第一話 大体、みんな転生してる
勢いで上げる短いの、初めて書くんです。
許してください。
俺、吉田英斗は普通のニートだ。
高校を中退後、外でジョギング、たまに高校の頃の友人に誘われ、適当にスポーツを嗜む。
そのくらいしか出来ないニートだった。
基本的に部屋から出ず、ネットでアニメやら動画やらを漁る日々。
その日々もあの日を境に途切れ、新たな日々に変わってしまう。
ある夏の日、時間は夜。
その日、俺は歩行者用信号が青の光を放ち、そのタイミングで横断歩道を渡ったというのに、前方不注意で突っ込んできたワイワイガヤガヤ大音量EDM垂れ流しイキリカーに轢かれ、その一生を途絶えた。
享年17歳。
短い一生だった。
ずっと陰キャだったなと思うと心が痛い。
でも、陽キャで空っぽで大喜びするよりはましか。
いや、でも、もうちょっと生きたかったなぁ。
もう少し生きれば彼女の一人くらい作れただろうし…。
彼女いない歴=童貞歴=年齢=享年の満塁ホームランな俺はこの後どうするんだろう。
意識だけになり、暗闇だけがすべてを包んでいるその最中。
一点の光の穴が見えた。
俺はその光に導かれるように向かっていく。
できるだけ早く、できるだけ急いで、その光へと向かっていく。
そして、たどり着いた。
たどり着いて目を開く。
そこには一人のおっさんがいた。
肌は日焼けしているのだろうか妙に黒い。
髪は金髪で少し髪が伸びていて、ピンクの太縁のサングラスに、耳には大きいリング状のピアスを付けていて、黒い短パンに黄緑色のアロハシャツを羽織り、その下は何も着ていないが、やけに鍛え抜かれた筋肉が覗いている。
そんなおっさんが白い歯を見せながら笑っていた。
絵面つっよ。
それが初めて抱いた感想だった。
そのインパクトに何もかも持っていかれそうになった瞬間、気付いた。
俺の身体が、死ぬ前の服装で今ここにいることに。
意識だけの時は形すらなかったのに。
二重の衝撃で俺は唖然としていると、目の前のおっさんはとんでもなく低く良い声でやけに明るい調子を醸し出しなから話しかけてきた。
「ハロー、吉田英斗君!キラキラネームな君に突然だが転生して、世界を救ってもらおうと思う!もし、やってくれるんだったら、ちゃんとどこぞの転生、召喚異世界ものみたいに『俺TUEEEE!』なチートでガッチガチな初回特典も付けちゃうよ!いかが!」
それはもうハイテンションで情報量に富んだ内容だった。
内容はわかった、理解はできたが。
いやいや、転生とか、世界を救うだとか…、ありえないだろう。
そう思いながら、そもそも、お前誰なんだと聞こうと口を開こうとすると。
「うーん、君の気持わからなくもないよ!そりゃそうだもん、みんなのイメージとは全く違う全能神を目の前にして、そう思うのが当たり前だよ。でもね、他にいろいろな人を君を転生させる世界に送ったんだけど、全員が転生特典の俺TUEEE!な能力持て余しちゃってダラダラダラダラしちゃって、ハーレム作るか、雑魚処理専門業者になるか、成金になるかの三択になっちゃったのよ。でもさ、君さ、童貞で、彼女いない歴=年齢で死因もワイワイしてるイキリ陽キャ君の前方不注意による事故死っていう陽キャにもリア充にも恨み持っている逸材なのよ。君の恨みの深さなら例えハーレムになろうがダラダラしないなって思ってさ。あーあと、保険に君がもし世界を救えたらめっちゃ好待遇で元の君がいた世界で生まれ直してもいいよ。ね、どう?これ聞いてやる気になった?」
畳みかけるように言われたその言葉になんというか、その、必死さを感じた。
というか、若干ディスってなかったか、この神様。
だが、世界を救った場合の報酬が割と欲しい。
というかむしろ、くれと言いたい。
だが、しかし、どうだろう、いくら俺TUEEE!な能力を手にいれることができるとしても世界を救うという条件と報酬は天秤にかけて水平になるモノなのだろうか。
だが、生まれ直すという事になると戦いの記憶もすべて消え、ある意味、何もなかったことに出来るのでは?
そう考えた俺はもうよくわからない現状に脳みそがバグっていたのも背中を押し、
「なったよ。やるよ、世界救うっていうの」
そう答えた。
そう答えてしまった。
だが、悔いはなかった。
割と思い出にあれなものがあれしてるからあれななんだ。
細かい回想をする前に勝手に体が宙に舞ってんだ。
「ナニコレ」
俺は宙に舞った身体をギリギリ残る頭の中の冷静さで聞くと、自称全能神はニッコリ笑って言う。
「うん、いまから転生させるね!転生のさせ方は簡単!上へぶっ飛ばす、それだけだ!そして君に与える特典はなんと豪華五本立て!一つ目は三段階に進化する力!二つ目はめっちゃ丈夫な体!三つ目はめっちゃ強くて君の進化に合わせて姿を変える魔剣『イフリート』!四つ目は魔剣の進化合わせ性質を変える光を利用した鎧『バアル』!そして最後に五つ目は何でも使い方が解っちゃう超絶感覚だ!」
そう言って特典を言いつくすと、俺の身体に鎧が装着され、背中に県が背負わされる。
体が宙に浮いているのに。
そして、一度装着された鎧と剣が右手首に集約され、腕輪に変わる。
体が宙に浮いているのに。
そんな光景に神様はまたニッコリ笑って、上を指さした。
そして叫ぶ。
「説明終り!じゃあ!いってらっしゃーい!!!!!!!!!」
その瞬間。
文字通り、ぶっ飛んだ。
上に。
全能神が言うようにマジでぶっ飛んだ。
ぶっ飛ばされ、いつしか気絶し、目覚めると、俺は草原に倒れていた。
服装は事故った時と同じもので、何も変わらない。
ただ右手首にはあの腕輪があった。
…夢じゃなかったんだ。アレ。
こうして俺の異世界転生生活が幕を開けた。
楽しみはここからです。