第十七話 いつだってぶっ壊れ、それがチート。
ちょっとカッコいい回です
俺こと吉田英斗は絵面が強い神様にチート能力特典を添付された上で異世界転生させられ、成り行きでバーズさんの修行を乗り越え、ようやく始まったのだった、まる。
今、現在、俺は迷宮洞窟に潜っていた。
王都ビスタリアから南へ馬車で揺られること半日。
深い樹林が広がるファルア大密林の最奥に存在する迷宮洞窟、ファルアダンジョンにて、あるクエストをこなすために潜っている。
クエストの内容はファルアダンジョンを探索し、地図をある程度のレベルまで製作をする探索隊の護衛と言うものである。
実はファルアダンジョンは最近、見つかったばかりの迷宮洞窟であり、内部の危険度はおろか、何があるのか、どうしてこの迷宮洞窟が出来たのかすらも不明という。見つけたてホカホカの未知の迷宮洞窟なのだ。
そして、最近、冒険者が何らかの事情で激減しているという事で、探索隊の護衛クエストをギルド側から指名を受け、俺が派遣された。
ちなみに報酬は探索中に見つけた財宝はその売却した場合の価格の半分、財宝以外の未知の生物などの発見があった場合はギルドから一万ルーカス、そしてこのクエスト自体の報酬は五万ルーカスという、クエスト自体の報酬だけで普通に家を買えてしまうという破格のクエストに俺は食らい付き、喜んでクエストを受けた。
ちなみに、報酬が低かったらやってない可能性があった。
正直、汚い話だが、喜んで洞窟にはいきたくないのが本心だった。
だが、今後の生活のため、世界を救うために、どの道必要になる資金。
それが多額に得られるとなればやるしかなかった。
「ソイヤッ」
そんな軽い掛け声と共に、イフリートで岩で体を構成している魔獣『ゴレムヴァス』を一発で倒す。
ダンジョンに入ってから、ずっとこんな感じで探索隊の人たちを気にしながら戦う以外、大して考えることもなく体が覚えているように敵をとした。
バーズさんとの修行の間、ずっと強大過ぎる力に対し、恐怖心を抱いていたのだが、その恐怖心を理由付けで克服することができた。
今回の理由は言わずもがな依頼者を守るためである。
「退治、感謝いたします。…それにしても、エイト様の持つ鎧と剣は見たことが無いモノですね…」
隊長さんのアンバーさんは俺に感謝を述べながら、物珍しそうに鎧と背中にいったん格納している剣を興味深そうにまじまじと見つめたいた。
(まじまじと見られるのは、少々恥ずかしいです…)
俺にだけしか聞こえない声で魔剣状態のイフは苦情を口にする。
一応、念のため面倒ごとを避けるということでイフには魔剣状態のままでいてもらっている。
「アンバーさん、それより、探索しましょうよ」
イフの苦情を聞き、俺は雑にアンバーさんに先を急ぐことを進め、
「そうでしたな。では先に進みましょうか」
アンバーさんを何とか元の探索路線に戻した。
なんだかんだで敵を倒すたびにアンバーさんがバアルとイフリートに興味を示してくるため、その都度、アンバーさんに対し反論すらいえないイフは俺に超絶小声で俺に苦情を控えめに呈して来る。
…クエスト終わったら、イフに何かおいしい食べ物でも食べさせてやろう。
そう思いながら、先頭を歩くアンバーさんのすぐ後ろを付けるように歩いていた。
長い間歩き続け、地下へ地下へとゆるい坂道を下っていくと小さな光が漏れる人一人がようやくはいれるくらいの隙間がある場所を見つけた。
「では私が先に覗きます。退治でどうにかなる危険であればエイトさんが先行、どうにもならなそうな危険であれば即時撤退、何もなかったそのまま私が入っていくことにします」
アンバーさんは立ち止まり、全員に行動を伝え、言い終わると同時に隙間に頭を突っ込んだ。
そして、ハンドサインで『安全』と『突入』を合図し、それに続き、俺と隊員たちはその穴の中へと入っていった。
狭い空間を抜けたその先に広がっていったのは大きな首位しょうが乱雑に入り組み形成された光り輝く空間だった。
「おそらくどこかに地上のヒカリが入る場所があり、水晶がその光を乱反射し、あたりを明るく輝かしいるのだろうな」
アンバーさんは水晶を観察しながら、そう推理していた。
俺は幻想的な風景に息をのみ感動しながらも先を進むアンバーさんに付いて行く。
その最中、突然、嫌な音が水晶の空間の奥から響いてきた。
「うぉおおおおおおおおおおお…」
まるで雄叫びのような、その音は次第に近づいてきているような気がしている。
アンバーさんを始めとした探索隊のメンバーもその音には気付いているらしく身構えていた。
それを見て俺は剣を携え、アンバーさんの前に出て構える。
そして、待つ。
待っていると次第に雄叫びのような音と共に大量の足跡らしきものが聞こえ始め、音の正体の姿が見え始めた。
見え始めたそれにアンバーさんは血の気が引いた顔で言った。
「オールンガだ。オールンガの群れだ」
オールンガ、その名前に聞き覚えがあった。
修行を受けていた時にバーズさんから聞いた名前だ。
オールンガはこの世界のオークに当たる存在で魔獣ではなく、そういう種類の生き物である。
社会を形成し背活するというそれなりの知能を持った獣のような存在ではあるが言語や文化などは存在しない。
しかし、年間に何百人と冒険者がその手に掛けられ命を落とし、村や集落がオールンガに落とされる事件は数知れずという厄介な化け物である。
一体一帯がそれなりに強いらしく、戦力としては屈強な訓練を受けている兵士一人分にも上り、そんなのがボス個体と呼ばれるリーダーとして存在するオールンガを中心に百を超える軍団で襲ってくるという人海戦術を利用してくるという。
そんなオールンガがこんな脱出に時間がかかる場所に大量に存在しており、その軍勢が今俺たちの元に襲い掛かってきているとすれば、そりゃ、驚くだろう。
だが、俺はそれをどうとも思っていなかった。
むしろ、本当に自分の力が修行で伸びたのかを見たかった。
「…アンバーさん、逃げる準備は念のためしといてください」
俺はそれだけ言い残し、バアルの出力を上げ、超高速で軍勢へと踏み出した。
イフリートの力を発揮し刀身に灼熱の火炎を纏わせ、オールンガの間を縫い進むように一匹一匹を確実に切り裂きながら、陸上最高速度で駆け抜けた。
1秒経過。 三分の一程を撃破。
2秒経過。 三分の二程を撃破。
3秒経過。 ボス個体と思わしき、他のオールンガの二倍の大きさの個体を残し、すべて撃破。
4秒経過。 ボス個体に無数の斬撃を食らわせ、完全撃破。
5秒経過。 勢いを殺すためにオーバーラン、そして、ようやく止まる。
敵の殲滅まで五秒かけ、恐らくこの迷宮洞窟のボスに当たる存在とその他もろもろを討伐すことに成功した。
俺は止まった場所で剣を背中の鞘に納め、息を吐いて、背伸びをした。
対して、その光景を見ていたアンバーさんは目を丸くし、腰を抜かし、地面に尻餅をついて言う。
「なんだあの化け物みたいな新人冒険者は…」
その発言はある意味正解だった。
探索隊の隊長レベルの人が血の気を引くような敵に無双するなんて、確かにぶっ壊れの化け物だろう。
読んでいただきありがとうございます。
では、次回もお楽しみに!




