13、予見者の疑念
守護者との戦闘に辛うじて勝利した復讐者。
ボロボロの体を引きずり行くあても無く彷徨う。
そんな中、1人取り残される予見者は何を思うのか。
傷ついた体のまま、何かから逃げるようにふらふらと人気の無い方へと歩いていくと、スラム街と思わしき所に着いた。
正直、どこをどう歩いて来れたかはわからない。
だが身を隠すにはちょうどいい場所と、崩れた廃墟に入り壁に背中をもたれる。
しばらく休憩し呼吸が落ち着いたところで受けた怪我を確認する。
擦り傷、打撲は多数あり、左腕と右手、左頬にヒビ、肋骨に至っては数本折れている。
ほんと転移者と素手でタイマンなんて張るんじゃなかった、てかなんでああなったんだっけ?しばらく考えるが痛みとまだぼんやりとしている意識のせいで思考がまとまらない。
それよりも今は休憩することが先決と、冷たい地面の上で寝る。
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バサバサとカーテンがうるさくはためく寝室に一人取り残される。
倒れた家具のとなりに中身の入った紙袋が無造作に落ちていた。
拾って中を確かめる。
特に傷は特になかったのだが、袋の折り目からして一度も付けてすらいないだろう。
その事が何度も胸をチクリと刺す。
悲しいと思うが、普段感じている悲しみとは違う悲しみ。
しかし悲しんでばかりもいられない、今日のことをあいつに聞かなければ。
揺れる心を一つの目標で落ち着ける。
仮面を荷物に入れ、守護者の元に行った裁断者を追って、騒がしい路地に降りた。
「守護者!守護者!!」
降りてすぐに目に入ったのは崩れた店に群がる人とその中心で守護者に声をかける裁断者の姿だった。
「少し、どいてて。」
杖を横になっている守護者に傾け、呪文を唱える。
「「エクス・キュア」。」
回復魔法を唱えるとみるみる傷はふさがり苦しそうだった息は安定し、安らかな寝顔を見せる。
でも少し妙だ。普通回復魔法、それも最上位の物を受けたらすぐに目を覚ますのに今回は寝たままピクリとも動かず、揺すっても反応はない。
もう一度回復魔法を唱えるが、それでもやはり起きない。
「予見者、なんで守護者は起きないの?回復魔法使ったら普通起きるよね?」
「わからない、多分復讐者のスキルのせいかもしれない。」
「いつ起きるんだろう…」
「それもわからない。私の時は昼近くに起きた。」
「そう…とりあえず運びましょう。手伝ってくれる?」
コクリと頷いて二人で守護者を担ぎ宿のベットに寝かせる。
「これでよし、じゃあ私は窓のこととか謝りに行ってくるから、あとよろしくね。」
笑顔ではあった、不安を含んだ優しくも悲しい笑顔。
守護者を心配している事がよくわかるような、そんな顔だった。
明日起きた時には守護者のスキルは消え、普通の強いギルドの冒険者になっているのだろう。
そうなったら彼らはどんな顔をするのだろう、さっきみたいな悲しい顔をするのだろうか、それとも安堵した笑顔を見せるのだろうか、また復讐者と戦いに行くのだろうか。
どちらにせよ早く目覚めて欲しいことは確かだった。
守護者の目覚めをただ待つことしかできない裁断者に少しづつ復讐者への負の感情募って行く。
そしてやっと目覚めた守護者だったが、その様子はなんだか今までとは違っていて……
次回、「災い」