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第二十二話 叩きに来たぜ、お前らを。

ヴァンヴォリック戦です。

俺こと吉田よしだ英斗エイトは悲しいことに異世界転生を果たし、暗殺目的の女に命を狙われてしまったのだが魔剣イフリートことイフに謎の拷問を受け、俺たちに寝返ったのだった、まる。



 ヴァンヴォリック本部制圧当日。

 サワムラハルコが俺の仲間になってから十日が過ぎ、襲撃されること二十回。

 内、夜襲十八回。

 それなりに睡眠不足になっていた。

 安心できる毎日のため、安眠の夜を過ごすため、俺たち三人は出来る限りの用意をして、ヴァンヴォリックの本拠地である豪華な屋敷の前に立っていた。

 作戦はない。

 出会って即バトル。

 イライラは溜まりに溜まり、鬱憤を晴らすように倒すのみ。

 ノープラン索敵バトル作戦だった。

 敵の情報はサワムラからある程度訊いていたが分かって三人程度。

 無いのと同じだった。

 それもそれでいい。


 「イフ」


 俺はそう呼ぶとイフリートへとイフは姿を変え、手に収まり、バアルも同時に換装する。

 サワムラもナイフを取り出し、柄を強く握っていた。

 俺は、ヴァンヴォリックの敷地に一歩踏み出し、一言。


 「…行くぞ」


 その静かな合図と共に俺とサワムラは突入した。

 サワムラより遥か上回る速度で、正門前の庭を突っ切り、飛び蹴りで正門をぶち抜くと、大量の光弾が俺を目掛けて飛んできた。

 それをすべて認識しながら、出来る限り正確に避け、光弾の軌道を読みながら発生元を見ると、そこには杖を持ったローブについているフードを深く被ったの人影がざっと数えて、五十。

 どうやら、さっきの光弾は魔法のようだ。

 魔法がこの世界にあるというのはバーズさんから聞いてはいたが、お腹いっぱいなレベルの初対面をするとは思わなかった。

 人殺しは出来るだけしたくない。

 その意図を元々畏怖には伝えており、斬撃ではなく打撃で打ち倒すメイスの様な形に変身してもらっているのをいいことに、補足してきた人影をバアルの超高速移動で零距離に接近、即座に打撃を全力で叩き込む。

 一人につき一撃で倒していき、すべて倒し終わったくらいに、サワムラが来た。


 「…なんか、お迎えのやつら全員やったみたいですね」


 辺りに蹂躙されたサワムラの元仲間たちを見て言った。

 俺はソレに何も返さず、ただ頷くだけして、さらに奥へ向かう。

 その途中でとんでもない速度の斬撃が俺に降りかかった。

 俺はソレにギリギリで反応し、イフリートで弾き、急停止を余儀なくされた。


 「手荒な歓迎だな」


 俺は斬撃の主に向かって毒を吐く様に言い捨てると、


 「まぁ、手下がいろいろお世話になってるし、いつまでも失敗続きの報告しててたら契約主に怒られて耳が痛いからね」


 へらへらと言葉が帰って来た。

 斬撃の主は長身で痩身の黒い軍服を着た男だった。


 「お前、なんで俺の高速移動に反応することが出来た?」


 俺はまず普通では直進していたのを待伏せしていても攻撃を当てられない速度で移動してきたのを撃てたのかを訊いた。


 「ふふ、それは私も転生しているからですよ」


 そう答えると男は手にした剣の切っ先を俺に向けた。

 敵意、それはすでにわかっていたことだが、殺意が混じったものが向けられることをその瞬間、理解した。

 さして、転生した人間を相手することは真の意味でこれが初めて。

 能力は戦って、推理するしかない。

 俺はメイスを握り直し、身構えた。

 そして、お互い、動く。

 速度は俺の方が圧倒的有利で、先に間合いを詰めたのは俺だった。

 だが、超高速で振るった一撃は男の剣で払われた。

 ガキン!キン、ガガッ!!

 火花が遅れて舞うほどの剣戟を繰り返すも、一撃はお互いに届かない。

 だが、おかしい。

 人間が認識できたとしても肉体が反応出来ない速度で攻撃を繰り返しているのに、すべて防がれる。

 まるで、攻撃に対して攻撃しているような、ホーミング性能でもあるのではと思う程に攻撃を捌かれ続ける。

 それにそれにどうしてか、俺が立ち止まっているときは攻撃してこない。

 どういうことだ。

 攻撃に対して攻撃していて、動いていないときは何もしてこない。

 もしかして…。

 俺は一度、鍔競り合いに移すと、


 「イフ!」


 相棒の名を呼んだ。


 「承知致しました!」


 返事を返した相棒は刀身から刃に変えた腕を出し、男の身体に平手のように一閃。

 その一閃は男の身体を切り裂き、鮮血が飛んだ。


 「ぬぅっ!!」


 堪える様な声と共に男は大きく下がった。

 そして、理解した、男の能力を。

 男の能力は動くもの、事象に対して任意で反応する能力だ。

 剣の攻撃は動かず、イフが斬撃という名の平手を叩きこませた。

 剣の攻撃ではなく、手での攻撃。

 これが敵に一撃を与えることができた鍵だった。

 攻略法が解れば、後は押し切るだけ。

 俺は先ほどと同じように超高速で男の剣を抑え、イフの一撃を叩き込ます。

 ダメージを受けた瞬間、ほんの一瞬ひととき思考の空白が生じる。

 俺はそこを狙い続けるだけだ。

 連続攻撃に次ぐ連続攻撃。

 ふらふらと片膝をついた男の一瞬を俺は見逃さず、超高速の助走付きの膝蹴りを叩き込む!


 「アチョォオオオオオォオォォォオオオ!!!」


 甲高い雄たけびを挙げ、膝蹴りは男の顔面に決まった。


 「ブゥ!?」


 声にならない悲鳴を挙げ、男は大の字で倒れる。

 完全に伸びたことを確認し、回復ポーションを適当に撒く様に掛けた。

 するとかかったところの傷口はあっという間に塞がり、男はすぐに目を覚ます。


 「…なぜだ」


 男はそんなことを訊く。

 それにい俺は答えた。


 「…安眠妨害されて、ブチギレてるだけなんだ。シバくだけで命は取らねぇよ」


 それを聞いた男は、


 「そうか」


 一言だけ言い残して、再び気絶した。

 俺はその姿を見て、すぐさま走り出し、扉を蹴り破り、壁を殴り壊し、一つの部屋の前についた。

 部屋の前の廊下には豪華な装飾が施されており、それを覆い尽くすようにスーツによく似た服を着て、多種多様な武器を持った男達が待ち構えていた。部屋の前と言えども、廊下の横幅はとてつもなく広いし、部屋までの距離も百メートルはある。それを覆い尽くす男の数はざっと数えて、お出迎えの数倍はいる。

 どうやら侵入者の俺を仲間を犠牲にしてでも倒す人海戦術極まれりなやり方で相手してくれるようだ。

 俺が再び、イフリートを構え直したとき、人混みから一人の男が前に出た。


 「わたくしはこのヴァンヴォリックのボスの側近兼、護衛を務めるヨハン・ラウドでございます。単刀直入で聞かせていただきますが、よろしいでしょうか」


 丁寧な喋りで来た男に俺は頷くと、男はぎろりと俺を睨みながら、


 「俺たちの仲間が散々お世話になってるようだが、何しに来た」


 荒い口調に変え、質問が飛んだ。

 それにさも当たり前のように俺は返す。

 当然、睨まれたら睨み返しながら。


 「叩きに来たぜ、お前らを」


 俺のその答えと共に、大群と俺の足が同時に前に出て、お互いに激突する。

読んでいただきありがとうございます。

では、次回もお楽しみに!



この主人公、なんで睡眠不足解消のために戦ってるんでしょうかね。

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