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第八話 やっと始まるチート英雄譚

ギャグがない回です。

 多方面から襲い掛かる狂爪の輝き。

 それを任地した瞬間すべての感覚がスローに感じるようになった。

 恐らく、これは危機的状況に陥ったとき過剰に脳が処理を始め、処理できないレベルまでに陥ったときに見る光景なのだという事がわかった。

 ゆっくり進むように感じる感覚の中、俺は思う。

 こんな所で終わるのか、と。

 イフがこの冒険の間でやりたいことを見つけたというのに俺は見つけず仕舞いで終わってしまうのか。

 そんなの。

 そんなの――――、



 「…ダメに決まってるだろッ」


 俺がそう呟くと同時に感覚が加速し、足は地を無理な体勢から蹴り、出来るだけ体を吹っ飛ばした。

 超高速で爪と爪の間をすり抜け、俺は狂爪を避け、生きていた。

 そして、ある事に気付く、移動した瞬間にいままでは感覚が追いつかず残像にしかならなかった視界が今回は残像にならず、感覚が追いついていたように感じる。


 「…もしかして…」


 そして俺はふと思い出す。

 チート能力の最初の一つ目、『三段階に進化する力』のことを。

 その瞬間に頭に知識が流れ出す。

 それは三段階に進化する能力の一段階目の知識だった。

 それの能力は、


 「俺の一段階目の進化は『人成らざる五感』ってとこか!!」


 そう、単純に五感が強化され、どんな状況にも対応できる感覚、そんなものだった。

 だが、そんなものでもそれしかないものだった。

 光を利用した鎧『バアル』が生み出す超加速と筋力超強化補助に感覚が追いつくのだ。

 俺はバアルの超加速を利用し、クラスタベアの間をすり抜けながらすれ違い様に斬撃を一撃喰らわせ、瞬間に十匹以上を撃退した。

 そして、全方向から飛び掛かるクラスタベアにも反応し、襲い掛かる前に処理する。

 圧倒的な力を使いこなすことができた今、この瞬間、俺は思った。

 恐ろしい、と。

 圧倒的な力をもって敵を屠ることができるこの力に恐怖を感じた。

 だが、ここで俺が逃げ道を作れないと命を落としてしまう。

 とりあえず、俺が逃走しても追ってこれないようにしなければならない。

 その一心で剣を振るった。



 逃げながら剣を振るい、クラスタベアの追跡を振り切ったのは街にほど近い場所だった。

 鎧を解除した俺は腕輪に収納されず残ったイフの肩を借りながら、時間を掛けながらも街にたどり着くことができた。

 ギルド支給の袋とそんあ下に入った袋一杯のラフリーフは明日渡すことにして、俺は初日に夜を越したベンチに倒れるように寝ころがった。

 体が動かない。

 恐怖と逃避の狭間で命がけの戦いを初めてしたことにより、精神と体が一気に疲弊しているのが分かった。


 「ご主人様、申し訳ございません」


 泣き出し追うな表情でイフは俺の手を握って言う。


 「私がはしゃいでいたせいでご主人様の危険の察知を出来なかったから…」


 そう言って、イフは涙を流した。


 「泣かなくていいよ。こういうことを予測しないで遠足気分でクエストに向かった俺が悪いんだから」


 イフに俺はそう言うと、急に眠気が襲い、俺の意識が途絶えた。



 なんだかとても暖かい。

 そんな感覚で俺は目を覚ます。

 目を覚ますと俺はベッドで寝かされていた。

 その状態に驚いた俺は上体を勢いよく起こすと俺を看病していたのだろうか。

 ベッドの橋に凭れ掛るようにして眠るイフの姿があった。

 その光景にほんの少しホッとしたものの、見知らぬ場所に俺は戸惑いながら辺りを見回していると、気付く。

 頭に包帯が巻かれてい居ることに。

 どうやら、何者かがここに運び、手当てをしてくれたようだ。

 では、誰がここに俺を、そう思った時、部屋のドアが開き、そこから一人、入り込む。

 その人物はアルフレッド・バーズさんだった。


 「お!エイト、目が覚めたか」


 「バーズさん?なんで…?」


 「なんでといってもなぁ、私が夜の巡回中にベンチで意識を失っている君と、心配そうに君を見つめていたイフを見つけてね。私の自宅でいいならとイフから許可をもらってここに連れて来たんだ」


 俺の質問に軽く経緯を交えながらバーズさんは答えてくれた。

 そして、バーズさんはイフをみながら、こんなことを教えてくれた。


 「君の手当てをしている時、イフがね、ご主人様は治るのか、大丈夫なのかってずっと心配していてね。…大分、彼女から慕われているんだね」


 そして、バーズさんはそんなことを口にして、


 「そうですね。ホントに、心配させて、情けないです…」


 俺が心中をかくさずに返すと、バーズさんは少し厳しい声で、


 「そうやって心配してくれる仲間がいるんだろ?なら、心配かけないようにしなさい」


 俺を叱咤した。

 そして、


 「まぁ、何があったのかは明日ゆっくりと訊かせてもらおうかな。私は明日非番なんでね、時間はいくらでもある。今はゆっくり眠るといい」


 優しい声でそう言い渡し、笑顔を見せると、部屋からバーズさんは出て行ってしまった。

 ある意味、一人になったこの部屋で、イフを俺は見て呟いた。


 「…ダメな、ご主人様で、ゴメン」


 命を懸ける。

 世界を救うには多少なりとも必要なその覚悟を理解せずにいた自分が招いてしまった事態に俺は後悔した。

 覚悟が足りなかったから、一度クエストで大量に討伐できる敵に追い詰められた。

 その事実は揺るがない事だった。

 自責。

 俺はそうせざる負えなかった。

 だが、俺はその瞬間、一つの目的を見つけることができた。

 誰も悲しませない、そんなちっぽけな目的を、俺は、見つけた。

 決めて、俺は行を深く吐き出すとまたベットに寝て、眼を瞑り、眠りにつくことを選んだ。



 夢の中で俺はあのときの夢を見た。

 助けることができなかった友人の姿に手を伸ばす。

 実際にあったことを繰り返す、そんな夢を見た。

 俺は、人を殺した。

 俺はその罪を背負って生きなくちゃいけない。

 それを再確認する夢を見た。

読んでいただきありがとうございます。

今回は暗かったですが次回は少し明るいですよ!

では、次回もお楽しみに!

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