第三十一話 マリオネット
前後編形式になっちゃうんですね。
吉田英斗はヴァンヴォリックの連中と情報共有しに彼の拠点を開けているときに遭った、いわば同時間軸で起こった別の出来事である。
サワムラハルコとイフのお話である。
その日、イフとサワムラはヴァンヴォリックとの話し合いをしに行く吉田を見送り、家事をこなしたり、買い物をしたりとしていた。
やる事だけ見れば従者としての働きそのものなのだが、家事や買い物はすべて吉田が畏怖に教えたモノであり、家計簿は吉田が付けているという、なんとなく仕事の分配が取れた関係性が成り立っていた。
その日の買い物はサワムラの能力を使い、いち早く安売りの時間になった瞬間に大量入手を行い、質と量とコストパフォーマンスが際限なく良い買い物を終え、帰宅した。
「サワムラの能力はお買物専用能力の様な気がします」
「イフ様、一応転生するときに神様から力が弱い分、闇に潜んで撃つことができる能力だって云われてるんっすよ?」
イフの毒に対し、オドオドとしたツッコミをサワムラは返し、二人は荷物を仕舞い込むと、洗濯物を取り込みに庭に出た。
真っ白なシャツが多く並ぶ物干し竿にかかる衣服を見て、サワムラは見たままの感想を口にした。
「あ、結構乾いてるもんっすね」
「朝一に乾かしているんですから、お昼ごろには乾いてますよ」
それにイフは笑って返すと洗濯物を二人で取り込み始めた。
何事もないいつもの日常だ。
イフとサワムラはそう思っていた。
それに事実、何か異常がないかとイフが辺りを念のために警戒をしていたのだが、異変どころか、どこまで深読みしても危険や不審につながるモノは見当たらない、何も変わらない平和なものだった。
何もない。
それこそが最大の平和だというのに、イフには過去の戦火の記憶が、サワムラは隠れて生きていた前の世界の記憶が甦った。
そして、ふと、サワムラはイフに訊いた。
「そういえば、どうして、イフ様は吉田さんに従うって思ったんっすか?」
それにイフはそれほどすぎたモノではないはずなのに、懐かしく感じた思い出を浮かべながら、
「ご主人様は私に目的を、生きる理由を指し示してくれた、恩人なんです。ですので、恩人には恩返しをという事で、仕えさせていただいていますね。最も、私の目的のためにはご主人様が必要不可欠ですから、離れることができたとしても、無理なんですけどね」
幸せそうな顔で笑っているイフにサワムラは言葉は返さなかったが、微笑ましさに笑みを浮かべた。
「目的について、教えてくれたり?」
「しません」
すこし調子に乗ったサワムラの問いにイフはぴしゃりと断りを入れたところで二人は洗濯物の入った籠をもって家に戻った。
衣服は折り畳み、それぞれの部屋に持って行ったあと、夕暮れを拝みながら、一息とこの世界のお茶に当たるティアフルを淹れ、だらだらとしていた時、ふと、イフは気配を感じ、玄関へと向かった。
玄関のスリ窓越しには何も映ってはいないが、イフが玄関に向かった瞬間、気配が濃くなった。
来客、と言う訳ではない。
不明な事態にイフは玄関をにらみつけると突然、玄関に向かったイフを心配して追いかけるように駆けつけたサワムラもイフが感じている何かの少しを感じたらしく、到着と同時に、眉を寄せた。
「…イフ様、何すか、これ」
呟くようにサワムラはイフに訊いた。
「わかりません。ただ、普通じゃないって言う事はわかります」
イフはそう答えると、アイコンタクトで、玄関を開けると伝え、サワムラが頷くのを確認して、勢いよく玄関をイフは開けた。
開けた先には、何もなかったが。
「ドッキリって、こうするんだよね」
静かな声が畏怖とサワムラの背後から響いた。
イフはその声に既知の感覚を感じ、サワムラは不意を突かれたと思った。
そして、同時に振り向くと、そこにはローブのフードを深くかぶった女性が一人。
深く被り過ぎてその顔は全く見えないが、イフは口から漏らした。
「なんで…?」
声を漏らしたイフに振り返って間もなく少女は近付き、額に人差し指を突き、少女は口にした。
「【従え】」
その瞬間、イフの動きは完全に止まりに留まり、サワムラはイフを助けるのは現状難しいと判断し、家の中へと能力を使って隠れる判断をとった。
サワムラの判断での行動にイフはその時、感謝を覚えた。
感覚的に自分では動けない、それに少女に動作すべてが操られる、どうしようもない、解除もできないだろう、それらが分かったからだ。
そしてイフの予想通りのことが起こった。
「【貴方は刃を振るえる。サワムラハルコを討つ一太刀を与えるまでは動きをやめることはできない】」
そう命じられたが最後、イフは悲痛な叫び声を上げ、サワムラを探すために歩み始めた。
読んでいただきありがとうございます。
では、次回もお楽しみに!




