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第二十三話 血より汗に濡れた金の方が稼いだ感触が良いぞ。

ヴァンヴォリック戦、中編です。

 俺こと吉田よしだ英斗エイトは悲しいことに異世界転生を果たし、暗殺目的の女に命を狙われてしまったのだが魔剣イフリートことイフに謎の拷問を受け、俺たちに寝返り、彼女が所属する何でも屋ヴァンヴォリックを潰しに本拠地に足を運んだのだった、まる。



 「おりゃぁ!」


 そんな叫びを上げながら、一気に遅いに来る人混みをどかどかと吹っ飛ばし、かっ飛ばし、ねじ伏せて、俺は道を切り開いてゆく。

 絶対に殺さぬように殺しに来る連中を倒すのはそれなりに集中力がいる。

 最近、寝不足な俺にはかなりの重労働ではあったが、殺しはしたくない。

 あの感覚は嫌だから、俺は『しばき倒す』という目標を掲げている。

 それに殺しに来る相手だって生きる理由はあるはずだ。

 いくら誰かを殺したとしても、生きる理由は少なからずある。

 生きたまま殺されるために。

 だから、俺は殺すなんてことは出来ない。

 俺が一番わかってる。

 だから、しばき続けた。

 しばいて、しばいて、しばきまくる。

 そして、気付けば、大体の男達は床に伏していた。

 伏した男たちの先にあの側近兼、護衛のヨハン・ラウドと名乗る男がナイフを両手に携え立っていた。

 頭部には確実に俺が食らわせたと思われる痣が彼にはあったが、そんなのを気にしていないような素振りで立ち、不敵な笑みを浮かべた。

 俺は感覚的に身の危険を感じ、


 「イフ、いつもの姿に変わってくれ」


 そう命じるように言うとイフリートは何も返さず、いつもの大剣、魔剣イフリートに姿を変えた。

 その重みを感じながら、俺は片手でい振りとを構え、バアルの出力を上げた。

 俺のその姿を見て、ヨハンはさらに口角を上げて、りょうてにもったナイフの切っ先を俺に向け、こんなことを言ってきた。


 「アンタ、もしかして、転生ってやつの被害者か?ボスもそうだが、サワムラとアーノルドってやつがそうだったよ」


 ボスとやらとサワムラはさておき、アーノルドは先ほどの動体反射野郎のことだろうと予想しさらに腰を落とし、臨戦態勢に入ると、ヨハンはさらに笑いを深ませながら言う。


 「転生した奴って何かしらの強ぇ能力を持ってるって聞いたが、そういう奴と闘うのは俺ぁ、初めてだからよ、一発やろうや!」


 言い終わると同時に、一瞬でヨハンは距離を詰めて来た。

 チート特典や魔法的な何かでもない、単純な古武術で言う縮地という移動法。

 体軸だけを動かし、地面は蹴らない。

 だが、とんでもない速度で長距離を移動できる。

 要は単なる技術で俺に迫って来た。

 それに即座に後ろに飛ぶという行為で距離を取った。

 すると、ヨハンはちょうど俺がさっきまでいた場所を二本のナイフで引き裂く様に空を振るった。

 そして、一言。


 「いい判断してるねぇ」


 その言葉に俺は恐怖を覚えながらも、次はカウンターでもいいから一撃を食らわせなければ、その一心で即座に攻撃が出来るように集中しヨハンを観察するように見据えた。

 ヨハンは相変わらずに縮地で俺の元へ近寄ってくる。

 一歩はおよそ一メートル五十センチメートル以上。

 俺とヨハンが動き始めた位置との距離は十メートルほど。

 おおよそ、七歩ほどで俺の元にヨハンが俺に辿り着く。

 すでに三歩踏んでいる。

 あと四歩。

 四歩目、五歩目、ろ…!?

 六歩目に二メートル以上の幅を、一瞬でヨハンが目の前に来ており、また引き裂く様にナイフを振りぬいた。

 今度は避けることができずに俺はイフリートで防御せざる負えなかった。

 ガキィン!

 ナイフと剣がぶつかったとは思えない轟音が鳴り、ヨハンがまた一言。


 「捕まえたよ」


 その一言を皮切りに超高速のナイフの連撃が襲い掛かって来た。

 その手数はまるで雨のようであり、その攻撃の一つ一つが俺の命を狙う位置を的確に攻めてくる。

 有様はまるで暴風雨。

 俺はカウンターどころか、防戦一方を余儀なくさせられた。

 ヨハンという男は強い、そう感じながらも俺は攻撃を観察し続けた。

 そして、気付いた。

 五発に一度、両手で攻撃している。

 方向はどうであれ、必ず両手が同じ方向に一薙ぎと動いている。

 ならば、その瞬間にヨハンを抑えることことができるのかもしれない。

 俺はそのタイミングを伺い、その時が来た。

 上から下へ、ヨハンが振り下ろしたナイフを俺は県で押さえつけるように拘束した。

 その瞬間、ヨハンは驚いたような表情をしてからニヤリと笑い、下に押さえつけられる勢いを利用し、前宙から踵落としを決め込んだ。

 だが、俺はここまで想定済みだった。

 縮地で見た技術から、攻撃の癖やリズムも演技として見せることができるかもしれない。

 そんな、かもしれない闘法で反撃までは読んでいた。

 実際、かかとお年をするとは思ってはいなかったが、俺はすぐに空いている片手で降りかかる足をつかみ、壁へと吹っ飛ばした。

 壁にぶつかり、ヨハンはそこにのめり込んだ。

 べぎゃん。

 壁からは人生で訊くことが無かっただろう音が鳴り響いた。


 「…、よく読んだな…」


 ヨハンはまだ気絶することはなかったようで、俺のことをMだ睨みながらそう言った。

 さすがにこれ以上は俺もやりたくないが、虚勢でも張らなくてはと俺は、


 「まだ、やるか?」


 そう訊いた。

 するとヨハンは首を振って言った。


 「今の一撃で頭がクラクラして体が動きそうにないんでね。遠慮する。君の勝ちだ」


 それに俺はほっと安堵して、ヨハンから背を向けボスがいるはずである部屋へ足を向けると、


 「おい、一つ、聞いてもいいか」


 ヨハンが俺を呼び止め、俺はソレに立ちどまり振り返った。

 それを見てヨハンが聞いた。


 「なんで殺しもしねぇ、クエストばっかやって金稼いでるお前が死線で経験した技術に勝るんだ?」


 それに俺は普通に返した。


 「いや、人殺ししたくねぇもん。いいとこ狩りまでだ。平和に暮らしたいだけだからな。それに金稼ぎは血より汗に濡れた金の方が稼いだ感触が良いぞ」


 その答えにヨハンは唖然とした後、笑った。


 「ははは、そうか。面白い、いいだろう。お前が思っているだろうとは思うがこの先の部屋はボスの部屋だ。ちゃんと逃げずに待ってくれているはずだ」


 そう言い残すと、ヨハンは気絶し、倒れた。

 ヨハン・ラウドという男は根っからの悪人なのでは何のかもしれない。

 なぜか俺はそう思った。

 そう思い、片隅でまた、こんなことを思った。

 倒れる時にヒントくれるとかRPGのNPCみたいだな、と。

読んでいただきありがとうございます。

ヨハンは再登場します(突然の公表)。

後、ヴァンヴォリック戦の後編は前後編になります。

では、次回もお楽しみに!

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