お昼
「…てか響、暑くないの?」
「え?あ、ジャージのこと?日焼けすると皮剥げる痛い」
50メートル走が終わり、時はお弁当タイム。
持参のレジャーシートを敷いて好きなところに早い者勝ちで食べていいことになってる。友達と。
「クラスでまとまれ、っていうルールじゃないのがぼっち殺しの学校らしいよね」
「ぼっちじゃないでしょ、私もお兄さんもいるでしょっ!」
きもい。そしてこいつがウキウキしてるのはきっと私が兄を誘うと思っているからだろう。
「しょーは友達と食べるんじゃない?私は誘わないからね」
「えぇええ!?」
ほらやっぱり。目的はしょーだったか。
すっかり埋まってしまった中から食べれるスペースを探していると、どこからか呼ばれる。
「おーい、ひびー!場所ないならこっちー!」
うげ…。
「響、呼ばれて…って、翔太先輩じゃん」
「小声で囁かないできもい」
とはいえ…場所がないので仕方ない。
愛実もすごく行きたがってるし…しょーのとこに行くか。
「…じゃあ、遠慮なくお邪魔します…ごめんなさい」
しょーの周りにいる四人の人に謝ってレジャーシートを繋げて敷かせてもらう。
「誰、彼女?」
「妹」
しょーとその友達の会話が聞こえる。
頭をあげるとそこには見た事のある顔が。
あ、アニメキャラに似てる例の先輩だ。
他人を見なさすぎて気づかないのな、私って。
「なんだ、妹か、妹いたのか」
「髪長!」
「50メートル走半端なく早かった人か」
少し小声で言う先輩方に言いたい。
大きく丸聞こえですよ!
まぁ、そんな怖いもの知らずなこと言えないが。
「じゃあ、いただきます」
会話を強制終了させて言うしょー。
私の兄貴はこんなリーダーシップが…!?
親に持たされた二段弁当の蓋を開けると見事にしょーと同じ内容。そりゃそうだ。作った人間は一緒なんだから。
上の段は卵焼きに肉団子にポテトサラダにピーマンとひき肉の炒め物。
下の段は敷き詰められた白米の上に家族で長野県に行った時に気に入った野沢菜の漬物。
「てか気づかなかったけどいるね」
「いるね」
小声で会話する。
いる、とは、まぁ、例の先輩のことだろう。
愛実の言うことは大体パターンが読める。
「あ、ひび、今日お母さん何時帰るって言ってた?」
「にじゅうにじ」
「振替休日予定入った?」
「愛実と秋葉原」
あ、申し遅れました、東京住みの者です。
「愛実…?」
「あ!橋谷愛実です!一年六組です!」
「よろしくね」
…愛実の顔がイキイキしてる…だと!?
「ぁっ、でも、予定が入ったんなら全然行かないので…」
「ねぇ愛実それは酷いよなんか」
愛実はどれだけイケメンが好きなんだ。
「俺達原宿行くんだけど、行かないかな、橋谷さんも一緒に」
「愛実でいいです、行きます!」
…愛実、私の意見は…
「私まだ行くって言ってな…」
「えぇ、響おねがいだよぉ!」
…待てよ。
「ファンタジーの世界を遊び尽くせ第四期記念イベント原宿各地のゲーセンでやってるんだった、いこ」
「よしっ」
私はアニメにつられただけ。そう、それだけ。