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いつか消えるその日まで  作者: 月兎
第一章
12/17

大きな木の下でまた何度でも 11




秋、まだそこまで寒くもなく、かと言って夏のように蒸し暑くもないそんな季節に、一人の青年は新たな道へと旅立とうとしていた。

そんな青年に声をかける少女。



「おにぃ……じゃなかった、リアム」


「なかなか慣れないね」


「うぅ……でも大丈夫!次に会う時までには自然と呼べるようにしておくから!」


「そうだね、次に会う時はきっと君はもっと綺麗になっているんだろうね」



少女もといエレナに微笑みながら恥ずかしげもなく発言する青年リアム。



「えっ、あっ、が、頑張る!」



リアムの発言に赤面しながら少し吃ってしまうエレナ。



「頑張らなくても今でも十分綺麗だから大丈夫だよ」


「じゃ、じゃあ可愛くなるよ!」


「あはは、そうしたら最強だね。でもそんなに頑張らなくていいよ。あんまり可愛くなり過ぎると他の男が黙ってないからね」


「だ、大丈夫!私全然モテないから!」


「それは……どうかな?」



意味深な言葉に聞こえるけど、きっとお兄さんのその言葉に深い意味なんてない。

いつものようにただ思ったことを口に出しただけなのだろう。

お兄さんの言葉に期待するだけ無駄。

エレナは今までのリアムの行動パターンからそう読み取ったのだった。



「ふふっ、本当に仲が良いのね2人は。きっとお父さんがみたら嫉妬しちゃうわね」


「彼はそろそろ子離れするべきだと思うがね」



そしてもう2人、エレナの母親とミネルヴァもリアムの見送りに来ていた。



「すみません、お2人にまで見送りに来ていただいて」


「あら、いいのよ。来たくて来たんだから」


「あぁ、そうだよ。ルーチェは遠いからね気を付けて行くんだよ」


「はい、ありがとうございます」



本当はすぐに旅立つはずだったこの町に何年も留まることになるとは思っていかなっただけでなく、まさか魔女の情報まで手に入れられるなんて予想打にもしていなかったリアム。

自分の身体や心臓に変化があったわけではない。けれどこの町に来て良かったと心の底から思うのだ。



「リアム、これ作ったからお昼にでも食べて」



そう言ってエレナが渡したのは竹皮に包んだおにぎりだった。



「ありがとう、大事に食べるよ」



リアムもエレナもお互い寂しげに微笑みあった。

これで終わり。でもお別れではない。

また会える、何故かそう思えた。



「そろそろ行くよ。今までありがとう、エレナ」


「うん……今までわがままいっぱい言ってごめんね。お兄さんと……リアムと会えて本当に良かった!またね!」


「うん、また会おう」



手を振るエレナ。

リアムの姿が見えなくなるまでその手は振り続けられていた。

そしてリアムは今までで一番長くいた町を旅立ったのである。



―――――― ❀ ❀ ❀ ――――――



リアムが旅立ち、消失感を感じる暇もなく学生である日常に戻ったエレナ。

エレナにとって寂しさよりも次に会った時にどんな自分でいようかと考えるのが楽しくて仕方なかった。

そんな中、エレナの学校の友達は配られた進路調査票になんて書こうか悩んで放課後まで教室に残っていた。



「進路とか、全然考えてないよ……。」


「私達まだ2年だよぉ、3年になってからでいいじゃんねぇ」



友達2人が頭を悩ませる中、エレナは机に両手をバンッと叩きながら座っていた椅子から立ち上がった。



「2人とも、私決めたよ!」


「えっ、進路!?」


「うん。私、卒業したら旅に出るの。それでお兄さんとまた会うの」


「旅かぁ、面白そう。私も旅って書こうかなぁ」


「エレナ、本当にそれでいいの?自分の将来のことだよ?」



一人の友達が心配そうに見つめる。



「うん、もう決めたから。お母さんには許可もらってるし、お父さんは……もう少し説得が必要かな。でもね、私はお兄さんと一緒にいるのが一番幸せなの」


「そっか……。エレナがそう言うなら私は応援するよ」


「私も応援するよぉ!いいね、愛だねぇ」


「2人ともありがとう!」


「何かあったら頼ってよね!」


「私達はいつでもエレナの味方だよぉ!」


「もぅっ!2人とも大好き!」



そう言ってエレナは2人に抱きついた。



―――――― ❀ ❀ ❀ ――――――



そして時は経ち、エレナは学校を卒業した。



「やっと卒業だ!意外と長かったなぁ……でもこれでやっとお兄さんを、ううん、リアムを探しに行ける!」



エレナはリアムが去った後、魔法や魔術について勉強し、やはり魔法を使う素質はなかったけれど、簡単な魔術を覚えることができた。

それだけでなく、父親に弓の扱い方を教わり、護身術も身につけていった。

たまに狩りの場に連れて行ってもらって、狩りの実践なども教えてもらうことができた。


旅に出るための準備は日々欠かさなかった。

これも全てリアムにもう一度会うため。

それだけで力が湧いてきた。

最初は認めてくれなかった父も次第に体力をつけ、努力を重ねていくエレナの姿を見て最終的には折れてくれたのだ。

全ての準備が整い、エレナが旅に出る日がやってきた。



「エレナ、戻ってきたら旅の話いっぱい聞かせてね!」


「今度は私達にお兄さんのこと紹介してよぉ」


「うん、まかせてよ!」



友達2人と笑顔で話すエレナ。



「エレナ、いつでも戻ってきていいんだぞ。なんだったらお父さんも一緒に旅に……」


「何言ってるのかしら、あなた?」



娘の手を握り涙ぐみながら話す父親の話を笑顔で遮る母親。

その笑顔にはどこか威圧力を感じ、父親は大人しくならざるを得なかった。



「忘れ物はない?リアムさんのこと見つけて今度こそ離さないようにね」


「うん、絶対見つけてみせるね!」



そして最後に声を掛けたのはミネルヴァだった。



「エレナ、これを持っていきな」



そう言って渡してきたのは綺麗なガラス玉の中に小さな鈴が入ったものだった。



「これは?」


「獣よけのまじないを施しておいたものだよ」


そのガラス玉を左右に振ってみたが、鈴の音は聴こえなかった。



「人には聞こえない周波数なんだよ。邪魔にならなくていいだろう」


「うん、ありがとうおばあちゃん!私もっと全体的に強くなって戻ってくるからね」


「ああ、期待しているよ。気を付けて行ってきな」


「それじゃあ、行ってきます!」



皆に別れを告げ、時折振り返りながら手を振るエレナ。

家族や友人はエレナの姿が見えなくなるでずっと手を振り続けていた。

エレナは前に進み続け、その足は止まることはなかった。




生まれ育った故郷を出て、決して平和とは言えない世界へと旅立つ。

不安はある。恐怖もある。けれどこの旅を楽しもうと思う。

そしていつか彼に再び出会った時、笑い合いながら語り合うんだ。

きっと私ならできる。だって私は結構図太いんだから。


「よーし!行こう!」


エレナの旅はまだ始まったばかり。

この旅がどんなものになるか、それはまたいつか。






大きな木の下でまた何度でも第11話目です!

第一章完結ですヾ(*´∀`*)ノ

こんなに長い話を書くのは初めてなので、どこまで書けるか分かりませんが、最後まで頑張ります!

次回は第二章ではなく、番外編です!

(まだ二章全然書けてない……)

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