第六十四話 失うだけなら
たぶん前後編でまとまります。
多くても三話でどうにかなります。
でもこの話、いろいろやるから、全体みると五話が最大かもしれませんが、そんな感じです。
たぶん、今回の前書きはこの作品史上一番長い回なのかもしれません。(後々超えることもあり得るけど…)
イフは吉田英斗の所有する魔剣イフリートの人型に姿を変えているときの名前だ。
吉田が異世界に来てから行動を共にし、紆余曲折で絆を深め、前途洋々で何もない道を共に歩んでいる。
楽しい。
そう思う日々が続く彼女の過去は笑顔などない、暴虐と廃れた栄光しかなかった。
これは魔剣イフリートのイフではなく、大悪魔イフリートとしての物語。
失う物語だ。
イフリートの元の名前はアリス訊呼ばれた貧困地域で生まれた少女だった。
アリスの住む区域はその区域を収める国の紛争により時たま、大砲が住居にあたり誰かが死ぬような場所だった。
その日、アリスは住処からかなり離れた井戸から水を汲み、戻ってきたときのことだ。
目の前にはぺしゃこになった家と燃えた周囲。
がれきに潰され圧死したむごい自分の家族の死体。
思い出も何も残さず無慈悲につぶされたすべてが彼女の目の前に広がった。
衝撃。
ただその二文字が彼女の心を押しつぶし、破裂した彼女に残されたものは憎しみだけだった。
争いを起こす全てを滅ぼす。
単純な憎悪が彼女を動かした。
彼女は人の道をはずれ、羅刹道を歩むことを選んだ。
王がいる町に彼女は乗り込むと、人を殺し、人の肉を食い、殺した人間の金銭を奪う。
そうやって、武器を揃えて、必要なもの買って、次第に人を食わなくていいようになった。
だが、殺しはやめなかった。
全て争いを起こした王の手先に見えて、夜な夜な外を出歩くと殺してまわった。
そして、そんなある日、彼女は王を殺すことを決意した。
決意したその時点で彼女は様々な武器で殺しを行っており、彼女が住む王国の兵士を大きく超える水準の殺傷技術を身に着けていた。
そして、決意してから三日後、行動に移した。
門番の兵士を弓矢で暗殺した後、城内に侵入。
警備を短剣で刺し殺し、鏃に毒を塗り、少女の小さい体躯を利用し、狭い場所、音の出やすい足場を軽々と超え、王の間で門番をする兵士を二本同時の弓の射出で一撃で沈め、王の間へ安々と侵入を果たした。
扉をくぐると王は丸々と太った体を横たわらせ眠っている。
自分の痩せ細った体と一度見比べると窓の前に移動し、窓を開けた状態で油を部屋中に巻き、火を投げた。
そして、ナイフを投げつけ、王の頸動脈にさすと、それと同時に窓から逃げた。
飛び降りた後の王の部屋は激しく燃え上がり、犯人不明の国王暗殺事件としてその世界で名を遺した。
だが、当初の目標であった王の殺害が達成された後でも憎しみの炎は消えることはなかった。
もう少女には味方に見える人間など、頼ろうとする人間など、存在しなかった。
争いは世界から消えない。
悪意や正義のぶつかり合いがなくならない。
その事実がさらに彼女の憎悪を深くした。
それから彼女は羅刹を逸した何かに成り果てた。
たった一人のくせに百鬼夜行のような禍々しさをまとい。
彼女の弱いが十五を過ぎるころには、彼女の黒く長い美しい髪は赤に染まり、念入に洗うのを繰り返し、憎悪の元に涙する日々のせいで色を失い、妖艶で禍々しい白髪へと変わってしまった。
小さな体躯から思いもよらない殺害技のデパートに姿なき世界の的t路して認知されるようになった。
そして、そのうちに彼女は行き倒れた。
疲れていたのだ。
限界を超えた彼女は声が聞いた。
『憎いだろ?』
あぁ、憎い。
『なら、すべてを燃やし、絶ちたいのなら、そうすればいいさ』
そうするさ。
心の中の短い問答の後、彼女は疲れが吹き飛び、立ち上がることができた。
其の時少女は自分が行き倒れたときに死んで、自分が別の何かになったんだと理解した。
目覚めた時間帯は夜遅く動くにはちょうどいい時間で一人見回る兵士を見つけるとどうしてか、自分の素手でどうにかしたくなった。
その衝動のまま、手刀を兵士に突き刺すと、ジャコ、手刀は剣に代わり、鎧も肉も何もかもを貫いて、兵士の心臓を穿つことができ、死体の処理困り、燃やす場所を探そうとしたときに、死体が突然燃えた。
その瞬間、アリスは自分の存在が生き方として外れ、成ったそのままのものと成ったことを理解した。
そして、転々とする中、読んだ本を思い出す。
火を操る魔物、イフリート。
その名前を思い出し、アリスという人間の名前を捨て、イフリートとして名乗り生きることを決めた。
憎炎の魔物イフリートを冠する憎悪の悪魔イフリートとして、少女は生まれ変わった。
目的は悲劇を消し去ること。
そのためには自分がそこにいた場所。
人と人の間での世界。
人間すべてを滅ぼす。
そのためにアリス、改め、イフリートはさらに歩みを進めるのだった。
読んでいただきありがとうございます。
アリスの愛された日々はたぶん何よりも宝物だったはずです。
では、次回もお楽しみに!




