第三十五話 進むための助走
この助走、デカすぎないか?
俺こと吉田よしだ英斗エイトは悲しいことに異世界転生を果たし、何でも屋ヴァンヴォリックと共に世界の敵となっているヨコタシュンスケの一味の一人、エミリー・フリッツを打倒することを決意したその矢先、イフが攫われ、サワムラハルコが重傷を負ってしまい、近衛騎士団から取り調べやらを受けたんのち、バーズさんと再会を果たしたのだった、まる。
サワムラを病に運んだその翌日、俺は病室に再び訪れた。
まだ、サワムラは眠っているが、意識不明と言う訳ではなく、手術に使った体力を取り戻すために寝ているらしい。
一応、危険な状況は抜け出せたらしい。
今のところどうしようもないこの状況に対抗法を感がる藻まだ答えを出せるものではなかった。
病室でサワムラの見舞いをしながら考えていると、
「サワムラ!」
大声を立てて鬼町兼弘とヨハン・ラウドとアーノルド・ヴィン・ラハールの現状のヴァンヴォリックの頭と幹部が病室のワイヤワイヤと入って来た。
「一応病室ですから・・・」
俺はすかさず口の前に人差し指を立てて、言うと、思い出したかのように三人は頭を下げた。
こんな切迫した状況なのに三人の動作を見るとどうしてもコントのように見えてくるのは何故なのだろうか。
そう思いはしたが、俺は鬼町に訊く。
「言ってなかったのに、なんでわかったんですか?」
それに鬼町は、答えた。
「バーズだ。アルフレッド・バーズに状況と召集をされてな」
その答えに単純に驚くしかなかったが、よくよく考えれば、半分解体されたときに頭である鬼町にリードとして関係を結んだのだろうと、ついた。
自分でなんとなくなく納得をしていると、
「イフさんを攫った方というのはまだ判明してはいないのでしょうか」
「いや…まだ。」
と、ヨハンの質問に俺はすぐ返し、ヨハンは顎に手を当て考え始めた。
考え込むヨハン、事態に対処すべきかと悩み始めた鬼町。
そんな二人を見たアーノルドは、
「まずはハルコが起きてからじゃないといけないな」
と至極当たり前なことを言い、その場は収まることになった。
そして、ある程度三人と話をし、俺も含め、全員、病室から引き上げることにしようとした時、
「お、キマチ」
偶然にも病室に入って来たバーズさんと鉢合わせた。
「バーズ…」
唸るよう鬼町はバーズさんを睨んだ。
それにバーズさんは穏便に済ますために、
「ヴァンヴォリックを今ここでどうにかすることはしない。悪事を現在働ける状態じゃないことくらいは分かっている。だから邪険にあつかうのは止してくれないかな」
やけに優しい口調で答える。
それに鬼町は不機嫌な顔こそはしていたが、それ以上は何もすることはなかった。
鬼町以外のヴァンヴォリックのメンバーはバーズさんの動きを監視するように目を光らすだけで身構えもしなかった。
ヴァンヴォリックからすればある意味、バーズさんは信頼できることを言う人間と認められているようだが、それなりに歓迎されていない人物でもあるというのが見て取れた。
そんな勢力図に唖然としている俺に、バーズさんは苦笑いをし、俺に話しかけてきた。
「エイト、病室で済まなかった。で、君がここにいると聞いてきたんだが、話をさせてくれないか?」
神妙な表情を浮かべ、言われたことに、
「え、あ、はい…」
戸惑いながら、答えると、
「ここではあまり話したくないからな、場所を変えよう」
バーズさんは先ずというように提案をした。
ヴァンヴォリックの連中の内、鬼町だけバーズさんから指名を受け、三人で近くの客が誰もいない裏素地の飲食店で昼食をとるという形で場所をとった。
そこでバーズさんは静かに一枚の書置き程度の紙を俺に差し出し、俺はソレを読んだ。
そこにはそれほど長い分は存在せず、簡単に用件とその差し出し主の名前が書かれていた。
『王都ビスタリア北端の製鉄所の八番倉庫で待つ。イフリートには手は出していない。ヨシダエイトだけで来い』
そう書かれた紙の裏を見ると、『エミリー・フリッツ』と書かれている。
これは要求だという事が一瞬でわかった。
そして、俺が読み終わったのを確認し、バーズさんが話し始めた。
「これはエイトの家で見つかったものだ。玄関の郵便受けにあってな、最初はエイトくんに読ませるべきだと思ってね、鑑定の上層に回す前に少しだけ拝借してきた」
そしてバーズさんは鬼町に目を向け続ける。
「エミリー・フリッツ、キマチは訊き馴染みがあるだろう。ヨコタシュンスケの一味の一人だ。彼女は私たちも敵対している勢力の一員でもある。で、だ。これで私達、王都ビスタリア、ヴァンヴォリック、そして、エイトくん、ここにいる三人の因縁がエミリー・フリッツに出来ているわけだが、提案だ」
そう言うと、バーズさんはどこからか一枚の紙を取り出した。
その紙には『誓約書』と書かれており、バーズさんはさらに言った。
「どうだ、敵は同じ。今回だけ、手を結ぶというのはいかがだろうかね」
それは闇と光の組織の共闘の願いであり、大勢力での戦いがさけられないという表れでもあった。
読んでいただきありがとうございます。
では、次回もお楽しみに!




