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いつか消えるその日まで  作者: 月兎
第一章
6/17

大きな木の下でまた何度でも 5



音がする。

ドクンドクンと音がする。

暗闇の中、この音だけが私の中に響いて、そして消えていく。

あぁ、ダメ。この音だけは消えてはいけないの。

この音は大切な……



「…………ダメッ!」



ハッと目が覚めた時、私は天に手を伸ばして泣いていた。



「え……?あ、そっか。私崖から落ちて」



そして気を失っていたのだろうか。

状況を理解するため、エレナは立ち上がろうと右手を地面につけたその時、右手に変な感触を覚えた。

少し生温かいようなヌルッとしているようなそんな嫌な感じを。


自分の右手の方を見てみるとそこには黒い水溜りのようなものができていた。

その水溜りに沿うように恐る恐る顔を上げていくと、水溜りの中心に人が倒れていた。

そしてその人は見覚えのある服を着ていた。

お兄さんと全く同じ服を着ていたのだ。



「……おにい、さん……?」



背丈も格好も同じはずなのに、なぜだかその人がお兄さんだと思えなかった。

その人に近付いて触れてみると、まだ微かに温もりを感じた。

だけど生気を感じず、そこにあるのは中身のないただの屍に過ぎなかった。


その人の横には大きな岩があり、顔が岩の方を向いていたので、顔を自分の方へ向けたらやはりこの人物はお兄さんだった。

生気のない顔をして、光の宿らない瞳で私を見るお兄さん。



「……お兄さん……お兄さんっ!」



何度叫んでもお兄さんが起きることはなかった。

泣いて叫んで、それでも起きないお兄さんを見てようやく理解した。

お兄さんは死んでしまったのだと。もうお兄さんが起きることはないのだと。


岩の方を見てみると、そこには血がこびり付いていた。

多分崖から落ちた時、運悪くこの岩の上に落ちてしまい、お兄さんは私を守るために自分だけ犠牲になってこの岩に頭から落ちてしまったのだろう。

せめてお兄さんの亡骸はちゃんと弔ってあげたい。そう思い、まずはここから町に続く出口を探し始めるためエレナは立ち上がりお兄さんを背にしたその時だった。



「……うぅ……っ……」



自分の背後からそんなうめき声が聞こえた気がした。

エレナは咄嗟に後ろを振り向き、そして目に映ったものはとんでもなくあり得ない現象だった。

死んだはずのお兄さんが頭を押さえながら起き上がったのだ。



「え……?」



エレナは何がなんだか分からず、ただお兄さんの方を呆然としながら見続けることしかできなかった。



「イテテ……あ、えっと……ごめんね驚かせて」



何が起きたのか分からなかったけれど、分かったことが一つだけあった。それはお兄さんが生きていたということ。



「お、お兄さん!生きてたの!?良かったぁ!」



エレナは安堵して涙を流しながらお兄さんの方に駆け寄った。



「いや、死んだよ。1回死んで生き返ったに過ぎないんだよ」


「……え?それってどういうこと……?」


「僕は、不老不死なんだ」



お兄さんがあまりに優しく微笑むものだから、冗談で言ったのではないか、なんて思えなかった。



「不老……不死……いつからなの?」


「生まれた時……いや、生まれる前からかな。自分が不死だと気付いたのは小さい頃、友達と遊んでいて不慮の事故で死んだのが始まり。その頃は死んでもまだ成長は止まらなくて単なる不死身なのだと思っていたら、20歳くらいになった頃かな、急に成長が止まったんだ。それからはもうずっとこの状態まま」


「ずっとって何年その姿のままなの……?」


「120年。成長が止まってから今日まで約120年経ったかな」


「…………」


「突然死んで蘇ってこんなこと言われても理解できないよね」


「……ううん。驚いたけど、何となくお兄さんは普通ではないなって昔から思ってたの。全然見た目が変わらなかったから」


「そっか」



その一言で、その表情でエレナは嫌な予感がした。

お兄さんがこの町から出て行ってしまう。

だって、お兄さんがまだこの町に来たばかりの頃、次の町に行くと言った時とどこか同じ様な表情をしていたから。



「……お兄さん、どこか遠くに行ったりしないよね?大丈夫だよ、このこと誰にも言わないから!」


「うん、まずはここから抜け出さないとだしね」



上手くかわされてしまった。お兄さんは残るとも残らないとも言わない。だけど流石にこれ以上は言えなかった。

ここから抜け出さないといけないのは本当だったから。



「そうだね……。大丈夫、きっとどこかに抜け出る道はあるはずだから」



そうしてエレナとお兄さんは、崖上の元の道に戻るための道がどこかにないか探し始めた。

取り敢えず上に登っていき、元の道と繋がる道を探していくと、運良く元の道に戻ることができた。元の道に着いた時には2人で喜び合ったが、それ以外で道中話をすることはなかった。

そして2人は森を出て、いつもの木の下にまでたどり着いた。



「お兄さん、今日あったことは誰にも言わない。なんで不老不死になったのかも聞かない。だってお兄さん自身も分かっていないんでしょ?」


「うん、だから旅をしているんだ。何の魔女が何の目的で僕に呪いをかけたのかを知るために」


「……私、魔女について詳しい人を知っているの」


お兄さんとずっと一緒にいたい。だけど、私のわがままを押し付けるのはもうやめだ。お兄さんにはお兄さんのやるべきことがある。それを応援することこそ良い女というものでしょう?



「お兄さん、また明日ここに来て。その人に会うにはあるものが必要らしいから、明日持ってくるわ」






「大きな木の下でまた何度でも」第5話目です!

やっとお兄さんが不老不死だとエレナが知ることが出来ました٩(*´︶`*)۶

エレナはカッコ可愛い女の子っていう設定で書いていたのですが、気付いたら何か違う感じになってましたね(笑)

まぁ、これから修正していけば(๑•ㅂ•)و!

次回も読んで頂けると嬉しいです!

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