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11、復讐者の代償

お互いの闘志が交わる中、予想外にもジェネラルオーガの一軍が横槍を入れる。


オーガのお迎えとは、この三つ巴の戦いの結末とは、何処に転がるのだろうか。

 

「お迎えって、どういうことだよ。」


 不機嫌そうに語尾を強め復讐者リベンジャーは問いかけた


「そう警戒なさらないでください、我々は貴方様の復讐を手助けしようと思い、馳せ参じたのです。」


「そうか、それは残念だったな。」


 コートの中からトンファーを取り出しオーガに振り向く。


「俺の復讐対象にもれなくお前らも含まれてんだよ、だから死んでくれ。」


「そうですか、ならば力ずくと行きましょう!」


 合図にしたように敵軍は一気に駆け出す。


 オーバーな動きで金棒を振り下ろされるが、しっかりと受け止め、粉々に打ち砕く。


「鬼が金棒をなくしたらどうなるか、教えてくれるか?」


「たっぷりと教えてあげましょう、オーガの真の力を。」


 手の中で作られた魔法陣の中で黒い火炎が段々と大きくなっていく。


「「ダークネス・フルフレイム」!」


 最大まで膨れたと思われる火球が手から飛び出し俺のもとに向かってくる。


 当然だがノーモーションで受ける。


 威力としては転移者どもにだいぶ劣るがそれなりに力は溜まった。


「おいお前ら、雑魚よけ頼んだぜ。」


「もうやってんだけど!」


 今度は裁断者も武器を取りスパスパと魔物を切り裂いている。


「あっそ、お疲れ様。じゃ、俺はそろそろお暇しますか。」


 叩きつけられるオーガの手を払いのけ、受けた痛みを全て右拳に集中させる。


「インパクト!!」


 痛みの力が衝撃となり、トンファーを伝ってオーガの全身を震わせると、風船のように派手に内臓やら血飛沫やらを撒き散らし肉片へと化した。


「きったねぇなぁ…まぁいい、邪魔者は消えたしお前らもさっさと終わらせて戻ってこいよ。」


「あ!テメェ帰んな!手伝ってからって、うぉっとぉ!」


 下っ端のオーガの金棒をギリギリ盾で受ける。


「戦闘中はよそ見するな、じゃあな。」


 町に向かい戦場から走り去る。


 あいつらのことだ、あのぐらい問題ではないだろう。


 あるとするならば、俺自身だな。


 ーーーーーーーーーー


「ただいまっと、ったく毎度毎度汚しやがって、汚される身にもなってみろって。」


「おっお帰り…」


 不自然におどおどとした態度で出迎えられ、思いっきり違和感を感じる。


「ん?どうした、何かあったか。」


「いや、なんでも、ない。」


 今の返答だってロボットのように凄くぎこちなく、知らない人が見ても明らかに何かあることなどバレバレである。


 反応を見なくても全てを見ていたので何をしたいのかわかってはいるが少し悪戯を仕掛けてみる。


「そうか、んじゃ先休んでるから二人来たら起こしてくれ。」


 寝室のある部屋に行こうとすると椅子から立ち上がり、止めようと手を出したがあと一歩というところで躊躇する。


「ん?どうした、何かついてるか?」


「あ、んと、そうじゃなくて。」


 次第に顔が赤くなり、最後は耳まで真っ赤になって俯いてしまう。


 ただ置くだけで済ませた俺と違いきちんと渡そうと頑張っている姿がたまらなく愛おしい。


 第三者がいたならきっと誰だろうと背中を押してしまうほどに今の彼女は必死に頑張っていた。


「わっ、渡したいものが、ある。」



 最後の方はとても小さい声で言われたのであまり聞き取れなかったが意地悪した甲斐もあったし、そろそろ相手に合わせてやろう。


「なんだよ渡したいものって。」


 俯いたままぼそりと何か言って紙袋を差し出され、それを左手で受け取る。


「これか、渡したいものって。餞別として受け取って置くよ。」


「え?餞別ってどういうこと?」


 真っ赤だった顔色は言ったことを理解して来たのか次第に元の色、それよりも少し青色に近いだろう。


「前も言っただろ、お前はあいつらについて行け、その方がいい。」


「良くない、なんでそんなこと?」


「お前、誰と一緒にいるのかわかってるのか?俺は復讐者リベンジャー、ほかの転移者の敵だ。そんな奴と一緒に居る奴が信用される訳がないだろ?」


 覚悟を決めた様にしっかりとした目つきで俺を見つめる。


「わかってる、でも私はそれでも構わない。例え復讐者リベンジャー以外仲間がいなくなっても。」


「良いわけねぇだろ!?お前らは何しにここに来たんだ?救いに来たんだろ、お前のワガママでここの人たちを見捨てんのか?」


 考えを変えない予見者に腹が立ち、苛立ちを前面に押し出す。


「そうなっても構わない。私は復讐者リベンジャーの隣にいれれば。」


「不幸になってもか!」


「そんな事ない、私はあなたと一緒にいる時が一番幸せ。」


「チッ…勝手にしろ、俺は一人で行くからな。」


 寝室の扉を勢いよく開けて閉め、そのまま紙袋を投げかけるが、はっと我にかえる。


 小さな机の上に袋を置き、布団に寝転がって右手を掲げる。


「まだ、限界に達するには早いだろ俺。」


 カタカタと震え自由の効かない手を抑え一人呟く。


ジェネラルオーガの出現、予見者の好意、体の不調…様々な因果が復讐者の歯車を狂わせる。


狂い行く歯車が生み出す終着はまだ誰もわからない。


次回、「復讐者の夢」

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