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いつか消えるその日まで  作者: 月兎
第一章
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大きな木の下でまた何度でも 6



「……私、魔女について詳しい人を知っているの」



その言葉を言った後、私は少しだけ後悔した。だけど今言わなかったらきっと後でもっと後悔したと思う。

だから私の選択は間違ってなんかいない。

そう、だから例えどんな結果になろうとも、私は私のした選択に後悔はしないわ。


エレナはそう決意し、あるものを持ってお兄さんのいる木の下に向かった。

木の下にはもうお兄さんがいて、座って本を読んで待っていた。



「お兄さん、おまたせ」


「うん、じゃあ行こうか」


「えぇ、こっちよ」



そうしてエレナとお兄さんは、魔女に詳しいというその人に会いに向かった。



「噂で聞いた程度だから本当に魔女に詳しいのかは分からなくて、もし何も情報が手に入らなかったらごめんね」


「いや、そういう人がいるかも知れないというだけで有り難いよ。でも僕も結構この町には居たのに、そういった噂は聞いたことがなかったな」


「この噂は私の家の周りくらいにしか広がってないと思うから。そもそもその人の存在すらみんな知らないんじゃないかな。なんでも変わった人らしくて、みんな関わり合いたくないみたい」


「そっか……その人寂しいだろうね」


「そうだよね、ずっと一人でいるんだもんね」



なんだかどんよりとした空気のまま2人は町の端の方へと進んで行った。



「その人の家はね、町の端の茂みの中にあるんだって。確かどこかの木にマークがあってそれを辿っていくと着くって聞いたことがあるの」


「マークってこれのことかな?」



そう言ってお兄さんが指を指したところには、丸やら三角やらが交差した模様の様なものが彫られて描かれていた。


「多分……?あ、あっちの木にも同じのがある!やっぱりこれがそうなのかも!」


「じゃあこれを辿って行こう」



木に掘られた模様を辿って茂みの奥へと進んで行くと、あるところにポツンと一軒の家が佇んでいるのが見えた。



「良かった、合ってたみたい」



2人は家の前へと行き、扉をノックした。



「あの、すみません。あなたにお聞きしたいことがあって、お話できませんか?」



エレナは少し声を張り上げながら扉越しに話し掛けた。



「例のものは持ってきたのかい?」


「はい、持ってきました」



どうやらこれが合言葉らしい。

扉が開くとそこに立っていたのは、少し気の強そうな女性の老人だった。



「例のものはどこだい?」


「あ、これです。どうぞ」



そう言ってエレナが渡したカゴの中にはチョコレートやクッキーなど甘いお菓子が詰め込まれていた。



「あぁ、これだよ、これ!いいだろう、上がりな」



老人はそのカゴの中を見るや嬉しそうに顔が綻んだ。しかしエレナやお兄さんの存在を思い出し、すぐに顔に気を引き締めて元の気の強そうな表情に戻したのだ。

そしてエレナとお兄さんはリビングへと案内され、お茶などを出されてもてなされた。



「さて、要件は何だい?」


「あの、魔女について知りたくて!」



先に声を上げたのはお兄さんではなくエレナだった。



「魔女について?あんたがかい?」


「あ、いえ私じゃなくて……」


「僕が知りたいんです」


「何故知りたいんだい」


「魔女の呪いで不老不死になってしまって、それを解くためにその魔女を探しているんです」



お兄さんの『不老不死』という発言に老人は驚いた顔をしたかと思えば、突然笑い出した。



「ハッハッハッ!驚いた、まさか不老不死に会えるとは!長生きしてみるもんだね」



老人は嬉しそうにお兄さんの顔を見て、そして頷き言葉を発した。



「いいだろう。だがあたしも全ての魔女を知っているわけではない。その呪いをかけた魔女っていうのも知らないしね」


「……そう、ですか……」


「そう気落ちするんじゃないよ!その魔女は知らないが、その魔女のことを知っている魔女なら知っている」


「どういうことですか?」


「その魔女は『真実の魔女』アリシア。ありとあらゆる真実を知っている魔女さ」


「その魔女は文献で読んだことがある!その魔女の居場所を知っているんですか!?」


「いや、あいつは一つの場所に留まっているのが嫌いでね、常に旅をしているらしい。だが、そいつと唯一連絡手段を持つ魔女がいるらしいんだ。名前は知らんが確か薬草の魔女だったかね」


「薬草の魔女……」


「その魔女どこにいるの!?」



エレナは机にバンっと手をついて立ち上がりながら、つい声を大きくして言ってしまった。

焦ったのだ。昨日お兄さんを応援しようと決意したくせに、いざお兄さんが遠くに行ってしまうと思ったら決意が揺らぎそうになってしまったのだ。

エレナはふと我にかえりお兄さんの方を向いてみると、お兄さんは少し驚いたような顔をしていた。



「あ……ご、ごめんなさい。突然大きな声を出したりして」


「何に焦ったのかは知らんが、まぁ少し落ち着きな。ちゃんと全部教えてやるから」


「は、はい……」



エレナは軽く深呼吸をしながら心を落ち着かせて静かに座った。






「大きな木の下でまた何度でも」第6話目です!

魔女についての話が動き始めてきました。

次回も読んで頂けたら嬉しいです!

よろしくお願いします(´﹀`)


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