表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/58

12、復讐者の夢

体に異常を抱えつつも戦い続ける復讐者の本心とは?


そして予見者の望みは叶うのだろうか。


 大きな力を感じ、パチリと目を見開く。


 守護者と裁断者が戻って来たと思い布団から抜け出す。


 起きた時には右手の震えは止まり、自由に動かせる。


 ここで待っていればおそらく予見者の様子を見に来るだろう。


 寝たことによって硬くなった体を軽く体を動かし、ほぐす。


 ガチャリと扉が開き人が入り、予見者と会話を始めた。


 壁越しのためこもった声で良く聞こえないが親しげに話しかけられて居る様だ。


 聞き耳を立てて居ると足音はこちらに向かいバンと強く扉が開け放たれる。


 なぜかはわからないが凄い形相をしている。


「やっぱりいたか復讐者リベンジャー。」


「その様子だと無事に終わったみたいだな、町にも被害はないし、よかったじゃないか。」


「お前、なんのために復讐してんだ?」


 やはり聞く耳は無いようで質問で返される。


「自分のために決まってるだろ?なんで他人のために復讐しなきゃいけない?」


「じゃあ予見者に余計なことしなくても良かっただろ、なんでしたんだ?本当はお前復讐したい訳じゃないんだろ?」


「なんでそうなんだよ、俺だって常に復讐のことばっか考えてるわけじゃねぇ。」


「だったら!ちゃんと彼女のことを考えてやれよ!」


「だから、考えた結果がこれなんだよ!」


 互いの視線がバチリと交差する。


「お前、表でろよ。」


「なんでそうすぐに力技で、ぐあっ!」


 守護者の左の頬にまっすぐと拳を叩きつけ、相手は床に倒れる。


「悪いが俺は理屈で生きて行けるほど強くはないんだよ。」


「じゃあお前は何で生きてるんだよ!」


「教えてやるから表に出ろってんだよ!」


「お前が先にな!」


 立ち上がる勢いで今度はこちらが殴られる。


 かなりの力で殴られたため内装をひっくり返しながら、窓を破り飛び出す。


 空中で態勢を立て直し、地面を削りながら着地する。


 割れた窓を見上げると人影が俺をめがけて足を伸ばして落ちて来る。


 その足を掴み地面に叩きつける。


 土埃が上がり、周りがどよめいたが何をしているかわかったようで、俺を中心に円を作る。


「やりたくないならもうやらなくて良いだ、ろ!」


 台詞を吐きながら巻き上がる埃の中から飛び出した右ストレートが硬い音を立てて頬を打つ。


「なんでそういう話になってんだよ!」


 こちらも殴り返す。


「予見者の話を聞く限りお前が悪い奴とは思えない!正直になれよ!」


 再び拳を俺に向けて来る。


「俺はいつも正直だ!」


 腹に一発強い蹴りと、顔にもう一度フックを食らわせる。


「じゃ、なんでしてんだよ!」


 腹を抑え苦しそうにそうにしながらも、諦めず説得しようとする姿に腹が立つ。


「じゃあ聞くが!お前は、前世(向こう)でカエルを刺し殺したことはあるか?クマを殺したことはあるか?龍を殺したことはあるか!!」


「何バカなこと言ってんだ、ある訳ねぇだろ!」


「そうだろ!だがこっちじゃ普通に殺せる!前世(向こう)じゃ出来なかったことができる!」


「だったらなんだ!何が言いたい!」


「わかんねぇのか!?この世界は夢なんだよ!思い通りに努力をしないで全てが解決する!」


「それで良いじゃねぇか!辛いことなんて無い方がいい!」


「いい訳ねぇ!それじゃ、前世(向こう)の俺が報われねぇ。」


「そうか、だったらずっとそうやって前世に囚われ続けてろ!俺たちは前に進む、たとえ自分が変わっても!」


 一つ息を吐き、強く睨む。


「強いな、お前は。」


 何も言わず相手は構え、こちらも強く拳を握りしめる。


「はぁっ!」


 姿勢を低くし走り込んで来るところ、少しは対人戦闘に慣れてる。


 顔を狙っての一撃は腕で受けるが腹への一撃は見切れず、相手の腹が俺の腹に沈む。


 痛みをこらえる一瞬の隙を見逃さ無かったように蹴りが脇腹を捉え、ミシリと音を立てて向かいの壁まで蹴り飛ばされる。


 多分今のは肋骨が折れた音だろう。


「うがぁぁぁぁ!!!」


 勢いよく飛び出し大きく拳を高く上げる振りをする。


 相手はそれに引っかかり守るために腕を顔の前に持っていくのを見て、素早く切り返しガラ空きの体に上げた拳とは逆の拳で腹を突く。


 よろめいたところに蹴りを入れ返し、蹴り飛ばした先の店の壁を打ち破って派手に倒れる。


「さっきの、俺の必殺技だったんだけどな。」


「いいからさっさと立てよ、それともこのまま俺に倒されるか?」


「いや、次で最後にしよう。」


 立ち上がると強く拳を握りしめ、絶対防御を片腕にまとう。


 スキルの硬さを利用して威力を上げると言った感じか。


 こちらも痛みを腕に集中させる。


 二人だけの一瞬の静寂の後、ほぼ同時に踏み込み、伸ばした手がお互いの顔を捉える。


 武器となったバリアの衝撃が脳を、全身を揺らすが、ギリギリのところで踏み止まり、心の中でインパクトと唱える。


 腕に集中していた痛みは弾け、守護者は目を白黒させ、その場に崩れ落ちた。


 今、ここに勝敗は決した。


 だが今はそのことよりも激しく乱れた呼吸が痛みを生み出し、薄れた意識をより一層薄くさせ、何も考えることができない。


「守護者!!」


 裁断者がこちらへ走り近づいて来るのを逃げるようにして街の外に向かう。

騒然となった街から逃げるように、復讐者は僅かな体力で走る。


……1人宿に取り残される予見者。


2人の行き違いはどこまで行ってしまうのか。


次回、「予見者の疑念」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ