2、復讐者再び
最初の敵、雷操者を倒した復讐者。
そして次に向かう先は。
暗い森の中をひたすらに走る。
未来視を使い、襲い来る攻撃を的確にかわす。
森の奥から首謀者が現れ、視線が交差する。
その瞳に見たのは人を殺すことをなんとも思っていない様な冷たい物だった。
「我が名は復讐者……こっからは言わなくてもわかるよな?」
「えぇ…裁けるのなら。」
杖を構え、無詠唱でいくつもの魔法陣を出し火球を放つ。
相手は避けることは無駄と知っているのか腕で身を隠す程度しか動かない。
「ふぅ、割と効いたぜ、つっても少しだけな?」
「知ってる、これからなにするかも。」
それを聞いた男はつまらないと言うように、両の手に突如現れた赤い剣を持ち、襲いかかる。
流れる様に繰り出される二本の剣戟を未来を読む力、未来視と得意の棒術を使い捌いていく。
「ほぉ、やるねぇ。どうやらちゃんと鍛えてるみたいだな。」
「自分の力を過信するイキリじゃない。このぐらい努力して当たり前。」
「んじゃこれならどうだ?」
二本の剣は形を崩し一つにまとめると分銅のついた鎌に変わる。
「鎖鎌って奴だ、洒落てるだろ?」
「その力もなかなか洒落てる。」
左で勢いよく音を立てて振り回される分銅で杖を奪われては、接近戦はもちろん魔術も使えず一方的なものになってしまい、戦いどころではない。
ならば遠距離で戦うのが良いか。
「「アイス・ヘルストーム」!」
火球を出した魔法陣とは比べ物にならない大きさのものを敵の頭上にいくつも出現させ、大きな氷柱を相手に向け落とす。
「おーおー、こいつぁ厳しいな。」
そう口では言いつつも未来視どうりにするり、いやぬるりと避けられた。
「その化け物じみた動きやめてよ。「サンドウェーブ」」
男の足元は魔法の力で緩み、情けない姿で穴に落ちる。
「これで決める、「エクスプロージョン」」
力を穴の中一点に集中させて放ち、相手を跡形もなく消し炭に変えてしまうような業火を浴びせる。
「もう少し骨があるかと思ったけど、こんなものか。」
なぜか転生時にもらったチートスキルは転生者同士では力が弱まる様で、未来視も次の動きは読めても、最終的な未来を見る様なことはできなかった。
この地の肥やしとなった今は関係ないことだが。
町を守るためとはいえ随分と遠ざかってしまった。
「ここから戻るとなるともう随分といい時間だ、とでも思ってるのか?」
「え?」
ぼこりと地面が盛り上がり土に汚れた黒コートが目の前に現れる。
「ったくよ、お前ら毎度毎度コートを汚しやがって……割と高いんだぜこれ?」
「あなたモグラ?」
「そんな風に呼ばれるのは初めてだよ。」
両者は再び睨み合う。
「でも武器の無いあなたが同じ転生者の私を倒すのは難しい。さっさと消えて。」
「お?よく俺が同郷だってわかったな、理由は?」
「勘ってやつ。」
男は嬉しそうに笑う。
「ははっ、じゃあ一つ代わりに教えてやるよ。俺の力は特別でね、お前ら転生者に対してはよーく効くんだよ。」
そう言うと右腕が赤く発光し、杭打ちの様な武器をつける。
「パイルバンカー………」
未来視を使う、しかし未来どころかどう動くすらも見えない。
「「プロテクト」!」
「インパクト!!」
強固に貼られたプロテクトに杭が打ち込まれ、木っ端微塵に砕け散る。
「…!私のプロテクトが……!?」
「そら、もう一発!」
左腕にも杭打ちが現れ私の腹を狙う。
「チェックメイトだ……インパクト!」
抵抗もできず、形を持った痛みが体を貫いた。
戦いを終えた復讐者は一体何を思うのか。
次回、復讐者の災難