10、復讐者と守護者
殺気を放つ復讐者の元にようやく現れた守護者と裁断者。
果たして3人の結末は。
街のすぐ外に黒いコートに白い仮面をつけた男が待ち構えていた。
「我が名は復讐者、我の名の下に罪を定め罰するもの…」
「待った。」
堂々と決め台詞を言っている途中で守護者が口を挟む。
「あんたもしかして予見者の付き添いでいた俺に喧嘩売ってきたやつだよなぁ?違うとは言わせないぜ!」
復讐者と名乗る男は舌打ちをして仮面を外す。
「人の話はキチンと最後まで聞くもんだぜ、守護者。」
「てめぇみたいな奴の話を聞くつもりなんざ毛頭もないね。」
二人はその場で睨み合い守護者は槍と盾を、復讐者は何も持たず素手だけで構える。
「悪いがノリが悪い奴は消えてくれないか?」
私が武器を構えないことに違和感を覚えたのか相手は問いかける。
「だって争う必要がないじゃない、今さっき会ったばかりの人と、ましてや予見者の仲間となんてなおさら無理よ。」
「お前らの都合など知ったことか、さっさと構えろ。」
「へぇ、構える時間をくれるんだな。そうやって予見者を落としたのか?」
挑発をかけるように軽い言い方で守護者は言う。
「予見者をお前らに渡したのは間違いだったな、余計なことばかりする。」
「お前はその程度にしか思ってないのか、よ!!」
私が構えるか悩んでいる途中にもかかわらず突進を仕掛ける。
急所を外して放った一突きは軽くかわされ反撃のチャンスとなる。
その好機を見逃さずに相手の鋭い蹴りが飛び、防いだ盾を強く振動させた。
「その程度って、どの程度のことだ?」
「わからないなら、早く終わらせてやるから確かめな!」
二度目の突きで相手は距離を置く。
「かかった!「ストームブラスト」!!」
空間にねじりが生じ激しい竜巻となって相手を巻き込んだ。
「「ライトニング・レイ」!」
中心で竜巻の風で揺れる影に向かい一筋の光が放たれる。
「ちょっと、守護者やり過ぎじゃない?」
「やり過ぎなわけがあるか、これでも倒せたかどうか不安だぜ。」
そのことを裏付けるようにこれまでにないような真剣な眼差しで風の渦を見つめる。
「……お前、早く終わらせるって言ったよな?」
その不安は的中してしまったようで渦を切り裂き黒いコートの男が姿をあらわす。
「こっちの台詞だ、覚悟しとけよ。」
「それは、楽しみだな。」
ピリついた緊張を跳ね除け復讐者は走る。
「「絶対防御」!」
相手の行動を警戒し守護者はスキル、絶対防御を使用し、周りに緑色の透明な壁が出現する。
だが相手はそれに動じることなく飛び、器用に体をひねって壁に踵を叩きつける。
今まで決して壊れることのなかった壁にピシリとヒビが生じ、音を立てて割れる。
「転移者同士の戦闘でスキルが役に立つとでも?」
「隙を作るのには使えるさ!」
動じずに光を纏った槍を突き出すが相手も動じないずに突っ込む。
襲い来る相手に槍先は揺れ、生まれた隙を逃さずに拳が守護者の鎧を砕く。
「どうした?さっさと終わらせるんじゃなかったのか?」
「守護者!」
「お前、その動き…まさか。」
慌てて駆け寄ったが、何か重大な、勘付いてはいけないことを勘付いたよな声が出る。
「本当にお前は察しがいいな…そうだよ、俺を鍛えたのは他でもないギルドマスターその人だ。」
「やっぱりその動き、直伝だったか。」
「勘付いちまった代償だ、盛大にぶっ飛ばしてやる。」
パチンと指を鳴らすと赤透明の球体が周りを漂い始めた。
「さぁ、ダンスパーティーの始まりだ!」
両手を広げ、悪魔と見間違うほどに大きく釣り上がる口から歯を見せる。
その言動の通りには何もならなかったが。
紅の火炎が私たち二人をめがけて上空から落下して来る。
「「絶対防御」!」
守護者は私を強く抱きしめ、覆うようにスキルを発動させた。
バリアに這うようにして炎が地表に落ち、数メートル周辺を火の海に変える。
「全く、今日は邪魔ばかり入る。」
「これは失敬、加勢をしたつもりなのですがお邪魔でしたか。」
黒い霧が何処からともなく現れ、金のオーガを筆頭に数十匹の魔物が姿をあらわす。
「なんだ?何がどうなっている!」
「誰だお前は。」
守護者の動揺には目もくれずに復讐者は話を進める。
「私の名はジェネラルオーガ、魔王様の命により、あなたをお迎えにあがりました。」
白熱する勝負の間に水を差したのはジェネラルオーガ率いるオーガの大群だった。
迎えに来たと言う彼らの本心とは