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風使いは自由を夢見る  作者: マタタビ
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試験前其の二

 * * *

 二日後、再び俺は学科オリエンテーションの行われた小講堂にいた。既にちらほらと幾人かが固まったグループがいくつか出来ていた。

 そのうちの一つのグループからいかにも真面目です、と言う出立ちをした眼鏡を掛けた青年がこちらに向かい一直線に向かってくる。

 目の前に立ち止まると俺を見定めるかのように視線を上下させる。再び目を合わせると眼鏡の青年はゆっくりと口を開く。


「・・・・・・お前が第四位、シエル・デミウルゴスか?」


「ああ、そうだが。そう言うお前は?」


「・・・・・・自分より下の順位の人間は眼中に無いのか?・・・・・・まぁ良い、俺は第六位ガリレオ・ファンタジアだ」


()()()()()()()()それでその第六位様が俺に何のようなんだ?」


「ッ!なに、簡単な話だ。今日の試験、俺たちと手を組まないか?貴様も気がついているだろう?此度の試験、必ずしも個人で戦う必要はない。優秀な者同士で手を組み、効率的に、かつ我々よりもより上位の順位の者達を落とした方が目に見えるポイント以上の価値があると思わないか?」


 自身の言葉に絶対の自信を滲ませながら答えは決まっているだろうとばかりに俺に対して答えを求めてくる。俺は初めから決まりきった答えを眼鏡の青年に対して言葉にする。


「断る。んなクソつまんねぇ戦いにかけらほどの興味も湧かん。確かにお前の言うように誰かと手を組んで戦った方がより効率的だろう。でもな、俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()()。お前らみたいなグループ連中や上位連中を一人で相手取った方がワクワクするだろ?」


 ガリレオは俺の考えを聞き、理解できない、と言う顔をする。自身の常識から大きく外れた考えに対して、若干の戸惑いを見せつつほんの少し言葉を詰まらせながら口を開く。


「ッ!ふんっ理解できんな。・・・・・・次会った時は俺たちの仲間にならなかったことを後悔させてやろう」


「ああ、楽しみにしてるよ」


 遠退いていく背中を見送りつつ、俺は口角を上げ好戦的な笑みを浮かべながら小さな声でそう呟くのだった。



 * * *


「それではこれより、クラス編成試験の説明を始める。本試験は英雄科の保有する第一演習場にて行う」


 第一演習場、設置型空間魔術により見た目以上の面積を誇り、構築魔術を組み込まれた最新型の大型魔道具により多種多様な環境を構築し訓練を行うことの出来る世界でもマギア学術学園にのみ存在する訓練場だ。

 予想出来ていた試験会場に俺は静かに思考を巡らせてゆく。


(問題は試験会場自体じゃなく、会場内の環境だ。まぁそれも大方予測出来るものだが。)


 俺の考えを肯定するかのようにグレイが試験について説明を始める。


「此度の試験では会場内の環境を森林とし、半径5キロの円形を範囲とする。メインのルールは皆事前に確認しているであろう為割愛する」


 予測どうりの環境に不適な笑みを浮かべつつ、グレイの話に耳を傾ける。


「そしてこれより皆が気になっているであろう特別ルールの説明を行う」


手元のリモコンを操作し、スクリーンを表示させつつ説明を始める。


「此度の特別ルールは三つある。一つ目は時間経過による試験範囲の縮小。一時間ごとに一定の範囲を縮小し、最終的には半径一キロメートルとなる。二つ目は一定人数以下になったとき、位置情報の発信。残り人数が百人以下になったとき、最も近くにいる生徒の位置情報をHPリングを通じて方角という形で発信をする。最後に三つ目、入試試験にて特待生となった五人の生徒のうち、一人でも退場させた生徒はポイントの数値に関係なくAクラスとなる」


ざわざわざわ、と一つ目、二つ目に比べ三つ目の特別ルールの説明に新入生全体に大きな動揺が広がる。かくゆう俺も予想外のルールに僅かな動揺を隠せずにいた。


(一つ目、二つ目は試験の停滞化を防ぐ為だろう。でも三つ目がなぁ。元々パーティを組む気はなかったとはいえ、こら相当狙われるなぁ。めんどくせぇぇぇ)


俺は周りの戦意の籠った目にげんなりしつつ新たに対策を練り直す。


「以上三つの特別ルールをメインのルールに加え、クラス編成試験を行う。今この場にて質問のある生徒は手を挙げるように」


未だざわつきの治らぬ新入生内から一つの手が上がる。


「はい。質問があります」


天色の髪を短く切りそろえ、制服の上から黒を基調としたローブを羽織った少女が凛とした声を上げる。


「今回のルールでは特待生側があまりにも不利であるように思います。その分の有利となる要素はないのでしょうか?」


「・・・・・・質問がなければ答えるつもりはなかったが、出たからには答えよう。今回の試験では既に結果の是非を問わず特待生達はAクラスとなることが決まっている。つまり、特待生の五人は試験中、逃げ隠れやり過ごすことも本人達の自由だ。可能ならば、ということ前提だがな」


(既にAクラス入りは確定してんのか。まっだとしてもやることは変わらないが)


「ありがとうございました。参考とさせて頂きます」


天色髪の黒ローブ少女は礼を言い、口を閉じる。


その後それ以上の質問はなく、手が上がらないことを確認したグレイは再度話し始める。


「試験会場へは配布したHPリングを元に開始時間と同時に会場内へとランダムに転移するようになっている為くれぐれもリングを外すことはしないように。それではこれにてクラス編成試験の説明を終わりとする。諸君、健闘を祈る」


試験の説明が終わり、俺は残った時間をどう過ごすかに頭を悩ませるのだった。







〈解説〉

ガリレオ・ファンタジア

ファンタジア家の長男にして次期当主。入試では筆記のおいて新入生第三位。


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