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いつか消えるその日まで  作者: 月兎
第二章
16/17

魔女を探す旅 2



それから青年とは別れ、リアムは情報収集のためにいくつかの酒場に入ってみたが、収穫はなく宿に戻ることにした。



「はぁ、そんな簡単には見つからないか」



宿の寝台に寝そべり、天井を見つめながら酒場での会話を思い出す。




酒場の人たちの会話に混ざり、呪いを掛ける魔女を知らないかと聞くと

「いや、知らねぇな」とか

「魔女は呪いを掛けるやつが大半なんじゃねぇのか」とか

魔女の存在は知っているものの、魔女がいる場所を知っている人は一人もいなかったのだ。


想像通りといえば想像通りではある。

何十年と探してきて、エレナのいる町で情報を掴むまでは闇雲に探すしかなかったのだから。

だからルーチェという街に魔女がいるかもしれないという情報は、暗闇の中に突如現れた一筋の光そのものなのだ。

この情報を無下にしてはいけないと、酒場でルーチェについても聞いてみたが、ルーチェの街を知らない人も多く、知っていても魔女の存在を知っている人はいなかった。


それもそのはず、この町の酒場に行くような人達はいろんな街に行く業者が多く揃っていて街の内情まで知る人はほとんどいないだろう。

そもそも魔女を好いていようが嫌っていようが、街の住人ではない人達に魔女の存在を教えるはずがないのだ。


街が魔女を守っているような街ならなおさら、逆に街の住人が魔女を嫌っていたとしても住人以外の者に言えば厄介事が増えるのは明白だ。

だから魔女の情報は簡単には手に入れられないのである。

だからこそミネルヴァが魔女の情報を持っていたのはとても貴重なことだったのだ。



「魔女を探しだしたら、この呪いが解けたら、僕は普通の人間になれるのかな。そうしたら……」



そう呟きながら段々と目蓋が重くなって意識が遠のいて、そしてリアムは眠りについた。




遠くで悲鳴のような声が聞こえる。

この声は何だろうか。

重たい目蓋を上げてリアムは目を開ける。

脳はまだ起きていないのか目蓋はまだ重く、気を抜けばすぐにでも再び閉じてしまう状態だった。


刹那、悲鳴が聞こえた。

女性の甲高い声だった。

次いで男性の野太い叫び声も聞こえてきた。

リアムはハッと目を開き、即座に起き上がった。

またしても悲鳴が鳴り響いた。



「何が起きているんだ」



リアムは状況を把握するべく、宿主のいる1階へと降りることにした。



「何があったんですか?」


「それが魔物の群れが暴れているらしくてね。普段人を襲うような魔物じゃないから原因があるはずなんだが、それが分からないんだよ」



宿主である夫婦のうちの奥さんが答えた。

魔物は獣の姿をしていて、昔はよく魔物による被害が起きていたが、文明が進み魔物に対抗するすべを身に着けた人間は、人を襲う魔物を駆除していったため、魔物による被害はほとんど起きなくなったのである。


そんな世の中になったにも関わらず、現状この町は魔物に襲われている。

それも普段は人を襲わない魔物が。

考えられる想定は2つ。

1つは人が彼ら魔物達に何かをした。

もう1つは何者かによって操られている。


恐らく前者だろう。

操られていた場合、この町を襲うメリットがない。

この町は業者が立ち寄る町だ。

つまりこの町に何かあったとしても業者達は町を守ろうとはせず、自分達の商品に被害が及ぶ前に逃げるだろう。

それならもう少し商業が盛んな街を襲った方が色々と手に入れられるだろう。


だがそうなると、この町の人達はあの魔物達に何をしたのだろうか。

何をしたらあんなに怒って……。

怒る……魔物が怒っている理由ってもしかして……。


リアムが何かに気付いたその時、「ピィ」というか細い鳴き声が聞こえた。



「あの、今の鳴き声ってどこから聞こえてきましたか」


「鳴き声って悲鳴のことかい?」


「いえ、小鳥の鳴き声のような声が聞こえませんでしたか?」



誰も聞こえていなかったのか、フロントにいる人達は首を傾げた。

それもそのはず、外では悲鳴が鳴り響いているのだから。



「ピィイ」



再び鳴き声が聞こえた。

それもさっきよりも少し大きな声だ。

この鳴き声はフロントにいる人達にも聞こえたのか、鳴き声の方向に振り向く。



「確かに何かの鳴き声が聞こえるね」


「おそらく今町を襲っている魔物の子どもです」



魔物がこの町を襲った理由はおそらく子どもを拐われたからだ。



「えぇ!?この宿に魔物の子どもがいるっていうのかい!?」


「はい、こっそり持ち込んだのでしょう」


「い、いや、だが魔物の売買は禁止されているはずだぞ!」



フロントにいる一人の男性が言う。



「だからこそ誰にも気付かれないように持ち運んだのだと思いますよ」



リアム達は急いで鳴き声の聞こえた場所へと向かうと、角にある一室にたどり着いた。

部屋の前に着くと耳を澄ませなくても鳴き声が聞こえてくる。それと同時に慌てた様子の男性の声も聞こえてきた。

きっと魔物がこの町を襲ってきたのは、その魔物の子どもを連れてきたからだと気づいたのだろう。


リアムはノックをせずにドアノブに手を掛ける。

鍵は掛かっていなかった。

勢いよく扉を開けると、格子状の箱の中で鳴き叫びながら暴れる魔物の子と、その箱を乱暴に揺らしながら鳴くのを止めるように怒鳴りつける男がいた。

男は扉が開いたのに気付き振り向く。



「あ?何勝手に入ってきてんだよ!」



焦りからか乱暴に怒鳴り付けてきた男に対し、冷静にリアムは言葉を返した。



「その子魔物ですよね」



リアムの言葉に肩が少し跳ね上がった男は言い訳の言葉を発し始めた。



「あー、ちげぇよ。こいつはその、あれだ、道で拾ったんだよ」


「そうですか。でも嫌がっているようなので僕がお預かりしますよ」


「お、俺が拾ったんだから嫌がってようが何だろうが俺の勝手だろ!」


「なぁに言ってんだい!あんたのせいでこの町はもうめちゃくちゃだよ!」



なんとも横暴な言い訳を言う男に対し、怒りを抑えきれなくなったのか、宿主の奥方が入ってきた。



「今返さないと今後もあの魔物の群れはその子どもを追って来ますよ」


「チッ、わかったよ。返しゃぁいいんだろ」



奥方の気迫に負けたのか、ようやく男は観念して魔物の子どもを返すことにしたようだ。



「け、けど返すと言っても凶暴化した魔物にどうやって返すのですか?」



フロントにいた少し気の弱そうな女性が尋ねた。

それに対してリアムは答えた。



「大丈夫です。僕に考えがあるので」






「いつか消えるその日まで」の第二章2話目です!

リアムって笑顔で怒るか真顔で怒りそう。

怒らせると怖そうなタイプですね笑

あ、でも今回はべつに怒ってないですよ。

ただ冷静に対処しようとしただけです( 'ω')

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