な人ではなさそうだがもしかしたら良い人かもしれないので声をかける。
「あのー、何故そこに固まってるんですー?中に入ったらいいと思いますがー」
「あ?お前には関係ねえだろ!…お前、結構金ありそうだな…よこせ!!」
「は!?いや無理ですが!?」
「じゃあ奪い取らせてもらおう!」
そういって男達は拳銃を取り出した。
頭筋肉でできてるんじゃないかと思うぐらい暴論すぎる…
面倒事には首を突っ込むのは嫌いだ。
しかも門番の前で殺しでもしたら私の異世界生活は終わってしまうだろう。
死にたくないが避けれそうにない。
いくら素早くても銃弾より速く飛べる鳥はいないのが宇宙の理である。
ならば全てを受け止めるか全てを弾き返すかだ。
ない頭を必死に回しして考える。
その時、男たちが引き金を引いた。
避けようとしても避けれる速度ではない。
死を覚悟した時オレンジのガラスのような壁が目の前に現れた。
その壁が男達の発射した弾丸を跳ね返す。
最後の弾丸と共に壁は割れた。
なるほど、命の危機の時に自動で現れるのだろうか。
自分の意思で発動できるようにしたい。
それが出来たらだいぶ強そうだ。こんな強いものを素人に渡して良かったのだろうか?
これで動きまわって照準を合わせづらくする、それを長い間していれば増援が来て助けてくれるだろう。
というか早よ町の人来てくれ。
そう思い辺りを見渡すと…人が、しかも武器持った人たちがこっちを眺めてるではないか。
「助けて!!??」
思わず声が出てしまった。
見ていた人たちも私が悲痛な叫びを上げたことに気付いたのだろう。
すぐに華麗な剣捌きで男たちを制圧していった。
危険が去ったので翼をたたみ地上へ降り立つ…が毎度のように上手くいかず腰を強打してしまった。
情け無い…というか恥ずかしい。
疲労で起きれないのでどうすることも出来なく、会話しようとしても声が出ない。
防戦とはこんなに疲れるのか。
倒れて喋ろうと口をぱくぱくさせている自分を見て察したのだろう。
騎士らしき人物が話しかける。
「大丈夫か?さっきの防戦は凄かった。並の冒険者が出来るものではない。」
「あ…がとう…ご…ざいま…す。私…は転…生者…です。」
「転生者!?最近、街の外に野蛮な人たちが出現して対処に困っていたのだ。
一応、規則に従って門で通行手形の購入をした者は入れたが、さっきの者たちのように乱暴な振る舞いをした者は即牢屋に送っている。」
「あ…の…体力が限界…で…」
「そうだったな、担架を持ってこい!」
(回復してくれないの…!?)
結局担架に乗せられ何か薬を飲まされた。
運ばれて十分程で強烈な眠気に襲われ意識は闇に落ちていった。




