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風使いは自由を夢見る  作者: マタタビ
4/5

試験本番其の一

* * *

「試験開始五分前」


実際の時間以上に長く感じた残りの時間を過ごし、試験五分前となった。時間が経つごとにより一層獲物を狩る直前の狩人の様にピリピリとし始めた周囲に辟易としながら、俺は試験に向け意識を切り替える。


周囲の視線や殺気を全身で感じながら深呼吸をする。いつ会場に転移しても良いように()()の準備をしながら改めて殺気立つ周囲を見回し、昂ぶる感情を表現するかの様にゆっくりと口角を上げ獰猛な笑みを作る。


「試験開始一分前」


そうこうしているうちに開始時間が迫る。グレイがゆっくりとカウントダウンを始める。


「それでは試験開始」


その言葉を最後に俺たち新入生は試験会場に転移するのだった。



* * *



青々とした木々だった。転移が終わり、即座に目に入ってきたのは構築魔術により生み出された本物と一切の遜色の無い草木や大地だった。本当に深い森林に来たかのような空気感に思わず感嘆の息を漏らす。

俺はこれが試験だったことを思い出し、あらかじめ即座に発動できる様に準備していた探査の魔法を使う。


「〈風域探査(エアーロケーション)〉」


〈風域探査〉──魔力の籠った微風により周囲を把握する探査の魔法である──を使い、周囲の把握を行いながらゆっくりと歩き始める。


(さてと、こっからどうしますかね。とりあえず予定通り一人のやつ見つけては狩ってくでいいか。おっ早速一人はっけーん)


予定どうり単独者狩りをして行くことに決め、〈風域探査〉に引っかかった人影に向かって歩を進める。元々百メートル程の距離までしか索敵していなかった為、一分もかからずこちらに向かってくる人影と会敵した。


「〈風斬(スラッシュ)〉」


「ッ!《防御結界(マジックシールド)》!!」


会敵したと同時に不可視の風の刃を飛ばし、一撃必殺を狙う。しかし、咄嗟に放った男子生徒の防御魔術を砕いた程度で収まりる。


「ッ!くそっ!よりにもよって最初に遭遇すんのが特待生かよっ!!!」


「〈風弾(ブラスト)〉」


「《防御結(マジックシー)


文句を言いつつも攻撃の準備を始めた男子生徒に向かい、俺は速度に優れた風の弾丸によって阻止する。会敵した男子生徒は焦った様子で二度目の《防御結界》を展開しようとする。が、直前まで攻撃の魔術を準備をしていたこともあり風の弾丸は防御魔術が発動するより先に男子生徒へと直撃する。


ブー、と男子生徒のつけるHPリングから敗北を告げる音がする。思った以上に簡単に脱落したことにほんの少し驚愕しつつ、行く末を見届ける。


『ダメージ量が基準値を超過しました。転移を開始します」


機械音声がなり、呆然としていた男子生徒は自分がようやく自分が失格になったと理解したのであろう。ありえない、という顔をしながら喚き始める。


「まっ、まってくれ!!俺はもっとできる!特待生以外ならもっと戦えるんだ!!!もう一回チャンスをくれ!」


間抜けなことを喚き始める男子生徒に呆れ、思わず反論の言葉が出る。


「馬鹿かお前、死んだやつがチャンスをくれで生き返るなら誰も苦労しないだろ。弱かったお前が悪いんだ。まっ、強くなって出直して来るんだな防御結界(マジックシールド)君。お前のことは三分は忘れないよ」


「ッ!第一、お前がっ!」


防御結界(マジックシールド)君が何かを言い掛けたところで転移が完了し、目の前から消える。防御結界君のことをすぐに意識から消し、俺は再び索敵を行いつつ歩き始めるのだった。



* * *



二時間ほど歩き回り、一人で行動していた生徒を追加で四人ほど狩った。


索敵は引き続き続けつつ、足を止めて思考を巡らす。


(二時間歩いて倒した生徒はたったの四人、最初に倒した一人を合わせて未だたった五人。流石に少なすぎる。・・・・・・まぁ、どう考えてもアレのせいなんだが)


ゴォォ!!と。


()()炎柱だった。推定三キロ以上離れているであろう距離からでも見上げればよく見えるほど大きな炎だった。二時間の間に既に三十を超える数の炎柱が上がっていた。定期的に、時には同時にいくつも上がることもある炎柱を見て鬱陶しく思える熱風に晒されながら静かにため息を吐く。


(炎の正体は大方第二位だろうな。上がった炎柱の数からして相当倒してるだろうしアレ倒せば点数は変わらずとも評価は大きく上がりそうだな。うんうん、やっぱジャイアントキリングは積極的に狙うべきだよな、それが一番楽しそうだし)


炎の正体に大方の当たりをつけ自問自答に一人納得しながら再び上がった炎を見据え、近づくにつれ温度の高くなる熱風を風を操り受け流しつつ、俺はその炎へ歩を向ける。


「・・・・・・〈風弾〉」


歩き始めてすぐ、探知した人影に向かって魔法を発動させる。しかし、いつまで経っても退場音が鳴らず、転移により消えるはずの人影が未だ探査魔法に残り続けている事に疑問を感じ、足を止める。より威力の高い魔法の用意をし、こちらに向かってくる人影に意識を向ける。


「先程ぶりだな、第四位。貴様の首、貰い受けに来た」


ゆっくりと茂みを掻き分けながらこちらに向かって歩いて来たのは、試験前俺をパーティへと勧誘してきたガリレオ・ファンタズマだった。


〈解説〉

魔術と魔法

魔術とは魔力を用い術式を作り発動させる技術。

魔法とは固有技能を魔力により、強くしたり、自由度を増したりさせるもの。


主人公の場合は固有技能である〈風躁〉を魔力により強化し、探査や攻撃に利用している。


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