第十一話 イーゲル討伐
週2投稿と宣言しましたが今週3本目です
学校休みなので調子乗りました
翌日、11時くらいに起き依頼をもらいにギルドへ行った。
いつものように人が多かったが何やら緊迫感が漂っている。マリアンジェラさんも少し焦っているように見える。
何があったか聞いてみよう。
「どうしたんですか」
「んあ?あ、ナターシャちゃん、この依頼受けれる?」
「いいですけど、どんな依頼なんですか?」
「イーゲルという古代文明の自律型兵器が暴走しだしたのよ、それが守っていた遺跡が荒らされたようで…それで動き始めたんだけど誰もこの依頼を受けたがらなくて、受けてくれてありがたいわ」
「どこで起きたんですか?」
「西に60キロくらいのところにあるモルト コッリーナというところよ。古代文明の遺跡が多くて治安も悪い所ね」
「分かりました、早速向かいます」
「そういえば弾薬と矢、あとマチェットって買えますか?」
「買えるよ、何発買う?」
「弾を60発と矢を同じ数そしてマチェット1丁ください」
「矢が50Stella、弾が10Stella、そしてマチェット100Stella合計160Stellaね」
「はい」
「口座から引き落としとくね」
「分かりました」
あれだけ弾が作れると言っておきながら、まだ作ってなかったのだ。帰ったら作ろう。
「あ、これが詳細ね」
(イーゲル討伐 報酬など詳細)
依頼者モルト コッリーナ中央教会
古代文明の闘技場跡にて暴走したイーゲルの停止
期限 依頼日から20日後ほどで闘技場を破壊し脱出されると予想される
脱出すると甚大な被害が出ると予想されるため、それまでに討伐を願う
報酬 4050Stellaとイーゲルの部品など
滞在中は3食+宿提供
このような内容か。4050Stellaもあったら2ヶ月暮らせる。それほど危険な依頼だという事だろうけど。
弾薬も補給して早速出発しよう。
ギルドを出て一旦家に帰りフィアンマを回収した。
フィアンマはどこかへ行けると思っているのか嬉しそうにしている。
城門を出て飛び立つ。フィアンマを抱えようとすると飛べるとでも言いたげに首を振った。
「あんた飛べるの?」
そう言うとフィアンマは頷く。いつのまにか飛べるようになっている。風魔法を覚えたからかな?
フィアンマの速度に合わせ30キロほどで巡航しながら西へ向かう。西へ向かうほど森が草原になり、草原が砂漠になった。50キロほどだろうか、点々と壊れたタンカーや客船など船のような遺跡が見えてきた。
古代文明の遺跡ってこんな物を指すのかな?
そしてすぐにモルト コッリーナについた。高層ビルのようなもの遺跡にバラックが乱立し小さな集落ができている。その中に一際大きく白い建物を見つけた。あれがモルト コッリーナ中央教会だろうか。教会に降り立ち、木製のドアを叩く。
すると中から1人の若い僧侶が出てきた。
「あ、冒険者の方。貴女が私たちの依頼を受けていただいた方ですか?
私はマヌエル、財産の神ティゾーロに仕える神官です」
「あ、はい。依頼を受けたナターシャです。よろしくお願いします」
「7日ほど猶予があるのですが、今日はどうされます?」
「では場所の案内して下さい」
「分かりました、ではこちらへ」
案内されながら荒廃した石畳のようなコンクリートのような道を歩いていく。こんな景色を見ると紛争下の国を思い出す。紛争の中は苦しかった。飢餓や病気の蔓延に戦が重なり絶望感の漂う人々。ここも似ている。それだけ治安が悪いのだろうか。
「こちらです」
私は驚いた。闘技場跡だというそれは余りにも球場に似ていた。この中にイーゲルというモノがいるのか。緊張する。
「この中に入るとイーゲルが敵だと認識して襲いかかってきます。何人かここの住人が部品欲しさに入っていきましたが、残念ながら戻ってきた者は1人もいません…」
「入ったら倒すまで出られないんですか?」
「入ると入り口が閉まり、出れなくなりますが貴女なら上から逃げることは可能でしょう」
「では今日は上から偵察をしようと思います」
「分かりました、ではティゾーロの名の下にご武運を」
フィアンマはマヌエルさんに預かってもらい飛び立つ。競技場の上へ来ると中央の高さ4メートルくらいの人型ロボットのようなモノが動き始めた。背中に2つの砲と4つのガトリングを背負っている。それは全て私に向いた。そして一気に対空戦闘を始めた。大量の銃弾と砲弾が飛び交い私を殺そうとする。私は避けながら攻撃を観察する。
どうやら音からしてガトリングは毎分合計7200発ほど発射、砲弾は毎分12発発射しているようだ。また素早い方向転換は苦手なようで私が真後ろに行ったりすると方向転換にかなりの時間を費やしている。
試しにドラグノフで1発撃ってみる。
私の愛銃から発射された弾丸は一直線にイーゲルに向かう。
着弾と同時にカーンと高い音がした。まさか跳弾した!?7.62ミリの敗北なのか…?
よく見ると弾が当たった胸の部分は上から見ると直角2等辺三角形くらい傾斜がついている。それに加え斜め上から撃ったから傾斜装甲が最大限に効果を発揮したのか。急降下し接近して撃とうとした時、イーゲルから何かが2つ飛び出した。
それは1メートルほどのロボットでチェーンソーのような武器が付いている。それが高速で私に向かってきた。
避けきれないっ!地上30センチほどの低空を飛行していたため上昇に転ずるまでが遅い。エネルギーシールドも近接武器には無力。被害を少なくするために体を捻りながら刃を受ける。
「っあああ!!」
肩から胸にかけて燃えるような痛みが走った。チェーンソーのような刃が私を傷つける。ここで落ちたら10割死ぬ。精神力を振り絞り上昇する。
上空に逃げても対空射撃の雨だ。なんとか避けながらも何発かがエネルギーシールドに当たって弾き返される。この盾が砕け散るのも時間の問題だろう。全力でスタジアムの跡から逃げ出し中央教会に着いた。着地と同時に崩れ落ちる。HPは残り11になっている。もう1発当たっていたら私はもうこの世にいなかったと思うとゾッとする。
「ナターシャさん!大丈夫ですか!?」
勢いよくドアが開いてマヌエルが飛び出してきて私に駆け寄る。フィアンマも一緒にいる。
「多分…大丈夫…」
「全然大丈夫じゃないですよ!出血が酷いです!もうちょっと遅れてたら死んでました!」
そう言ってマヌエルは抱えていた分厚い魔導書のような何かを開き私の傷口に手をかざした。
すると、傷口が光出す。光が収まると流れていた血は止まっていた。
「一応止血魔法は施しましたが中で治療は受けてください。では運びますね」
「はい…」
マヌエルに抱えられ教会の奥に運ばれる。
着いたのは祭壇のような場所だった。
「後は回復魔法が得意な者が担当するので安静にしておいて下さい」
「はい」
フィアンマが心配そうに顔を覗き込んで来る。止血はされているのでさっきよりは苦しくはないがそれでも痛い。
しばらくすると長身の女性がやってきた。
「初めまして、アデリーナです。今治療しますね。傷口を見なければいけないので服を脱がせますがよろしいですか?」
「お願いします」
素肌に映る傷口は2センチほどの深さで吐き気を催すほど残酷に斬られている。
「痛い…です」
「今から傷口を閉じる魔法をかけますが少し熱いかもしれないので覚悟しておいて下さい」
「熱い…?分かりました」
彼女は詠唱を始めた。
「財産の神ティゾーロよ、傷ついた子羊に癒しを!」
すると傷口が白熱した。かなり熱い。そして痛い。
「っ!」
「頑張って!」
10秒ほど続きその熱は収まった。傷口があった所は綺麗な肌が広がっていて完全に治っている。
「傷が治ってる…すごいですね」
「ありがとうございます、回復魔法もかけておきますね」
アデリーナが呪文を唱え終わると私の全身が淡い緑の光に包まれた。
何か疲労感が無くなった気がする。体が軽い。
「ありがとうございます、明日にはイーゲルを討伐しますね」
「よろしくお願いします、今日はゆっくりとお過ごしください」
とりあえず客室に案内してもらい、荷物を置く。
客室は小さかったが小綺麗にまとまっていた。ベッドに顔を埋めると太陽の匂いがする。
外の治安は悪そうだがこの部屋はとても快適だ。
フィアンマを連れて外に出る。
地上から見る外は沢山のビルや車の残骸が広がっていた。車の残骸の中で生活しているものもいるのか、中に簡易ベッドが置いてある車もあった。
この街の情報を集めようと私は歩みを進める。
読んでいただきありがとうございます