表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/58

8、復讐者の休息

自分じゃない自分がいることに戸惑いながらも歩みを進める復讐者。


しかしその裏では予想外な計画が進んでいた。

 

 出発した村を出てから3日目の早朝、無事に目的地、ウェザリンシティに着くことができた。


「到着っと、さてまず何をする?」


「お風呂。」


「同感、流石に3日も入らないと気持ち悪い。」


 お互い毎日風呂に入れたことが抜けず3日間ずっと気持ち悪さをこらえていたため満場一致で銭湯に向かう。


 風呂場で使うものはその場で購入できるようで不自由なく入れそうだ。


 早速脱衣所で服を脱ぎ、浴場へ入る。


 思っていたよりもでかく昼にもかかわらず十数人はいる。


 そういえばしばらく旅行していなかったのでこんなでかいところに来るのは数年振りになる。


 前世の懐かしい記憶に浸りながら、このまま湯へダイブ、と行きたいがまず先にこの溜まった汚れを洗い流すのが礼儀、転ばぬよう気をつけながら洗い場に行く。


 その途中で赤髪の男と鉢合わせる形になり、お互い譲ろうとするがばったり重なってしまう。


「あ、すいません。」


「いえ、こちらこそ。」


 さらに譲ろうと動くがまたもや重なる。


 少し気まずくなりつつも再度譲るが何度譲っても重なってしまう。


 なぜかお互いにムキなりしまいには反復横跳びをやり合い、もはや道を譲らない体制。


 最後は動きを見切り動き出した相手を俺が転ばせる形でこの勝負には決着がついた。


 何なんだこいつは。やけに負けず嫌いだしスペック高いし。もしかして転移者かこいつ?だとしたら少しまずいか?全て見られてるわけだし、追われるとだいぶ面倒だ。


「いってぇ〜何様のつもりだおまえ!人が譲ってるのに通ろうとしないなんて!」


 起き上がるなり唐突にキレて来る。まぁ、しょうがないことだとは思うが。


「おまえだって同じだろ、俺が譲ったのに通らなかった、おあいこだ。」


「どこがだよ!俺はこけてるのにおまえは無傷なんておかしいだろ!?」


「静かにしろ、人が見てる。」


「くっ〜、覚えてろよ!あとでコテンパンにしてやるからな!」


 捨て台詞を吐いてせかせかと浴槽に歩いていった。


 そんな捨て台詞を吐かなくとも、後々みっちり叩き潰してやる。


 そう思いながらシャワーの蛇口をひねる。


 ーーーーーーーーーー


 一風呂浴び、清々しい気持ちで脱衣所を出る。


 さっぱりしたのはいいが風呂から上がるとあれが欲しくなる。


 そう、牛乳だ。


 ここは気が利いており、冷やされた牛乳が置かれている。


 正直異世界であることを疑うほどに色々と充実しているがまぁ気にしない。最後の一本に手を伸ばす。


「おっとこれは俺のものなんだ、悪いがまたにしてくれ。」


 先程すっこけた赤髪の野郎が割り込み、瓶を持っている手ごと掴む。


「買ってないのに自分のもの扱いか?全くふざけてるのにもほどがあるな。」


「あ?人に怪我させといて謝罪もなく、しかもこんな贅沢するなんて許せるわけないだろ?」


 割るつもりかと思うほどより強く瓶を掴み奪おうとするのでこちらも割らないように気をつけながら強く握る。


「これより悪質なことしてるやつなんて世界にごまんといるだろ、こんぐらいでキレるなよお子様が。」


「人に迷惑かけたら謝罪とお詫びの品を送るって親に教えられなかったんですか?」


「教わらなかったし、もういねぇよそんな親!」


「それは不運でしたね!そんなことよりさっさと寄越せ!」


「誰がやるか、これは俺のだ!!」


 お互いいがみ合い一向に改善に向かわない。


 そのまま拮抗していると後ろから飛んできた拳で赤髪の頭が下を向く。


 そこでようやく瓶を離し頭をさするように抱えた。


「こら、そんなことで揉めない。ごめんなさい、このバカがまた何か迷惑をかけたようで。」


「いや、今回は悪いのこいつだからな!」


「じゃあどんな風に悪いのよ言ってみなさい。」


 赤髪は殴った青髪のポニテ女子と口論が始めた。ま、牛乳を手に入れたのでいいのだが。


「また問題起こしてる。」


 いつの間にかひょっこり予見者が現れる。


「今回は偶然だよ、起こそうとして起こしてるわけじゃない。」


 腰に手を当て一気に飲み干す。向こうと比べると劣るがまぁ悪くはないだろう、新しい味だ。


「それにまだ確定したわけじゃないし。」


「二人とも転移者だよ。」


 切り返すような勢いですぐさま返答が帰ってきた。どうやらスキルが無くなっても勘は働くらしい。


「また勘ってやつか、でどうだ?あいつらとはうまくやれそうか?」


「別に、悪くない人だと思う。」


「そか、じゃあここでお別れだな。」


 予見者は驚いたようにこちらを振り返る。


「なんでそういうことになるの?」


「俺は復讐者だ、あいつらから恨まれても仕方ない、だがそれに余計な奴まで巻き込みたくないだけだ。」


「ん……わかった。」


 納得できないと言うような間があったが納得してもらわなければならないことだ。深くは言及しない。


「んじゃ目星もつきましたし、復讐開始と行きますか。」


 頭を切り替え心を落ち着かせる。


 あいつらは俺の敵、あいつらが俺から幸せを奪った、だから、殺してでも奪い返さなきゃいけない。


 憎しみで心を満たし、冷えた頭で獲物をどう追い詰めるか思考する。


 この時すでに第三者の手が回っていることに気づかずに。

日常の自分を全て仮面の下に押し込み、目標一点に集中させる。


目標の2人はどのように殺意に答えるのか。


次回、「復讐者のジレンマ/予見者の買い物」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ