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いつか消えるその日まで  作者: 月兎
第二章
15/17

魔女を探す旅 1



とある町のとある酒場で、一人の青年が情報集めのために、その酒場で居合わせた業者の人達と酒を交わしながら盛り上がっていた。



「いいね、兄ちゃん。イケる口だねぇ」



業者のうちの一人、相当飲んでいるのか顔が結構赤い男が話しかけてきた。



「そういうお兄さんこそ結構強いねぇ」



それに同じようなノリで答える青年。



「こんな仕事呑まなきゃやってらんねぇよ」



そう言って顔の赤い男はジョッキの中の酒をいっきに飲み干した。

そんな酔っ払いの横に同じ業者の男が2人、一人は長身の男で呆れたような顔をして笑い、もう一人は少し体格の良い男で酔っ払ったやつをからかうように笑う。

そんな体格の良い男が、青年のグラスに酒を注ぎながら言う。



「悪いな兄ちゃん、こいつ今日ナンパに失敗したんだよ」


「そりゃあ残念だったな」



注がれた酒を飲みながら青年は答えた。



「あ~ぁ、モテ薬作れる魔女とか現れねぇかな」



と顔の赤い男が言う。

その言葉に青年は反応した。

青年が集めている情報、それこそが魔女の情報なのだ。

だが、3人とも青年が魔女という言葉に反応したことは気付いてはいないだろう。

青年は感情を顔に出さないのが得意だった。

そして人に溶け込むのも上手い青年は情報を集めるのにさほど苦労はしなかった。



「おまえ、魔女とか彼女作るより難しいだろ」



体格の良い男が言う。

そう、普段情報を集めるのに苦労しない青年でも自分が探し求める魔女を見つけることは未だにできていないのである。



「魔女と言えば、昔噂になったあの少年は魔女を探し出せたのかね」



長身の男が言う。



「噂の少年?……あぁ、あの不老不死のやつか」



顔の赤い男が言う。

不老不死で魔女を探す少年、そんな話青年は一度も聞いたことはなかった。



「噂ってなにかな?」



と青年は聞いてみた。



「兄ちゃんは知らねぇか?不老不死の少年が自分を不老不死にした魔女を見つけるため夜な夜な探しまわってるって話」


「それでそいつに会うと自分も魔女に呪われるから夜は出歩くなっていう作り話だよ」



体格の良い男と長身の男が答える。



「へぇ、興味深い噂だね」



と言いながら青年は酒を一口飲む。



「まぁ、この町での噂ではねぇけどな。確か東の方で商売してた時に聞いた噂だよ。けど実際にいるらしいぜ、その不老不死。そんで魔女を探してる奴らはそいつを探し出せば自分の会いたい魔女に会えるとかいう言い伝えもあるらしいぜ」



体格の良い男がそう言うと、長身の男が付け足すように答えた。



「不老不死で長生きして色んなやつに会ってるから魔女にも詳しいだろうっていう見解だろうな」



その2人の会話を聞いて青年は、


「それは、ぜひ会ってみたいものだね」


と笑みを浮かべながら言った。



―――――― ❀ ❀ ❀ ――――――



エレナの町から旅立ちルーチェへと向かう途中、リアムは休息と情報集めのため途中にある町に立ち寄ることにした。

その町はどうやら業者がよく立ち寄る町らしく酒場の店が建ち並んでいた。

そのおかげか酒場と並列して宿屋も建ち並んでいて、泊まるところはすぐに決まった。


そしてこの町で1番情報が行き交う場所を探すためにリアムは町を散策し始めた。

まだ夕方だというのに町には酒に酔っている人達が現れ始めていた。

絡まれると厄介なので、人と目を合わせないようにどこで情報を集めようかと辺りを見渡していると、一人の男性がリアムに詰め寄って来た。



「おい、兄ちゃん!なぁにガン飛ばしてくれてんだぁ?」



速攻で絡まれてしまった。

小太りなのか、ガタイがいいのか、どちらにせよあまり背の高くないガラの悪いやつに絡まれてしまったリアム。

しかもその人はどうやら相当酔っているようで、足取りがおぼつかず、顔も真っ赤にしていた。


こういう時は、意見は言わず謝ってしまったほうが言い争いにならずに済むと思ったリアムは


「すみません、そんなつもりはなかったのですが、次からは気を付けますね」


と、爽やかな笑顔で謝罪の言葉を口にした。



「あぁ゛?そんな謝罪で俺の気が済むとでも思ってんのかよ!」



どうやら何を言おうが絡むのを止めないようだ。

どう切り抜けようかと頭を悩ませていると、突然一人の青年がリアムの肩に手を回して親しげ話しかけてきた。



「こんなところにいたのか。まったく、だいぶ探したよ」


「え、あ……あぁ、ごめん。ちょっと風に当たりたくなって」



最初は人違いかと思い戸惑ったが、青年の表情を見てすぐに助けてくれたのだと理解し、リアムは青年に合わせることにした。



「悪いね兄さん、取り敢えずこれで手を打ってくれないかい」



そう言って青年は絡んできた男に封筒を渡した。

男が中身を確認しようと封筒に手をかけた瞬間、



「よし、逃げるよ」



小声でそう言い、リアムの腕を引きながら走り出した。

男は走り出した2人にすぐに気づいたが、酔いが回って走るどころか歩くことすらままならない男にとって、2人を追いかけることなどできなかった。

そうして男を振り切った2人は、少し走った先で立ち止まった。



「ここまでくれば大丈夫かな」


「あの、助けてくれてありがとうございます。さっき渡してたお金払います」


「お金?あぁ、あの封筒のことかな。あれの中身は単なる紙切れだから大丈夫だよ。厄介な人に絡まれた時用にいくつか持っているんだよ」


「それはいい考えですね。僕も真似させてもらおうかな」


「まだあるから1つあげるよ」



そう言って青年は懐からさっきと同じ封筒を取り出してリアムに差し出した。



「いいんですか。ありがとうございます」



リアムは受け取り中身を確認すると本当に何も書かれていない紙幣と同じ大きさの紙がいくつか入っていた。



「大きさが同じだと結構リアルな感じが出るんですね」


「ああ、いい考えだろう。ところでキミは旅人だよね。どこから来たのかな」


「僕は東の方から旅してきました。見つけ出したい人がいて」


「恋人かい?」


「いえ、そういうのではないです。でも見つけ出さないといけないんです」



少し複雑そうに微笑むリアムの顔を見た青年は、言いづらい何かを抱えているのだろうと察して、これ以上聞くことを止めた。



「早く見つかるといいね」


「そう、ですね」



やはり少し複雑そうに、そしてほんの少し悲しそうにリアムは微笑んだ。




「いつか消えるその日まで」の第二章1話目です!

新キャラ登場です!

第二章は予定ではそんなに長くはならないです。

(予定では…ね…(;¬ω¬))

第二章よろしくお願いします( 'ω')/

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