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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

わたしとあなたの喫茶店

作者: ゆゆ

人によってはかなり残酷(?)かもしれません。


井橋 舞(いはし まい)高卒の普通のOL。独身

両親は他界してて、安めのマンションを買って一人暮らし。

趣味は喫茶店でまったりすること。甘党で、好きなものは砂糖多めのミルク入りコーヒー

嫌いなものは辛いもの、社畜でもなく、

気の良い同僚達と働いて、それがずっと続くと思ってた。


けれど、突然異世界に転移して、転移先の街、リムラの街でお世話になり、

色々な人に助けてもらった。特に店長。

店長のご好意で食堂で働かせてもらい、私は自分で生活する術を手に入れた。


その時に、食堂のメニューにコーヒーがあったことで、

異世界でもコーヒーがあるんだと知った。


勿論、異世界には喫茶店なんてものはなく、

コーヒーも相当珍しい物で、貴族でも滅多に飲まないらしく、


普通の食堂なんてもっての他みたいだけど

なんでも、昔店長が食堂を開業する時の領主様との会談中に勧められ、

とても美味しくて、好きになったんだと。


街のみんなにも飲んで貰いたくて、頑張ってコーヒー豆を仕入れている。

だけど、貴重で少数な物なので、仕入れる際のお値段もそれなりで、赤字になるのも困る。

だから値段を高くするしかなく、市民にはちょっと手を出しにくいお値段になっている。


喫茶店が好きだった私は、喫茶店を開く事を夢見てた。

けれど、生活するのに手一杯で、暇も少なかった。

なので喫茶店なんて開けず、それでも密かにコーヒーを淹れる練習だけしていた。


コーヒーには自信がある。なので、コーヒーを淹れる係を変わってもらった。

一度店長に飲んでもらったところ、

「雑味が少なく、とても飲みやすく美味しい」と評判頂いた。


それからたまにコーヒーを飲みにくる騎士様がコーヒーを宣伝してくださった。

それが領主様のお耳に入り、たまに領主様が食堂に来店くださる様になった。


それから2年が経ち、貯金もそれなりにでき、私のコーヒーもさらに技術が上がった。

2年間、異世界で喫茶店を開けないかとずっと考えていた。

しかし、豆を定期的に、且つお安く入手するのは難しく、

この世界でも、断念せざるを得ないか…と


そんな時、領主様が「自分で店を開いたらどうだ?」と私に持ちかけくださった。

領主様は農民を数人雇い、コーヒー豆を栽培する計画を立てており、

そのコーヒー豆を私の喫茶店に都合してくださると。


幸い、この2年間の貯金で小さい家を一軒借りる事はできる。

ついに夢を叶えることができる!と私は

店長と、この世界でのはじめての同僚に別れを告げた。


急な事だったのに、店長達は優しく見送ってくれた。店長は

「一生の別れじゃない。今度は客としておいで。歓迎するよ」と言ってくれた。

つい、涙が溢れそうになった。

なんて優しい人たちだろうと。

転移した先がこの村でよかった。

店長に雇われてよかった。


大家さんから物件を借りた。

昔は本屋だったが、潰れてそのままの建物だそうで

一階が本屋、二階が生活スペースでまったりとした雰囲気が心地よく、

私の喫茶店のイメージと合っていて、丁度いいと思い、即決。


まず家具を揃える。

木目のある暖かそうな机に、

2人用の丸いお洒落な机。

椅子は黒ベースの座る所が柔らかめのお洒落な物を購入。

高かったけど、領主様に多少融通してもらってようやく買えた。


淡い緑色のカーテンや観葉植物等等の小物や、

コーヒーミルまで、買い揃え、

一階の家具は終わり。二階は生活スペースなので、最低限生活する為の物を購入。


いざオープン…の前に名前を決めなくちゃいけない。

喫茶店…はシンプル過ぎるし…


領主様や異世界に来た時に援助してくださった人たち、

店長や近所の方にも助言してもらって


''みんなの喫茶店''に決まった。

今まで沢山助けてもらった村のみんな、領主様がいなければ

私の夢は叶わなかった。

その感謝の気持ちを込めた名前。


開店、の前に、開店準備にお世話になった方、

助けていただいた方達にサービスでクーポンを配った。


そんなこんなで、暖かくなってきた春の日。


''みんなの喫茶店''初オープン!!



…想像を絶する人気さで、

村の人たちは勿論、村の外の人達も来てくださった。

領主様がお声を掛けていたらしい。


結局、夕方にコーヒー豆が切れてしまい、閉店となった。


2日経ち、お店を再開。

初日の勢いは過ぎ、少しまったりしながら運営する事ができた。


それから三ヶ月。

開店の勢いは落ち着いて、今はお客さんと喋れる程度になってきている。

忙しい時間帯は忙しいが…

少なくとも生活、家賃さえ払えればいいので、このぐらいが丁度いい。


今日は、すっかり常連になったミレさんが来ていた。

ミレさんは私が異世界に来た時に住む場所を提供してくれた方で、

とってもお世話になった方なので、時々サービスをしている。


お孫さんがいて、そのお孫さんの話をよくしている。

今はミレさん1人なので、ちゃんとした会話ができる。



「あの子も良い年でねぇ、もう成人だってもんだよ。

 歳を取ると時間が過ぎるのが早くて参っちまうよ」


「メイちゃんも成人ですが、早いものですねぇ

 最後に会ったのは15歳の時ですか。」



メイちゃんはミレさんのお孫さんで、元気で可愛らしい子だった。

この2年間見てないが、今年で成人なので17歳だ。

この世界での成人は17歳で、それを目安に仕事に出たりするらしい。



「そうだね。はよぅ仕事を見つけないといかんのだけどね、

 中々良い仕事がないらしいのさ」


「それでしたら、うちなんてどうでしょう?

 昼下がりなんて、忙しくて…こうしてお客さんと喋る時間もないんですよ。」


「そりゃ本当かい?助かるよ、

 よしっ!早速明日孫を連れて来よう。

 マイちゃんならあの子も喜ぶだろう、久しく会ってないからねぇ」


「えぇ。昼間は忙しい時間帯なので、

 明日の夕方でどうでしょうか?」


「わかった、じゃあコーヒーも飲み終わった事だし、

 ワシャ帰るかね。」


「分かりました。ではお会計…30%割引致しますね!」


「いいよいいよ、ちゃんと払うさ。

 年寄りに出来ることなんてないからねぇ

 若いもんに経済を回さにゃいかんのだよ。」


「あ、ありがとうございます…」




ミレさんは帰って、翌日の夕方。



「おばあちゃん、私の仕事先って…」


久しぶりに聞いたメイの声。

以前と変わらないけど、少し大人びてるように感じる。


「お久しぶり、メイちゃん。

 成人おめでとう!」


「…ひ、久しぶり。マイ…さん

 ありがとう…」


久しぶりに見たメイちゃんは背も上がってて、

私と同じぐらいになっていた。

髪は相変わらず脇辺りの長さ。

可愛い茶色の髪だ。


「久しぶりで照れてるんだよ。メイ、二人きりで話せるかい?」


「て、照れてないわよ!

 子供じゃないんだから、一人でやれるわ

 おばあちゃんは先帰ってて!」


「はいはい。じゃあ先帰ってるね。

 マイちゃん、メイをお願いね」


「はい、わかりました」


それから、軽い面接をした。

面接といってもお手伝いさんみたいな感じだが。

得意なこと、やりたいこと、等等…

お給料ももちろん。


それから、制服。

別に私服でも良いと言えば良いが、

私も出来るだけお店の雰囲気に合わせての服なので、

茶色のエプロン、白の服みたいな物を用意しようかと思ったのだが…


「可愛くないわ」


「えっ、えっと…どうしたら良いかな?」


「まずこの茶色は無いわね

 エプロンは白で、服が白多めの茶色で

 金を茶色に寄せた色でラインを取って〜…

 髪留めにラボンもつけて、服と同じ色で

 ラインもつけてこんな風にー…」


…彼女の要望は的確で、

あれもこれもとしているうちに時は過ぎ、

時刻は夕方。


「あ、あれ、もうこんな時間?

 早く帰らなきゃ…」


集中して気づかなかったのだろう、

目に見えて焦っていた。


「…良かったら、うち泊まってく?

 最近治安悪いし、夜は気をつけないと…

 領主様が色々手配してくれているから、

 大丈夫だとは思うんだけどね」


「…お、お願いしても良いかしら」


「もちろん。じゃあ、こっちね」


家事等手伝ってもらって、

ご飯も一緒に食べて…

寝る準備をして、少しお話して、二人で寝た。

翌日、朝。


「マイ、ありがとう!色々準備もあるから、

 私一旦帰るわね!」


「はーい、またね!」



メイちゃんが一旦帰って、

制服も頼んで作ってもらって。

1週間が経ち、

メイちゃんが働き始めた。


「いらっしゃいませ!2名様でよろしいでしょうか?」


メイちゃんは進んで作法などの勉強をしていたらしく、

貴族の娘といっても過言じゃないほど綺麗な言葉遣いをしている。

日本では普通でも、ここでは普通じゃない事も多い。


魔法、なんてものもあるらしいが、

平民には殆ど魔力持ちはいないし

私は魔力のない地球からの転移者なので

持ってるはずもない。剣なんてPCの前で指を動かし

キーボードに戦争を仕掛けていた私が振れるはずもない。


私だってアニメとか少しは見るが、

現実はいつだって厳しく苦しいものだ。


「マイ、注文入ったわよ!」


「はーい!」



そんなこんなで、メイちゃんと一緒に喫茶店を切り盛りしていく様になった。

殆ど福店長みたいなものだ。

店長に福がいるかは知らないけれど。


この世界にもお祭りはある。

ゴールデンウィークの様な、死者を弔う日や

クリスマスのような、有名な人物の誕生日を祝う日など。


その時には、2人で期間限定商品を考えるのだが…



「この季節の旬の物を使う方がいいわ、

 今はこの秋棘(くり)とか」


ーー


「この人は甘橙(りんご)が好きなのよ、

 だからこういうのを…」


殆ど、メイちゃんだけで終わって、値段等を決めるのが私の役割だ。

メイちゃんは料理上手だし、服にしろ料理にしろ、発想力が凄い。

私のやる事なんて、もうないなってぐらい



それから更に、2年が経過した。




「よし、閉店…と

 マイ?」


メイちゃんがカードを裏返し、扉を閉める。

『閉まってますよ』の意思表示だ。

最初は少し辿々しかったが、

メイちゃんが働き始めてもう2年が経って、

今では無意識にやりすぎて、やったっけってよく言っている。



「なぁに?メイちゃん」



「ここのところ、元気ないわよ」

「そうかな?そういえばメイちゃん、

 メイちゃんが働き始めて2年が経つね、最初の頃が懐かー…


「マイ、誤魔化さないで

 私、別にマイの事を責めたい訳じゃないのよ

 話をしましょう」



「…うん」





「えっと…それで、何かな?」



「最近マイは様子が変だわ。

 どこか意識がおぼろげ…っていうか

 悩みがあるなら、私に言って良いのよ?」


「…メイちゃん、お店慣れた?」


「勿論よ、2年間も毎日、たまに休日はあるけど…

 そんだけ働いていれば慣れるわ。」


「…そっか」


「…当ててあげましょうか。

 マイは、自分の事がもういらないって思ってるんじゃないの?」


「っ」



「ほらね。言っておくけど、私マイの事大好きよ

 そうやって一人で解決しようとする事も、

 人のことをよく見てて、気遣ってて、その人をよく理解できるマイを」




「それは美徳でもあり、嫌な所でもあるわ。

 けど、人なんて良いところも悪いところもあるものよ。

 完璧な人間なんていないわ」


「…それは、メイちゃんも?」


「勿論よ。私だってなんでもできる訳じゃない。

 例えば、知ってた?私お料理苦手なの。」


「えっ」


なにそれ、そんなの初めて聞いた



「マイの前じゃ見栄張ってたかったのよ

 実際に作ると、何がなんだかわかんなくなって

 何かよくわからない物体ができるわ。


 だから、給仕係しかしなかったし…」



「メイちゃ

「メイよ」



「メイちゃん?」


「メイ」



「…メイちゃ…メイ」


「ありがとう、メイち…メイ」



「ふふ、お礼は受け取るわ。

 そのついでに、もう一つの悩みも漏らしてくれて良いのよ?」



「え!?」



「私マイについて、マイが思っているより詳しいわ。

 今度は聞かせて欲しい、マイから」



「…嫌いにならない?」


「勿論よ。」



「…」


私は、異世界転移する前、異世界転移した後、全てをメイに話した。

誰にも教えてなかった事も。



「不老、まぁそうよね

 マイが来て約4年、マイは成長も老化もしてない。」



「不死はわからない、けど、多分…」


「不老なら、ずっと////を守っていけばいいじゃない。」



「な、なんて?」


「不老なら、ずっとこのお店を守っていけばいいじゃない」


「え?」



「私はいつか死ぬわ。

 もしかしたら今年かもしれないし、

 数年後、十数年後かもしれない

 

 酷いことを言ってるかもしれないけれど。」



「でも、マイは死なないかもしれない。

 じゃあ、私の思い出とお店を守っていけば良いわ。

 私の思い出はマイとこのお店だから、

 結果的にマイはお店を守っていけばいいわ!」


「…なんで?」


「私はマイじゃないからマイの気持ちはわからない

 だから私は自分勝手に言わせてもらうわ

 マイは私とマイの思い出(おみせ)を守って

 

 そして死んだら、私に会いに来て

 またどこかで一緒に喫茶店をやるのよ

 マイの元いた世界でも、別の世界でも、この世界でも

 天国があるなら、そこでもいいわね!」



「…なにそれ、わかんない」


わかんない。上手く丸め込まれてるのかもしれないけど…

メイなら、良いや。


「わかったよ、メイが死んでからもお店を守っていく

 そして私が死んだら、会いに行くね」


「ふふ、死んだら暫く、あと1000年は会いに来なくて良いわよ」


「死んだら早く、会いに行きたいな」





「メイは、どうして私にそこまでしてくれるの?」


「…昔、マイに助けられたからよ。

 その恩返し…でもあるし、単純にマイが好きだから。でもあるわ」


「…助けた…?」



「ちょっとした会話でも、誰かを傷つけるし

 ちょっとした会話でも、誰かを救うのよ」




初めて小説を書きました。

下手くそでお見苦しい所が多かったと思いますが、

最後まで見て頂きありがとうございます。

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