第十五話 チート転生のやつがほぼチートを取られたら
ギャグが少しずつ戻っていきますよ!
フードを深くかぶった人影はクライムボアを使い壊滅させた村を庇護下に置いていた国、バルバンディスだった場所に一人立っていた。
数か月前、フードの人影の仲間が横田俊祐の指示により滅ぼしたバルバンディスは元々、横田率いる解放軍に時々手を出していた国だった。
横田はその鬱陶しさに腹を立たせ、エミリー・フリッツという少女にバルバンディスを壊滅させろという命令を出した。
フリッツはその能力をいかんなく発揮し三日で一国を滅ぼした。
そして、フードの人影はその残党狩りという名目で深い交流のある村や街を破壊して回る役割を全うしていた。
「なんで、私、こんなことやってるんだろう…」
そんなことを小さな声で呟いて、足元にあった小石程度の瓦礫を蹴飛ばした。
俺こと吉田英斗は絵面が強い神様にチート能力特典を添付され異世界転生させられ、さらに成行きでバーズさんの元で修行することになった、まる。
修行六十日目。
「大分、腕も上げたようだな。ならば、エイトの魔剣と鎧は使わずに、俺が選んだ剣と鎧で実戦でもするか」
今朝のバースさんのそんな一言で俺はイフリートなし、バアルなし、残るチート特典は三段階に進化する力とめっちゃ丈夫な体と何でも使い方が解っちゃう超絶感覚の三つでクエストに挑むことになった。
もっと言えば三段階に進化する力はこの前進化してしまったため、短いスパンで自分が進化できるとは思っていない、そのため、実質使用可能のチート特典は二つとなる。
この残り二つになると、とうとう単純に物分かりのいい、タフな奴になってしまう。
だが、バースさんは恐らく、素の状態で装備の力を借りずにどこまでやれるのかを確認したいのだろうという事は言わずともわかった。
だが、前日から言ってほしかった。
弟子入りしてからと言うもの、クエストを受ける度に緊張してしまうのだ。
本当にドッキリのノリでクエストに行くのはやめて欲しい。
そんな感情を抱きながら、内容を聞かされずにクエスト先に向かった俺は唖然とした。
馬車で長い間揺られ、少しずつ気温が高くいなっているなと感じつつも、いつまでたっても外の景色を隔てるカーテンを開けてもらえず不安を募らせていると、馬車が止まり、嫌な予感が的中したのだ。
目の前に広がるのは、マグマだった。
そして、俺はどこに連れてこられたのか理解した。
そう、火口だ。
火山の火口だ。
マグマがブシャアするところだった。
その光景を見てドン引きする俺にイフはフォローをするように手をわちゃわちゃと動かしながらこう弁明した。
「ご主人様、アレ、私普通にお風呂感覚で入れるところですよ!悪い所じゃないので、顔を青くするのはやめてください!」
さすがに頑丈と言っても多分、風呂にはできないよ。
風呂にしてたのは元々、イフが火炎を操る堕天した悪魔だからでしょうが。
そんなツッコミを心のしつつも、思う。
確かに、悪い所ではない、と。
開けた地形でありながらそれなりに段差があり、隠れながら戦うのも良し、正々堂々と真正面で戦うのも良し、それなりに言い地形ではないだろうか。
ただ頭がおかしくなるくらい熱いのを除けば。
「エイト、これを君にやろう」
バースさんは呆然とする俺に五本のビンを見せ、それをポーチにいれ、そのポーチをくれた。
「それは耐熱ポーションだ。熱に対して、人体が引き起こしてしまう弊害を一定時間完全にクリアできる代物だ。効力は一時間だぞ」
NPCよろしく、バーズさんの分かりやすい説明を聞き、ポーチを受け取り、「ありがとうございます」と感謝を口にした。
それと同時に、上空から怪音が鳴っていることに気付く。
それは風の音の様で、そうではない。
まるで鳥のような、そんな音が聞こえた。
そして、俺とイフとバーズさんは同時に上を見ると、上空には火口を中心にグルグルと円を書き旋回する一つの超巨大な影。
そしてバーズさんは口を開く。
「今回のクエストターゲットがお出ましだ」
どうやら、あれが今日のターゲットらしい。
「あれはな、ルフレアコンド、大きな翼と足の爪の先から分泌される麻痺毒が特徴の鳥型魔獣だ。倒せたら、嘴が戦利品になるぞ」
バーズさんは淡々と説明し、言い終わると、
「ひゅうぅぅううううぅッ!」
再びあの、怪音もとい、鳴き声を響かせながらルフレアコンドは急下降し始めた。
見た感じの方向から、こっちの方に向かってきていた。
こっちに向かってきている!?
驚きと共に全力でその場から逃げるとバジュンッ、ととんでもない音を立てて、岩石の地面に切り込みのような傷を残した。
「どんな鋭利な攻撃だよ…」
そんな俺の感想なんて聞いてはいないバーズさんはイフをさっと小脇に抱え、
「ちなみにルフレアコンドの倒し方だが、奴の背中に乗ると入れ食い状態に出来るから、頑張れ!」
そんな言葉を残して、滑りながら下山した。
「ご主人様ぁ!頑張ってくださいいいぃぃぃぃぃ……」
イフの応援がドップラー効果を起こすくらいのダイナミックスピード下山に俺は苦笑いをしながら、バーズさんが選んだ、最低限の出来るだけ身軽になっている防具とバーズさんが貸してくれた、バーズさんが下積み時代に使っていた剣でどうやって勝てばいいか、そんなことをかんがえながら、剣を構えた。
「確か、背中に乗ると楽って言ってたな」
アドバイスを復唱して、ポーチからポーションを取り出し、一本キメると俺は大声で走り出した。
「俺が餌になりきって、乗ってやらぁぁぁぁああああああああ!!!!」
チートをほぼ奪われたチート転生者はこの日、一日だけだが。
鳥の餌になりきった。
読んでいただきありがとうございます。
では、次回もお楽しみに!




