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いつか消えるその日まで  作者: 月兎
第一章
5/17

大きな木の下でまた何度でも 4



セミが鳴り響く猛暑の中、私はお兄さんと川に来ている。

町の山奥にある、この町では1番大きな川。

最近の天候は良く、川も荒れていないので川遊びするにはもってこいな感じなのだ。


お兄さんと過ごす夏はこれが初めてではないし、小さい頃なら一緒に小さめな川ではあるが行ったこともある。

だけど4年前、私が恋だと気付いたその時以降、川に遊びに行ったことなどなかった。


でも私は今、お兄さんと川に来ている!

この4年間で育ったわがままボディ!……ではないが、それなりに女性らしい体つきになった私の水着姿でお兄さんを悩殺してやる!

それにこの日のために2週間ダイエットしてお腹周りもある程度引き締まってるし、怖いことなんて何もない!


お兄さんと遊べるということに舞い上がっているエレナは変なテンションに陥っていた。



「お兄さん、今日晴れてよかったね!」


「そうだね、盛大に遊べるね」


「うん!あ、そうだ。ここね、たまにだけど熊とか獣系が現れることもあるから気を付けてね」



山の中に獣注意の看板が立っているのだが、年に数回ほど目撃される程度で、危害を加えられた人も死者も出ていないので、一応立っているに過ぎなかった。

しかしそれでも遭遇した時、ちょうど相手が空腹の場合もあるので、姿を見つけ次第近付かず獣の視界に入らないように避けて行くのがこの町のルールとなっている。



「さて、川に着いたけど泳ぐってことでいいのかな?」


「もちろん!そのために服の下に水着着てきたんだもの!」



そう言ってエレナは服を脱ぎはじめ、服の下に予め着ていた花柄のホルタービキニ姿になった。



「……うん、水着似合ってるね。ただちょっと……」


「……?ちょっと?」


「あぁ、いや何でもないよ」



お兄さんのことだから平然な顔をして似合っていると言うのかと思ったら、少し顔を赤らめるどころか私の姿を直視できないかのようにそっぽを向いていた。

これはもっと押せば落とせるのでは!?

なんてことをエレナは思って、そして大胆な行動に出ることにした。



「ほら、お兄さんも一緒に川に入ろ!」



エレナはお兄さんの腕に自分の体を押し付けるように掴んで自分の方に引き寄せたのだ。

自分の腕に柔らかな感触を感じたお兄さんは顔を真っ赤にしながらエレナの方を向いて、


「あ、あの……こ、こういうのはあまり異性にやらない方がいいよ」



なんて明らかに戸惑っていた。

そのお兄さんの言葉にエレナは、やっと異性として見てもらえた!と嬉しそうな顔をして腕を離さなかった。



「お兄さんにしかしないからいいの!」



この言葉の意味を分かってほしい。そう願いながらエレナはお兄さんの腕を引いて川の方へと進んで行った。

川で遊んでいくうちにお兄さんは冷静さを取り戻していったのか、さっきのような動揺振りはなくなっていた。

だけど、エレナがお兄さんに近付くとお兄さんが一歩下がるといったような微妙な距離感が生まれてしまったので、エレナは仕方がないとお兄さんに近付くのは諦めた。


そしてあっという間に時間は過ぎ、気が付けば日が傾き始めようといた。

夜の森は危険なので、日が沈む前に森を抜けるため、エレナ達は帰る準備を始めた。



「お兄さん、少しくらいなら振り返って見てもいいよ」


「大丈夫、そんなことしないから安心して着替えて」



エレナは帰るため、着替えを始めたのだが、お兄さんはどんなに誘ってもその誘いには乗ってこなかった。

お兄さんには回りくどい言い方をしても伝わらないと分かったので、直球でいくことにしたのだが、動揺したのは最初だけで、その後は上手くかわされるようになってしまった。

エレナは不服そうな顔をしながら着替えを終え、森を出ることにした。



「お兄さんは異性の体に興味ないの?」


「いや、そんなことはないけど……というかこの話もうやめよう?」



エレナは不服そうな顔をして話し、お兄さんは少し居心地の悪そうな顔をして困ったように微笑んだ。



「もー、私はお兄さんがよく分からないよ」


「まぁ、他人を理解するっていうのは難しいことだからね」


「そういうことじゃな……」


「シッ……!静かに」



エレナが最後まで言葉を言い終える前に、お兄さんは言葉を挟んで遮り、バッと右手をエレナの体の前に出し、エレナが前に出ないようにした。



「……え?なに?」



エレナは状況を理解出来ずにいたが、お兄さんの強張った顔を見て、何かあるのだと思い小声で話し掛けた。



「あそこに熊がいるんだ」



お兄さんが見ている方向を見てみると、確かにそこには熊がいた。それも少し気性が荒い熊が。

これは近付かないほうがいいと思い、2人は声を発さずアイコンタクトとハンドサインでこの場を静かに去ることにした。

腰を低くして木々に隠れながら、お兄さんを先頭に上手く進めていると思っていた。

だがしかし、突如として現れたのだ。

エレナの目の前に、蛇が。



「っ!」



エレナは声を出してはいけないと必死に口に手を当てた。

しかし蛇はお構いなしにエレナに近付いてくる。

お兄さんも逆に蛇を刺激してしまうのではと思い、動けずにいた。


このまま下がって行っても意味がない、熊に気付かれないように上手く蛇をかわして……って無理でしょ!!


エレナは必死にこの場を上手くやり過ごす方法を考えたが、焦りや緊張で上手く思考が回らなかった。

と、その時。

右足が踏んでいた地面が突然消えたと思った次の瞬間には自分の体が宙に浮いていた。

エレナは蛇に気を取られ過ぎて気付かなかったのだ、自分の足元が危うい事に。



「きゃぁぁぁぁぁ!!」



重力により落下していくエレナ。

自分の状況を理解したときにはもう、地面に足が付いていなかった。



「エレナ!!」



お兄さんは必死にエレナの名を呼び、彼女を追うように手を伸ばしながらなんの躊躇もなく崖から飛び降りた。



「お兄さん!!」



エレナも必死に叫び、手を伸ばした。

伸ばされた2つの手は繋がり、そして2人とも崖の下へと落ちて行った。






第4話目です!

やっと物語が動き出したって感じですね( ˆ꒳ˆ; )

エレナとお兄さんはどうなってしまうのか、是非次の話も読んで頂けたらと思います。

よしくお願いします(*´︶`*)

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