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41、全面衝突

 

 平地だった街の大門前はさまざまな魔法を駆使して作られた壁や柵で鉄壁とも言える守りが作られていた


 豪勢な守りに似合わぬ、森のさざめきを聞くような一種の緊張感と興奮が入り混じった複雑で、繊細な空気が時間とともに流れる


 そんな永遠にも思えるような時間を破ったのは遠くから徐々に、徐々に近付く地鳴りだった


 聞いた者達は再度、それぞれに緊張を体現する


 喉を鳴らす者、笑みをこぼす者、強く武器を握り直す者、深く息を吐き出す者、カタカタと音を鳴らす者


 どんな事を思っていたとしても今この場にいる者すべてに平等に訪れる最初で最後の指示


「戦闘開始!!」


 その大号令と共に後衛部隊である魔法部隊が一斉に己の得意とする魔法を撃つ


 狙いどうりに当たるものもあった、外れて地面を抉るだけのものもあった。しかし、今ここに勝負の始まりは告げられた


 駆け出す武器を持つ者たち。その足取りはバラバラで、でも想いは一つ


 この街を守りたい


 想いがあるから、恐怖も不安もかき消して一歩を踏み出し続けられる


 最初に始まった戦闘は速さに特化した騎竜兵と翼の生えた上位ドラゴノイドだった


 たった今人類史に残るほどの大戦が今始まる


「先もらうわね。」


 竜王は巨体を持つ竜ベヒモスの上に立ち、同等の体躯のレヴィアタンに乗るネプチューンに一言声を掛ける


「どーぞご勝手に、こっちもこっちで好きにやってるから。」


 ネプチューンが槍を掲げる


 すると空の端から救いを求めるかのように真っ黒な雨雲が集い豪雨となって地上に降り注ぐ


「ちょっと、火が消えるじゃない!?」


「知るかよ!野郎ども!先越された分きっちり殺して来いよ!!」


 雨の恵みを受けた海王軍は水中での活気を取り戻し、まるで空を泳ぐように力強く飛び出す


「陸で海の奴らに負けるんじゃないよ!」


 強い雨のぬかるみに負けず、竜王軍も飛び出した


 戦いの閃光は数を増していく


「グシャァァァァァァ!!」


「っっ!!」


「「絶対防御」!!」


 魔物に襲われた仲間を護るため、己のスキルを滑り込ませるように使用すると標的は硬い音を立てて透明な壁に激突した


「「絶対貫通」!!」


 守護者の槍が光を纏い、光線のように鋭く突き出され一度に複数の魔物を貫く


 守護者と裁断者が開いた深化の扉、それは愛の扉でありその力はお互いのスキルを共有する力である


「すまねぇ!転移者様!」


「1人で戦おうとするな!複数で1体を相手しろ!残りは俺たちがフォローするから気にするな!」


 力があるものとして、必死にみんなを守ろうと周囲を見渡しスキルを駆使して確実に殺していく


「張り切ってるね。」


 裁断者が近付き背中越しに話す


「そう言ってるそっちも随分と楽しそうじゃん?」


 真面目な顔をしつつも冗談を言う余裕はあるようだ


 前線で戦う2人に向かい走り込む数十という魔物に一筋の灼熱の光が落ちる


 味方を巻き込まぬよう高威力ながらも的確に放たれた一撃は狙いどうりの範囲を消し炭にした


「こんな芸当見せられたらこっちも負けてられないな!」


「当たり前でしょ!」


 互いの合図で再び果てしなく感じる終わりへと走り出す


 ーーーーーーーーーー


 戦闘が始まってから何時間が経ったのだろう。犠牲を伴いながらも確実に敵の数は減ってきている


 だが肝心のあの2体は動かず、じっと戦場を眺める


「んー…やっぱり楽しめそうなのは転移者 ぐらいだなぁ。」


「ぐらい?もしかして遊ぼうとしてた?」


 目的とは別に無駄な戦闘をしようとしたネプチューンを鋭い目つきで睨む


「そんな本気にすんなよ、最初からそんな奴らが相手になるなんて思っちゃいねぇ。」


 大きく一つ伸びをしてポキポキと肩を鳴らす


「行くか!あ、転移者を多く倒した方が上だからな、忘れんなよ!」


「夢を見るなら今の内にしておくことね!」


 今まで高みからの傍観を続けていた幹部の2体がその身を地面に落とし、地面を蹴る


 これで舞台づくりは整った。終焉の為の役者は残り一つ


 しかし肝心の男はまだその時では無いと、静かに佇むだけ

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