第六十七話 チーター、野生に帰る!
ガチ野宿。
俺こと吉田英斗は悲しいことに異世界転生を果たし、様々なことがあり、なんだかんだでめっちゃ強くなることができた、まる。
俺自身の進化は三段階あり、一段階目は人成らざる五感、現状その段階で止まっている。
魔剣イフリートこと、イフは第二の姿、融合魔翼を手に入れ、段階的な意味では俺の上を行っている。
丈夫で感覚鋭敏、そして説明書いらず。
壁キャラなのだろうか。
イフは先のように完全攻撃特化、高速移動はバアルのおかげ。
本当に置物状態なのである。
という事があり、俺はバーズさんの特訓からずっと筋トレとランニングを欠かしていないのだが、弱い。
下手したら、武器系の特典なしのサワムラと武器特典を抜いた状態で戦うと本当に負けるかもしれない。
攻撃的な力があれば何かいろいろと便利なのかもしれない。
しかし、どうするべきか。
そう悩んでいると山籠もりの文字が浮かび、思い立ったが吉日と今現在、俺は王都ビスタリアを離れ、名の知らない山に最低限の荷物を持って三日ほど籠ることを決意した。
もちろんバアルを収納した腕輪はイフに預けている。
何もない騒がしから隔離された自然を体感しながら、野宿をする。
時刻はわからないが、とりあえず、夜。
獣の唸り声や木々のざわめきが激しくなり、火だけはつけたまま、眠ることにした。
そして、目覚めると日が昇っており、その瞬間から狩りをして、食料調達を行うことにした。
今回の獲物はこの世界のシカ、ラティカシの狩猟を目標に立ててた。
生態はシカと何も変わらず、何か上げるとすれば、夏にあたる現在の季節のラティカシは気性がめっちゃ荒い。
「さて、足跡でも探して、それを追いますかね」
捜索の手順をざっくりと呟いて、俺は仮に経てた野営の拠点を後にした。
歩き始めて三時間ほどで運がいいことにラティカシの足跡を発見することができた。
近くには乾いていない糞も見つけ、この場所を通ったのはそれほど前の時間ではないと推測で来た。
ならば出会うのはそれほど難しいものではないと踏み、さらに歩みを進めると、予想通り、ラティカシを発見することができた。
することができたのだが…、
ゴスン!ゴズンゴズン!
角をぶつけ合い、縄張り争いの真っただ中。
さすがにあの間に割って入って、二頭ゲット、なんてことはできない。
たぶん比喩なしで死ぬ。
いくら丈夫といってもめっちゃ丈夫なだけであり、死なないとかハイパーに無敵とかではない。
ましてや体を鋼鉄化することもできない。
いいところタンクキャラなのである。
オブジェクトにはナレにという事である。
どうするべきか、俺はその二頭の抗争を見ながら、考えた。
そして、思いつく。
争いには少なくとも勝敗がつく。
縄張りの場合は縄張りから負けたものは出て行かなくてはならない。
出ていくということは死んでいないのである。
死んでいないという事は負けたほうが疲れて逃げるのだ。
それを狙えば最小限の被害で済むはず。
ならばとじっと、身構えその争いを見つめた。
ドズン、ガガガ!ドンドン!ズガズガ!
意地の喧嘩を繰り広げ、数十分。
とうとう決着が付き、敗者が尻尾を舞いて逃げ始めた。
いまだ、その一心で敗北したラティカシに取り掛かろうとした瞬間、オオカミ型の魔物、ウルベフが襲い掛かり、目の前でむしゃむしゃタイム。
そして、そのタイミングを狙ってスネアヴァイドがすべてを飲み込んでどこかへ去って行った。
それがすべて秒単位で。
俺は改めて思った。
ここは地獄か、と。
残すところいい感じに岩陰に隠れ逃げきっている勝者のラティカシのみ。
疲れてはいるだろうが、さっきの戦いを見るにまぁまぁ強い。
だが、これを逃せば今日のご飯は出会えない。
下手すれば、角で作る予定の釣り竿や武器の製造チャンスすらも逃す可能性がある。
意を決し、俺は全力でラティカシの眉間に目掛け、重めの石を全力投球する。
ガツ。
そんな鈍い音をはじきながら、目論見通り命中すると、あたりをマジ切れしながら見回し始めた。
そして、わざと俺を見つけさせると俺に向かってラティカシは激走。
猪突猛進の勢いで俺に頭突きを仕掛けてきた。
それに俺は角を両手でハンドルのように掴むと膝蹴りを連続であごに入れ込んだ。
首にダメージを入れるのではなく。顎をつぶすのだ。
痛みで披露するのだけ狙う。
普通の人間であればただでは済まないが、そこはチート特典をもらった人種。
特典フル活用である。
そして、いい具合に目的の大木に押し返されると突進から受け流すように抜け、目的の木へ衝突し、足を止めたラティカシの脳天に持って来ていたナイフを正確に一刺し。
数分後、そのラティカシは絶命した。
「すまんな。俺のために死んでくれて、感謝するよ」
そう言って、そのラティカシを背負い引き摺りながら、野営の拠点に戻った。
一通りラティカシを捌くとたき火で焼けるだけ焼き、食料のストックを作り、あらかじめ組んだ水を煮沸するのも同時に行いながら一息ついた。
そして、一言。
「山籠もりって、命の勉強になるなぁ」
いくら狩り方はクエストを経て知っているからといっても、こう血肉にするために狩るのとは全く訳が違う。
そんな違いを抱きながら、俺はたき火を眺めるのだった。
読んでいただきありがとうございます。
では、次回もお楽しみに!




