08.
その後、王太子妃となったエミリアは生涯で三人の子宝に恵まれた。婚姻から三年後に国王が王太子デュークへ王位を譲位し、エミリアは王妃となった。
新国王即位の祝祭は一週間続き、国民達は新たな君主の誕生に踊り、歌い喜んだ。その様子を国王と王妃は仲睦まじく寄り添いながら、朗らかに微笑み合ったと言う。
その姿は政略結婚とは思えない程、穏やかでお互いを愛おしく思っている様に見えた。
だが即位から七年後、王妃エミリアは病魔に犯され、その命を儚くされた。享年32という若さであった。
それは突然の訃報であり、国中が涙に濡れ、その死を悼んだ。
国王も王妃の死に茫然自失となり、亡骸から暫く離れなかったと言う。その憔悴ぶりは痛々しく、臣下がどんな言葉を掛けようと棺から離れる事はなかった。
王妃の死から三日、ある聖騎士が国王の元へ訪れた。
王妃が聖女であった頃、護衛騎士をしていた男だ。その男は聖女が嫁いだ後、次代の聖女の護衛を引き続き努め、三年前に聖騎士団長となっていた。
聖騎士は王妃の棺に縋る国王にこう申し出た。
『殉死をお許し願いたい』
国王は涙で濡れた手で動かぬ王妃の頬をひと撫でし、それを了承した。
『きっと、これは望んでいないが、お前がそれを望むなら止めはしない』
そうして殉死した聖騎士は王妃と同じ墓標に埋葬された。国王はなるべく近くに埋葬してやりたいと、秘密裏に用意した大きく質素な棺へ二人を一緒に納めた。
何故、国王がこの様な事をしたのか。その心情は本人しか知り得ないだろう。だが、彼を昔から知る側近だけは何かを察しているようだった。
国王は王妃亡き後、新たな妃は設けず、生涯たった一人の王妃を愛し続けた。
そして死ぬまでの二十数年間、月命日には必ず墓所へ足を運び、何かを語りかける様に二人分の花を手向け続けたと言う。
これにて完結です。
タグの通り、来世はハッピーエンドで御座います。
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