第十四話 力試しは度胸試し(後編)
前半の続き。
バーズさんが説明した狩りの内容を簡単に説明する。
まず、クライムボアの好物であるバルンマッシュルームというキノコを用意します。
次に目標の地点に大量のバルンマッシュルームを入れたケースを用意し待ちます。
数時間待ちます。
ほぼ確実に引っ掛かります。
あとはボコるだけ。
ね、簡単でしょ?
だがしかし、実際やるとなり、罠設置から数時間、罠周辺で隠れて待っているが、全く来る気配がない。
「…いつになったら来るんだろ」
人型の姿でいたイフがぼそっと呟いた。
ほんとごもっともです。
辺りは夜の闇に包まれ、星の光すらも木々が隠し、闇を一層と深くしていた。
灯りは点けず、待ち続ける。
それをただ継続して、その時が来た。
「ぅるるるるるるるるるるる…」
そんな唸り声と共に見た感じで5mはすでに越しているクライムボアが現れた。
ごわごわとした毛皮には大量な木片が引っ掛かっており、それが破壊された村の住宅の一部だという事がすぐに分かった。
「そんじゃ、エイト、こいつの倒し方を簡単に教える。あいつは突進したら何かにぶつかるまでは止まらない。だから、ギリギリまで奴を引き付けて避けて、攻撃しろ。あと、突進の速度はとんでもなく早いから、要注意だ」
バーズさんはその光景を眺めながら、アドバイスを一つ。
アドバイスを聞き終えた直後、罠の餌を食い始めたクライムボアを尻目に、イフはイフリートに姿を変え、俺はその柄を強く握った。
それと同時に鎧を召喚し、超高速で移動し、斬撃をクライムボアに一閃。
「ぶぃるるるるるるるッ!?」
突然の攻撃に悲鳴を挙げながらクライムボアはこちらに頭を向け、後ろ足で地面を蹴って、後方に砂と土をまき散らし始めた。
一回、二回、三回、四回、五回。
そして六回目の蹴り込みで猪突猛進。
一筋の残像を残しながら走り寄る。
「あぶねっ!」
そんな声を挙げながら、俺はクライムボアの超高速突進を越す速度で避ける。
そして、俺が元いた場所の背後にあった木にクライムボアが衝突する。
確かに、衝突でクライムボアは止まるのだが。
ぱぁん!!
弾けるように木が砕けた。
「嘘だろ…?」
俺はその木の弾け具合を見て、愕然とする。
こんなの受けたら死ぬやん。
でも寄せ付けないと攻撃ができない。
最初は止まって、突進の為のエネルギーをためる時間があって、なんてゲーム的なものを想像していたが、創造物は創造物、クライムボアは生である。
一度止まってから、突進に移るまでがメッチャ早い。
アタック&リリース。
これが出来なければ死ぬ。
それが目に見えた。
一度目は逃げることだけに専念したせいで、攻撃することはできなかったが、二回目。
再び俺はクライムボアの突進を避け、弾け飛ぶ木を眺めながら、急停止したクライムボアに斬撃を三発。
そして、距離をとって逃げる。
そしてそれを繰り返し。
「おらぁ!!!!!!!」
最後の一撃を確信した雄叫びと共にクライムボアに向けた斬撃。
そして、斬撃を受けたクライムボアは二本の牙を残して、消滅した。
翌朝、戦利品の牙をもって村へ戻ると、村長が戦利品の牙を見て、バーズさんの元に掛け寄った。
「団長様、ありがとうございます!これで私達が…」
「…私はその言葉を受け取ることができない。実はな、クライムボアを倒したのは隣にいる、この少年、私の弟子だ。お礼なら彼に言ってくれ」
感謝を言いかけた村長の言葉を遮り、俺にと、感謝の言葉を譲ってくれた。
そして、村長は俺に向き直し、感謝の言葉をくれた。
その言葉は心が温かくなるような、そんな感じがした。
クエストの報酬をギルドでクライムボアの牙と引き換えにもらい、バーズさん宅に戻り、借りている部屋の中でイフとこんな話をした。
「どうでしたか?」
「どうだったって、抽象的な質問をして来るなぁ」
「しかし、聞き方が解らなかったので」
「あはは、そっか。そうだなぁ、お話したい奴がやばいことやってるって事と、人助けをして面と向かって感謝されるのはいい気分だ」
「それは良かったです」
ベッドに座る俺をイフは後ろから抱き締めて来た。
「疲れましたか?」
子供の暖かい体温で俺の身体を包みながら、イフはそんなことを囁きながら聞いてきた。
「チート特典があるからな、大丈夫だと思うよ」
「そうですか。…じゃあ、少しだけよろしいですか?」
俺の答えに相槌をイフは打った後、俺に向けた質問をし、その答えなんか聞かないでイフはグーっと俺に体重をかけて来た。
「おわ」
そんな情けない声を挙げ少し、体は前傾する。
そして、俺は訊いた。
そこからまた会話が続いていく。
「いきなり、どうしたんだ?」
「最近かまってもらえませんでした。なので、チョットだけ人はだが恋しくなったのです」
「そっか」
「そうなのです。最近のご主人様はバーズ様との修行ですぐ寝てしまうので、寂しさを覚えておりました」
「ごめんな。あと、気を使って、見てるだけで留めているのは知ってたよ、ありがとう」
「こちらこそ、ありがたきお言葉をいただき、大変喜ばしく思います」
そう言って、イフはニコリと笑った。
夢の中。
俺は交通事故の現場にいた。
目の前にはひしゃげた車。
目線を落とせば片手が車残骸からはみ出るように伸びていて、そこから血が拡がっていった。
いつもの夢だ。
またリフレインしてる。
俺はまだ忘れてはいけない。
ちょっとの善行でこんな自分は許されるわけでもなければ、存在を許されたわけでもない。
俺は償うためにやっているのではない。
俺は自分の価値が何なのか見定めたいだけなんだ。
読んでいただきありがとうございます。
今回は今作初の前後編でした。
一応、これでもカットしまくった方なんですが本当は三話分を予想していました。
ですが、この作品の勢いが損なうという判断で現在の形になりました。
今回はバーズさんがすごい喋っています。
そして、久しぶりにイフが長尺で話しています。
割とイフの会話が久しぶり過ぎて、会話の調子や、感覚を忘れるという事故が書いている途中に発生するということがありました。
と言う訳で、やけに長いあとがきはここまで!
では、次回もお楽しみに!




