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いつか消えるその日まで  作者: 月兎
第一章
2/17

大きな木の下でまた何度でも 1



私が彼と初めて会ったのは、丘の上の大きな木の下。

見かけたことのない人がいて、つい声を掛けてみたのが始まりだった。

彼は私よりも年上で、歳は20歳前後に見えた。



「お兄さんどこから来たの?この町の人じゃないよね?」



私はまだ小さく幼くて、彼が木の下で座っていると同じ目線なくらいだった。



「僕は旅人なんだ。君はこの町の子かな?」


「うん、そうだよ!旅人さんってことは色んなところに行くんだよね!」


「そうだよ。北から南まで色んなところに行くつもり。まだ半分も行けてないんだけどね」


「すごい!お話聞かせて!」



そう言って目をキラキラ輝かせながら彼の旅の話をたくさん聞かせてもらった。

1日では話し終わらなくて何日もあの木の下で話を聞かせてもらっていた。

そうして彼の話を何日も聞き続けていく内に、私は彼のことが大好きになっていった。

そして一週間が過ぎたある日、彼は突然こんなことを言い出した。



「そろそろ次の町に行こうと思うんだ。だから君とは今日でお別れかな」


「なんで!?やだ!もっとここにいてよ」



私は泣いてわがままを言って彼を困らせた。



「んー、じゃあもう少しだけここにいようかな」



彼は少し困ったような顔をした後に笑ってここに残ると言ってくれた。

私はその言葉を聞いて、さっきまで流れていた涙はどこかに消え去り、嬉しさが全身に込み上げてきた。



「本当!?明日もここに来てくれるの!?」


「うん、約束するよ」



そう言って彼は小指を私に差し出し、指切りをして約束してくれた。


次の日、あの木の下に行くと、彼は約束通り旅には出ず待っていてくれていた。

私は彼の姿が見えて嬉しくて、彼に飛びついて抱きついた。そして彼はそんな私を優しく受け止めてくれた。


今思うとなんて恥じ知らずだったのだろうと思う。今そんなことをしたらきっと恥ずかしさで死ねる。

あの頃の彼に対する私の気持ちは、同じ好きでも近所の優しいお兄さん的存在で、恋愛とは全く違ったと思う。


私が彼を異性として意識し始めたのは、恋愛に興味を持ち出す中学生くらいの時のことだった。

友達や周りの子達に段々好きな人や恋人が出来始めて、恋話をする機会が増えていったのだ。

この頃に仲の良かった2人と恋話をしたのがきっかけで、私は彼のことを異性として意識し始めた。



「やっぱり包容力のある年上の男性がいいよね」


「私はイケメンで優しくてぇ、高身長、高学歴、高収入になりそうな人がいいなぁ」


「理想高すぎでしょ!」


「いいでしょぉ、夢見るくらいー」


「もー。エレナは?どんな人がタイプなの?」


「え、そうだなぁ……私は、優しくてカッコよくて笑顔が素敵で、でもたまに何考えてるのか分かんなくて、でもいつもどこか悲しげで、私なんかじゃ頼りにならないかもしれないけど少しくらい頼ってくれても……」


「えっと、誰のこと言ってるの?」



自分のタイプの男性のことを言っていたつもりだったのに、いつの間にか彼のことを思い浮かべて話していたのだ。



「えっ!いや、その……」


「何なにぃ~?エレナ好きな人いたのぉ!?」


「えっ、うそっ!誰!?」


「す、好きとかじゃないから!……いや、確かに好きではあるけど、そういう異性としての好きってわけじゃないっていうか」


「いやいや、何言ってんのぉ!好きなタイプを思い浮かべた時に特定の誰かが思い浮かんだらそれもう好きってことだから!」


「そうだよ!で?誰?」



2人は興味津々な目で私を見てきた。



「ち、小さい頃から遊んでくれてるお兄さん……」



その言葉を聞いた途端、2人は腕を組んだり手を顎に当てながら微妙な顔をした。



「……ん~。それは微妙だなぁ……」


「近所のお兄さんか……。いや、でも今でも想ってるってことはやっぱり恋かな?」


「近所っていうか、その人旅人だから家はないんだよね」


「えぇー、その人旅人なのに旅してないのぉ?」


「っていうか大丈夫なの?その人信用していいの?」


「私が小さい頃に駄々こねて残ってもらったの。大丈夫だよ、心配してくれてありがとう」



彼は、お兄さんはあの日からずっとこの町に留まっていてくれている。何回か次の町に行く素振りをみせたけれど、そのたびに私がわがままを言うものだから、最近はその素振りすら見せなくなった。



「ねぇ、エレナ。そのお兄さんってどんな人なのぉ?名前は?」


「え、名前……は知らない。ずっと『お兄さん』って呼んでたから聞いたことなかった……。」


「じゃあ、その人がどこに泊まってるのかも知らないの?」


「うん、知らない……。そういえば私、お兄さんのこと全然知らない……。」



小さい頃から毎日のように会っているのに、お兄さんについて知らないことの方が多いことに私はショックを隠せずにいた。

それにお兄さんは自分のことを自分で言ったりはしない。

そんな中特に気掛かりなのが、お兄さんの見た目が全く変わらないこと。

最初に出会った時から全く見た目が変わっていないように思う。単に若く見えるだけかもしれないけれど。




「いつか消えるその日まで」の第一章第1話目です!

前半はさらっとストーリーが進むのであまり面白いとは言えないかもしれませんが、今後面白くさせていこうと思っているので、最後まで読んで頂けると大変嬉しいです(人´∀`o)

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