第六十五話 正義と誰が決めた。悪と誰が決める。
願いが答え。
イフは吉田英斗の所有する魔剣イフリートの人型に姿を変えているときの名前だ。
吉田が異世界に来てから行動を共にし、紆余曲折で絆を深め、前途洋々で何もない道を共に歩んでいる。
楽しい。
そう思う日々が続く彼女の過去は笑顔などない、暴虐と廃れた栄光しかなかった。
これは魔剣イフリートのイフではなく、大悪魔イフリートとしての物語。
失う物語だ。
そして、喪失のためにはもう一つの物語も存在している。
そう、喪失は何かのきっかけがなければ自力で行うことができない。
吉田が読んだ新聞記事。
ビスタリア大陸、南端の島グェルブブに謎の落下物が確認され、その付近で巨大な足跡が発見された事件。
それは空間の記憶でも、ミャリャリ・クェクェのものでもない。
その足跡の主は、今、海を渡りようやくビスタリアの大陸の大地を踏んだ。
その姿はバケモノ。
まるで竜。
だが、人間の魂を持っていて、様々な並行世界を旅し、ようやく辿り着いたのこの世界に感激しつつ、声を漏らした。
「イフリート…、愛しき俺の主よ…」
赤黒い鱗を水でぬれた輝きを得て、月光を反射していた。
イフリートは彼女の生まれた世界を滅ぼすことだけ考えていた。
涙のない世界の為に涙を流す戦いを続けていた。
彼女の掲げている正義は決して間違っているものではない。
ただ、すべてが間違っていた。
だから、彼女は気付くと世界そのものが敵となっていた。
戦争は個人対世界という果てしない状況を生み、そんな判断しか下せない世界にさらにイフリートは失望し、更なる決定を余儀なくされることになる。
それは自らの死、それか世界の破滅。
だが、大悪魔の判断は早かった。
前者を選んだところで世界の争いをすべて無くなるわけではない。
ならば、ただそれだけで決定された。
世界は様々な力を持ってイフリートを殺そうと攻撃を繰り返した。
繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、その終着点は十五年掛かり辿り着くことになる。
結果はイフリートが世界を滅ぼした。
戦火が消えるのにはさらに五年かかったが、青空と何もなくなった瓦礫の世界でイフリートは世界を歩くことを焼けることはなかった。
自分が行ってきた正義を振りかざした結果。
それは自分が憎んだものと何も変わらなかった。
正義は勝ったはずなのだ。
だが、そのせいぎが勝った後の世界は自分が悪と認識していたものが作っていたそれと何も変わらない。
単純な矛盾。
どこで間違ったのか。
ただその答えだけを求め、イフリートは世界を歩いた。
寂しさと疑問だけの旅の中でイフリートは一つの命を見つけた。
それは戦争孤児。
小さな男の子だった。
何もわからず無新で雑草を探しては食べていた。
その光景がイフの答えになった。
自分は正義と名付けた武器を振るっていただけなのだと。
救えない世界をその世界のダメな部分で壊しただけなのだと。
イフはその答えを得るとすぐに男の子に近寄り、保護することを決意した。
姿は少女のままから変わらないという事もあり、自分も戦争孤児という事にして、男の子と暮らした。
男の子にはギルと懐け、イフリートはイフと名乗り、十年の時を懸け、教育、教養、その他もろもろを教え込んだ。
だが、ギルはその十年の間でイフが魏Rのすべてを奪ったイフリートだという事に気づいていた。
ギルはそんなある日、イフリートに尋ねた。
「イフ、もう嘘は良いよ。だから、イフリート、一つだけ訊かせてくれ。なんで世界を滅ぼしたんだ?」
それにイフは得た答えを踏まえ応えた。
「自分が描いた理想のために正義を見境なく振るった。争いのない世界を作ろうとして、争った者が作った憐れな結末なんだ。私は最終的に、私が下す判断上の悪だったんだ」
それにギルは返した。
「でも、確かにここまでしないと世界から争いはなくならなかった。だから、イフの答えはある意味では正しかったんだと思う。ただ、それが裏目に出ただけなんだ。だから、イフは悪ではない。俺はそう思うよ」
フォローなのか、心からのことなのか。
イフリートにはわからなかったが、ギルの言葉に救われた。
そんな気がした。
イフリートはそんなギルに最後に教えることがある。
そう思い、あるモノを教えた。
それは悪魔封じ。
自分を永遠に封印するための方法だった。
読んでいただきありがとうございます。
では、次回もお楽しみに!




