第七話 調子に乗るという訳じゃなくても、気を抜けばやられるのがクエスト生活
今回は続き物です。
俺こと吉田英斗は絵面が強い神様にチート能力特典を添付され異世界転生させられ、チートアイテムが変身した美少女ことイフと共に始まりの街となる王都ビスタリアに到着し、そこでギルドに加入、即日でクエストをこなし、宿に泊まることに成功し、その宿屋でビスタリア王国国王直属騎士団団長、アルフレッド・バーズさんと知り合いになったのだった、まる。
朝起きて!
ギルドにて!
クエスト受けて、現在は森!!
と言う訳で、俺たちは比較的安全なクエスト、『ラフリーフの採集』というのを引き受けた。
ラフリーフとは、ビスタリア大陸の森林区域に群生している蔦植物である。
まぁ、この世界に蔦植物とかの概念があるかは甚だ疑問ではあるが。
それはさておき、ラフリーフについてだが、その名の通り、粗い葉っぱが特徴の植物で、荒っぽい葉っぱというのが、一つのラフリーフに付き根を含めた葉以外のパーツのおよそ3倍の大きさを誇る葉である。
とんでもなくデカい葉っぱをみれば大体、ラフリーフだと受付嬢に言われるくらいには実物はすぐに見つかった。
だが、どうしてこんなのんびりとした採取クエストを受注したのかというと、
「ご主人様、ご主人様!これが虫と言うものですね!」
見た目相応の反応でイフが理由だった。
時は遡る事、宿で朝食をとっている時のコト。
「ご主人様、今回のクエスト選びについてお話があるのですが、よろしいでしょうか?」
そんなイフが提案したのが、昨日見た森の景色が忘れられず、様々な命を見てみたいから戦うことが少ない採集クエストにしてくれ、と言うものだった。
別に断る理由のない俺は二つ返事でそれを受け入れ、今に至る。
ラフリーフをギルドから支給された袋一杯になるまで採集することで目標は達成になる。
それまでの間、俺は採集に専念し、イフはさまざまなものを体感ながら、ついでに採集するという形をとっていた。
無邪気に喜ぶイフを眺めてい居ると微笑ましい気分になる。
出会ってまだ日が浅い割には、直ぐ俺もイフの存在を受け入れ、この世界で起こったことや見たモノに対し、吸収の姿勢を示している自分、というか人間の適応能力には我ながら驚かされる。
俺も元の世界でこんな感じに適応できれば、道を逸れずに済んだのだろうか。
誰も知る由の無い答えを求めながら採集を続けていると、突然、頭に強い衝撃を受け、体がぶっ飛ばされた。
「ぶぅ!?」
ぶっ飛ばされ、運良く木にぶつかってそこに留まることができた。
何事だ、その一心で俺がさっきまでいた方向を見ると、そこには前足の爪から俺のだと思わしき衣服の欠片を引っ掻けたクラスタベアが一匹。
それに恐らく俺を攻撃したと思われる一匹の後ろにはぞろぞろとほかのクラスタベアの影が見えた。
「イフ!クラスタベアだ!」
そうおれがイフに呼びかけた瞬間、俺の異変に気付いたらしく、生身の人間ではできない速度で俺の元に駆け寄って来た。
「ご主人様、頭から血がっ!」
「いやそれはいいから、ギルドの支給品の袋だけ回収してここから逃げよう。さっき頭をやられて目の前がくらくらするから戦えない」
「わかりました!」
そう言うと、イフは片手を剣に変え、刀身を伸ばすことにとって、支給された袋の紐を引っ掻けて、こちらを引き寄せた。
「そんなことで来たのか?」
「私がこの姿じゃないときにしか使えない能力でございます」
「なるほど、超絶感覚は俺が使うものの使い方しかわからないから、本体が自動で使う能力については知ることが出来ないって言う事か」
「驚くのは後でございます。ご主人様、さっそく袋を持って逃げましょう」
「あぁ」
そう言葉を交わすと、俺は鎧を召喚し、イフを背負って、走り出した。
頭を不意打ちでやられたせいか、視界が歪む。
だが、逃げる障害にはまだギリギリなっていない。
機能を停止したがる感触が脳を蝕み始めたのを簡易ながら、俺は言う。
「イフ、後ろから来たら応戦できるか?」
「はい!私が背中をお守りいたしますので逃げることに専念してください!」
そして、イフが返答した瞬間、ドゴンッ、という音と共にクラスタベアの鳴き声が真後ろで炸裂し、ギンッ!、ギュインッ!、と背中で鉄をこする音がする。
恐らく、追いついてきたクラスタベアの攻撃をイフが俺に衝撃という負荷を与えないように、いなしながら防戦しているのだろう。
逃げ切るには速度を上げればよいのだが、これ以上に速度を上げると感覚が追いつかない。
やはりチート能力の補正の無い五感が一番足を引っ張っている。
昨日の戦闘でよくわかったことだったが、改めてこの状況で痛感するとは思わなかった。
それにチート特典の『めっちゃ丈夫な体』がどれ程、丈夫なのかを予期せぬところで実感してしまった。
恐らくチートが無ければ俺の首は完全に千切れて生首になっていたはずだ。
さっきの支給品の袋が取れたのは確実に俺を殺せると踏んで繰り出した一撃が致命傷にすらなってないことでクラスタベアが困惑していたために生まれた間があったからだろう。
今思い返せば面白いくらい、クラスタベアは自分の爪を見ていた。
だが、致命傷だと踏んで攻撃を繰り出したという点、困惑していた点。
この二点からクラスタベアはある程度の知能があると見受けられる。
機能の討伐はさまざまなチート能力の使い方を試すのに必死で大してそういうところを観察することが出来なかった。
そこら辺を昨日の討伐で観察できれば、そう後悔した瞬間。
「うぐッ!」
イフの悲鳴と共に背中から受けた強い衝撃で少しの飛距離を生みながら地面に倒れた。
どうやらいなすのに失敗したらしい。
俺はすぐにクラスタベアとイフの間に入ると目の前にはクラスタベアの上に跨るようにクラスタベアが乗っておりまるで、馬に乗った騎士のように跨っているクラスタベアは前足を構えていた。
どんだけ知能高いんだこの魔獣は!?
驚きながらも俺は立ち上がり、イフは姿を剣に変え魔剣イフリートとなり、構える。
跨っているクラスタベアは乗っているクラスタベアから降り、二本足で二匹とも立ち、前足を構えた。
体を大きく見せる威嚇のポーズをとっているクラスタベアに俺はしっかりと柄を握り、
「おりゃあああ!!」
立ち向かった。
一匹、二匹―――――。
十匹、二十匹、三十匹―――――――。
どんどんその数を増やすクラスタベアにせめて逃げ道を作るべく奮戦するが、逃げ道だと彼等も認識したのか、街に戻る方角をクラスタベアが立ちはだかる様に数を固めていく。
これではジリ貧。
俺の体力切れの問題になる。
頭に受けたダメ時もあり、いなすことができても、攻撃することができても、足元が覚束ない。
そして、最悪の事態は起こる。
ふらついた足にコケ、そのすきを狙ったクラスタベアの狂爪が俺の首に向かって襲い掛かってくる。
一発だけであればさっきと同じような結果になるだろう。
だがそれは一発ではない。
多方角からそれは放たれており、俺の命を奪おうと煌めく一線を引いていた。
読んでいただきありがとうございます。
次回と地続きになっているので次回のあらすじは無いです。
では、次回をお楽しみに。