大きな木の下でまた何度でも 3
現在高校2年生夏。
暑い日差しが照らそうと、今日もあの木のもとへと私は向かう。
大好きなあの人が、お兄さんがいる場所へ。
「おにぃーさんっ!」
お兄さんに気付かれないように木のうしろにまわって、まだ冷たいペットボトルをお兄さんの頬へと当てた。
「わっ!?」
本に夢中になっていたお兄さんは、突然頬に感じた冷たさや衝撃に驚いたかのように声を上げた。
そしてその反応が可愛くて私はつい少し笑ってしまった。
「ふふっ、お兄さん、水分補給は大事ですよ」
そう言って私はさっきお兄さんの頬に当てたペットボトルを差し出した。
「そうだね、ありがとう」
お兄さんは何事もなかったかのようにお礼を言って私が差し出したペットボトルを受け取った。
「何の本読んでいたの?」
「ん?あぁ、これは魔女についての本だよ。今日新しい本が入荷されたらしいから借りてきたんだ」
「お兄さん魔女に興味があるの?」
「うん、そうだね……。それで、今日はどんなことがあったの?明らかにテンション高いよね」
『魔女』という単語を聞いた瞬間、彼の顔色は少し曇り、そして魔女についてあまり話したくないかのように、話の話題を変えたのだ。
「ふふふ、分かっちゃいますか。なんと!今日から夏休みなんです!!」
「あぁ、もうそんな季節が来たんだね」
「えー、お兄さんテンション低いー!」
夏休み中はずっとお兄さんといられるからずっと心待ちにしていたのに、お兄さんはそんなことなかったのかな……?
なんてことを考える。
「そんなことないよ。夏休みは君と長く一緒にいられるからね。嬉しいに決まってるよ」
「ほ、本当!?あのね、来年は忙しいかもしれないから今年はたくさん遊びたいんだ!」
「うん、いいね。どこか行きたいところとか決まってるの?」
「海!……は遠いから川かな!あとお祭りと花火とちょっと遠いけど大きな街に行ってお兄さんとショッピングもいいな」
「いいね、色々行こうか。水辺は涼しいから夏場は丁度いいね」
「じゃあ川行こう!日にちは……再来週!お兄さん空いてる?」
「再来週……うん、大丈夫だよ」
「じゃあ決まりね!今から楽しみだよ!」
「そうだね、僕も楽しみにしてるよ」
その後、私の学校での出来事とか家のこととか、他愛のない話をしながら一緒に笑いあった。
だけどあの日、再来週、山奥にある川に遊びに行くという約束をして別れたあの日、やっぱり川ではなく別の所へ行こうと提案するべきだったのだ。
そうすればお兄さんは消えたりしなかったかもしれないのに。
あの日、私が川に行きたいだなんて言ったせいでまさかこんなことになるなんて、あの日の私は考えもしなかった。
お兄さん、私はお兄さんが今まで何をして、どんなことをして来たとしてもずっとお兄さんの味方だよ。
だからお願い、消えたりしないで。
私からお兄さんを奪わないで。
お兄さんともっと一緒にいたいの。
もっとお話したいの。
お兄さん…………。
「大きな木の下でまた何度でも」第3話です!
最近は台風とか地震とか色々と起きて大変ですよね(-_-;)
早く平穏な日々が続いてほしいです。